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第1話:出前かと思ったら、異次元のメイドが納品された
「──ご注文の『万能お手伝いさん』をお届けに上がりました」
ピンポーン、と間抜けなインターホンが鳴り、アパートの扉を開けた瞬間。
そこに立っていたのは、ピシッとした漆黒のメイド服に身を包んだ、銀髪の少女だった。
人形のように整った顔立ち。だが、表情は一切ない。
声もどこか機械的で、低く落ち着いていた。
「……あ、どうも。いや、俺が頼んだのは家事代行サービスの『お掃除おばちゃんコース』なんだけど」
「私で問題ありません。あらゆる家事、戦闘、およびご主人様の精神的ケアに対応しております。名前はノアとお呼びください」
「戦闘はいらんのよ。あと『万能』って、なんか手作り感満載のダンボールに入って届いてるけど……」
ルチアと名乗った少女は、自分がすっぽり入っていた巨大なダンボール箱から「すたっ」と軽やかに降り立つと、無表情のまま俺の部屋へと足を踏み入れ、ぐるりと見回した。
「……分析完了。散乱したカップ麺、脱ぎ散らかされた服、そして漂う孤独感。……胸が痛みます」
「最後の一言は余計だろ!」
「ご安心ください。これより本物件を人類が居住可能な環境へと再構築します」
言い終わるやいなや、ノアは信じられない速度で動き始めた。
残像が見えるほどの素早さで散らかった部屋が片付いていく。掃除機の音が「キュイーン!」とジェットエンジンのような重低音を響かせ、一瞬で部屋がピカピカになっていく。
「な、なんだこのスペック……マジで万能なのか……!?」
感心したのも束の間、ルチアは突然、俺の目の前でぴたっと足を止めた。
手にはなぜか、どこから出してきたのか分からない高級マッサージオイルのボトルが握られている。
「……え、ちょっと待って? なにしてんの?」
「業務開始前の、仕様確認です。ご主人様の疲労度チェックおよび……身体的密着の許容範囲を計測します」
「待て待て待て!! なんで服の上からオイル塗ろうとしてんだよ!?」
「問題ありません。私はプロのメイドです。ご主人様が『多少のハプニングでしか胸が高鳴らない』という性癖をお持ちの場合に備え──」
「持ってない! どんなオプション用意してんだよ!!」
あわてて手首を掴んで止めると、ノアの動きがぴたりと止まった。
「……あ」
掴んだ手首から、伝わってくる。
トクトクトク、と目覚まし時計どころではない爆音の鼓動。
ふと見ると、一切の感情を消した無表情な顔とは裏腹に、ノアの耳たぶが熟したトマトみたいに真っ赤になっていた。
「……ご主人様」
「な、なに……?」
「皮膚の直接接触により、私のメインフレームが異常加熱を起こしました。……責任を取ってください」
「自分から仕掛けておいて照れてんじゃねえか!! 帰れよもう!!」
こうして、俺の平穏な一人暮らしは、完璧でポンコツで愛が重すぎるメイドによってあっけなく崩壊したのだった。
#メイドロボット
#初恋
金子りさ
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コメント
1件
「出前かと思ったら異次元のメイドが来た」って導入、めちゃくちゃツボでした(笑)。ノアの無表情と爆速の家事スキル、そして「仕様確認」と言いながら耳が真っ赤になるギャップがたまらない。『戦闘にも対応』とか『密着の許容範囲計測』とか、どんな教育プログラムだよとツッコみたくなる。設定の緩さとテンポの良さで、次も読まずにはいられない——続きが気になる第1話でした!