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まろに抱きしめられたまま、俺は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。
温かな胸に顔を埋めて眠るのは久しぶりで、夢の中でもその安心感は離れなかった。
夜。
目を覚ますと、まろはまだ俺を抱いたまま起きていた。
その瞳は眠気よりも、俺を守りたい気持ちでいっぱいに見えて、胸が痛む。
『….まろ、もしかして寝てないの?』
俺が問いかけると、彼は少し苦笑しながら頭を振った。
「俺は大丈夫やで。やから、心配すんな」
腕の中にいる自分が、こんなにも大切にされているんだと痛感して、涙がまた滲んだ。
俺はそっと彼のシャツを握る。
『…うん。』
翌朝。
カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ますと、まろは隣でまだ眠っていた。
静かな寝息に耳を澄ませながら、俺はそっと彼の手を握る。
外の世界は何も変わっていないのに、俺の中の景色は確かに変わっていた。
りうらの影は残っている。けれど、それ以上にまろの存在が強く刻み込まれていた。
『…ありがとう』
「ん…ないこ…。」
小さく呟くと、彼は寝ぼけたように俺の名前を呼んで、抱き寄せてきた。
夕暮れの喫茶店。
人目を避けるように奥の席に座る俺の前に、りうらが現れた。
その笑みは余裕に満ちているが、瞳の奥にはわずかな苛立ちが見える。
「…一体何しにここに呼んだわけ?まろ。」
カップを指でなぞりながら、りうらは冷ややかに言った。
俺は真っ直ぐにその瞳を見返し、静かに口を開く。
「りうら。もう、ないこから手を引け」
短く、しかし強い響きの言葉。
りうらの口元がわずかに歪む。
「手を引け? はは、冗談でしょ。ないくんは もう、俺の腕の中で甘えてた。あんな顔…まろなんかに見せたことないんじゃないの?」
「たとえ一度迷ったとしても…最後にないこが選んだのは、俺や。
お前がどう言おうと、俺は信じる。だから諦めろ」
りうらの笑みが消える。
数秒の沈黙の後、彼はカップを乱暴にテーブルへ置き、低く吐き捨てた。
「あっそ、本気で言ってるなら、壊してやるよ。その気持ちごと全部ね!!」
「壊されない。俺とないこは、もう離れない」
りうらの背中が一瞬だけ止まり、そして何も言わずに喫茶店を去っていった。
冷めきったコーヒーに視線を落としながら、小さく拳を握りしめた。
「……絶対、守る」