翌日、僕が彼女の入院先に行こうと思い、
準備をし、入口まで行くと
母親に止められた。
「どこ行くの。どうせあの子の所でしょ。」
「そうだけど、だからなに?」
母は顔色を一気に変え、僕の頬を叩いた。
「昨日言ったでしょ!あの子とは関わらないでって!」
「…なんで…なんで関わったらだめなんだよ…?」
叩かれた衝撃により、声が思うように出てこなかった。
その返事に母は焦りながら答えた。
「それは、だから、ほら、び、病人、だからよ!」
「病人なら…関わったらいけないのかよ?」
「ん、うーん…とにかく!あの子とは二度と関わらないで!」
強く言い放ち、僕の手を掴み、ソファに放り投げられた。
そこからは母に監視され、上手く動けなかった。
もちろん彼女の所へ行くこともできなかった。
なぜ母がここまで彼女を拒むのか、理解ができない。
でも、このようなことが前もあったような…。
母に「あの子とは関わらないで」と言われ、
監視されたことが前にもあった気がする。
今回は初じゃないはずだ。
2度目の気がするが…わからない。
母は僕が学校に行くことも拒否し始めた。
母には1日中監視され、学校に行くこともできなくなった。
これで、彼女と会える日は一切なくなった。
どうにかして外に出られないかと考えたが、
何をしても外には出られなかった。
どこも鍵を閉められ、窓さえも後ろから固く何かを敷きつめられていた。
彼女と完璧に会えなくなって2ヶ月半。
母はやっと僕の監視を終えてくれた。
鍵も開けてくれ、窓の鍵も敷き詰められていた物も、なくなった。
その時間は夜中の1時を回っていた。
母がお風呂場に行った隙を狙い、僕は急いで外に出た。
行く場所はただ1つ。彼女の場所だ。
実はメールで彼女の場所を友達に教えてもらっていた。
彼女は僕が監視し始められた日からずっと入院しているそうだ。
彼女の入院先に僕は走って、息が途切れそうでも走り続けた。
そして、たどり着いた病院。
病室を聞き、病室までも走った。
走ったせいで、看護師さんにも注意された。
それでも、僕は彼女に会いたかった。
ガンッ、と音を立て扉を開けた。
そこには髪が抜け落ち、
夜空を眺めていた少女が立っていた。
少女は丸い目をしてこちらを向いている。
「──ちょっと…!来るなら言ってよね!」
彼女はすぐに帽子を被ろうとする。
その手を僕は止めた。
「綺麗だよ。生きててくれて、ありがとう」
自然にそんな言葉が出た。
「え。そ、そんな、当たり前じゃん!
まだ生きるに決まってるじゃんか!
でも、余命はもうないけどね、笑」
微笑みながらそう答えた彼女。
その笑顔が苦しかった。
僕がもっと早く来てれば、
僕が監視なんかされなければ、 と後悔した。
「ごめん…本当にごめん…けどね、
おすすめの場所調べてきたんだよ。
病院、抜け出そっか。」
「前の私みたいだね〜笑
でも私、歩ける自信ないよ。
もう、立てるくらいしかできないよ。」
「大丈夫。僕が君をおんぶしてあげるよ 」
彼女に背中を出した。
「おいで」と一言。
「ありがとう。」
丸い月と、星が綺麗に輝き、
今の僕達を照らしている。
その下を僕達は駆け出す。
続く…