テラーノベル
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【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
2年ほど前に他サイトで投稿していたシリーズです
テラー向きの内容ではない気がして見送っていましたが、今回ようやくこちらでも投稿する決心がつきました!
桃さんにその気がない、青→桃の一方通行なお話(かと思いきや…)
完結までまた久々に毎日投稿予定です。お付き合いいただけたら嬉しいです
ブラインドの隙間から部屋に差し込むのは、一筋の淡い赤。
もうすぐ西へと沈んでしまいそうな夕方の光が、目の前のあいつの横顔を照らしていた。
「何でそんなに極端なんだよ! お前には0か100かしかないわけ!?」
ダン、と大きな音を立てて壁にその体を押し付ける。
胸倉を掴んだ態勢で見上げた目は、こちらが思わず息を呑むほどの冷めた光を宿していた。
好意を寄せられている自覚がなかったと言えば、多分嘘になる。
何となく自分を見る目が他と違うのは感づいていたし、それが友愛でなく恋愛感情だとはっきりと認識していたわけではなかったけれど、今思い返せば納得がいく。
こちらを見つめるその青い瞳を不快だと思ったことなんてない。
それだけは確かで、嘘も偽りもない。
だけどそれを受け入れられるかと言えば、答えはそんなに簡単じゃなかった。
「まろ、俺はさ」
事務所の会議室。
もう誰もいなくなった夕方のその一室で、向かい合った態勢のままそう改めて呼びかける。
いつものおちゃらけたあの絵文字のような表情すら欠片も見せず、まろは真顔でこちらを見据え返していた。
「今のこの関係も大事だし、お前のことも好きだよ」
必死で頭を回転させながら、それでも自分の中に確かにある言葉を探る。
建前や嘘は必要ない。
怠惰を自称するけれどまろは真面目だから、こちらもそれ相応に応じなければいけないと思った。
「でも、お前の言う好きとは違うんだよ」
まろは俺がこのグループを作るときに、一番に声をかけた。
こいつがいてくれたらいいなと思ったし、歌い手としての実力はもちろん、それ以外の面でも頼りになった。
常に支え続けてくれているからここまでこのグループが走って来られたんだと思う。
感謝こそすれ、疎む理由はない。
仲間として、社会人の先輩としても尊敬している。
好きか嫌いかで分けたら当然好きに分類されるわけだけれど、この「好き」という言葉は、やっかいなことにいくつもの種類を包括してしまう。
まろが俺のことを好きだと言ってくれるのと、俺が感じる気持ちは全く違う。
「好意」と言葉で一括りにすれば一緒なのに、決して交わることのない線と線。
だけど告白を受けた側の定番のセリフ、「ごめん」と謝るのは今は違う気がして、納得してもらおうとそんな言葉を自分の中から懸命に引きずり出した。
「ん」
少しの間の後、まろは小さく声を漏らして頷いた。
まるで俺がそう言うだろうことなんて初めから全て分かっていたかのように。
「言いたかっただけやから、謝らんでえぇよ」
嘲笑とも苦笑とも取れるような笑みを浮かべて、まろは唇を歪めてみせる。
その表情に申し訳なさがこみ上げてきたけれど、きっと俺にはどうしてやることもできない。
「引くよう善処はするし、諦める努力もする。ただその前に、多少は伝えてもいいかなって自分に許そうとしただけ」
まろらしい、控えめな言い方だと思った。
押し付けるわけじゃない、こっちの気持ちが自分のそれと同じでないことを認識して、それで尚俺に合わせようとしてくれているのが分かる。
「ありがとう」も、きっと正解じゃない。
ただ言葉を失くして、踵を返す青い髪を見送ることしかできなかった。
まろはさすがに大人だから、これをきっかけに俺を避けるようなことはなかった。
活動も今まで通りでモチベーションを下げることもなかったし、俺の社長業を手伝ってくれるのも相変わらず。
その事実にホッと胸を撫でおろす。
だけど…確かに避けることはないけれど、まろ自身からこちらに話しかけてくることは減ったようにも思う。
俺の多忙を気にかけて、横から当然のように手を出し仕事を請け負ってくれるのはいつものこと。
だけどそんな何気ないときの笑顔やかけられる声は少なくなった。
もちろん、こちらから声をかけたときはいつも通りに返事をする。
だけど…避けられてるわけじゃないのに、何故か気まずさが拭えない。
そんな思いを抱えていた頃、ミーティングで今後のペアでの歌ってみたの話題が上がった。
最近はソロで歌を出すことが多くなっていたから、久しぶりにペアでも頻発させようという話になる。
「リスナーさんにもリプとかもらってさ、リクエストの多いいつもと違うペアとかで出すのも面白いんじゃない?」
そんな提案をしたのは珍しくりうらだった。
最初の頃は活動や仕事内容を吸収することに必死だったりうらは、最近では自分からも能動的に動くようになった。
俺の仕事を手伝ってくれることも増えたし、その成長速度は目を瞠るものがある。
だから積極的にこういう提案をしてくれるのもありがたいことではある。
…ある、けど…。
「…え、それは…公式ペアじゃないのでってこと…?」
戸惑い気味に問い返すと、りうらはにこりと笑って「うん」と頷いた。
「確かに、ろくに歌ってみた出してないペアもまだあるもんなぁ。おもろいかも」
俺の隣の席で、あにきも同調する。
あにきの言葉を受けたせいか他のメンバーも一様に頷いた。
何故か焦燥感を覚え、俺は慌ててその話題の次の発言権を引き取る。
「や、でも…急に今までと違うペアで出してもリスナーの皆も困惑せん?」
皆の目が一斉にこちらを向いた気がした。
俺の目の前のりうらの赤い瞳がパチリと瞬く。
きょとんとした表情で小さく首を傾げてきた。
「だからリクエスト取ろうって話だよ。ないくんどうしたの? 反対?」
「…いや…」
「まぁまぁ、公式ペアでも出したらええやん? 別に何個出したってええんやからさ」
パン、と手を叩いて話をまとめたあにき。
それを合図に今日の議題が全て議論されつくしたことを告げる。
急に訪れたその締めの空気に、自然と解散の流れになってしまった。
一番に立ち上がったいむが、隣のしょうちゃんの腕を掴むのが視界の片隅に映る。
「しょうちゃん、ペアで出すんだったら何やる?」
「そうやなぁ…」
こちらは当然今まで通りの2人でやる気なのか、まだ本決まりでもない企画について話し始めていた。
…そりゃそうだよな。急に新しいペアって言っても、最初は戸惑うに決まってる。
まずやりたい方向性から話し合うところから始めなくちゃならない。
だからきっと、多分まずはやっぱり公式ペアでって話になるだろう。
珍しいペア分けならきっともう少し慎重に進めた方がいいに決まってる。
胸の内でそんなことを漠然と考えた。
…なのに。
「りうら」
会議室から出ようとしたりうらを追いかけるように、まろが席を立った。
振り返ったりうらが10センチ近くも身長の高いまろの顔を見上げる。
会議に使った資料を机の上で揃えながら、俺は何とはなしにその光景を目で追ってしまっていた。
「この前りうら英語の歌みた頑張っとったやん。今度ペアで英語でやってみる?」
まろの声は不思議だ。低くても威圧感がない。
芯があって声量も人並み外れているのに、それでもどこか落ち着いている。
そんなまろの声が、今俺の眼前でりうらにそんな言葉を吐く。
目を見開いた俺と同じように、りうらは驚いた顔をしていた。
だけどそれも一瞬のことで、すぐにパァッとその目が輝く。
「やる! いいの?まろ」
「リスナーさんからリクエスト来たらやけどな」
「来るでしょ、やりたい! ちょっと帰りながら話そ」
「だから、リクエスト来たらの話やけど」
「来るって絶対!」
りうらがこの前一人で英語の歌ってみたを出したとき、歌詞の意味や発音をまろが丁寧に指導していたのは知っている。
筋がいいとしきりに褒めていたし、りうらがまた一段階成長するには必要な過程だったと理解もしている。
だから今回のこの話も何も不可解な点はない。
むしろそうあるべきで、そうあってほしいとリスナーさんたちが願うだろう喜ばしいことなはずだ。
「……」
資料を持つ手に、力がこもる。
ぐしゃりとひしゃげてしまいそうなそれに気づき、慌てて離した。
支えを失った紙がパラリと指先からすり抜ける。
あ、と思った時には隣からあにきが手を伸ばしてきた。
机からも落ちてしまいそうだった資料を、あにきの長い指が拾い上げる。
そしてそれをこちらに渡し返しながら、俺に向けてもう会議室を出て行ってしまった2人の方を顎で指し示した。
「どっちがショックやったん? ないこ」
「…え?」
間の抜けた声が唇の隙間から零れる。
空気が漏れただけのようなそれはただ宙を舞って空しく消えた。
「どっちもないこの相方やん」
問われた意味をようやく理解して、思わず唇を引き結ぶ。
小さく頭を振るとピンクの髪がふるりと揺れた。
「そんなんじゃないよ」
そんな友達を取られた小学生のような子どもっぽい感情、あいにく持ち合わせていない。
本来ならそう即答できるはずだった。
だけどこのずっと喉の奥に張りついたような違和感と不快感は、確かにそこに存在する。
思ったように声を発することができない。
俺の様子を汲み取って理解したのか、あにきがそれ以上言葉を重ねてくることはなかった。
りうらが提案した通り、数日後にはSNSを使ってリスナーから歌ってみたのペア募集が始まった。
話題はあっという間に拡散され、膨大なリプが届く。
その全てに目を通すことは叶わないけれど、全メンバーでできる限りの意見を取り込もうと奮闘した。
どのペアもリクエストがなかったわけじゃないから、どんな組み合わせで歌を出したところで誰も違和感は持たないだろう。
まろとりうらの英語の歌みたもリクエストが届いていた。
そのリプを見るたびに胸の内でどこかざわつく気がするけれど、その自分の感情の正体すら解釈できない。
「ないこ」
そんなこっちの気持ちを知ってか知らずか、まろが不意に俺を呼んだ。
その日の仕事はほぼほぼ片付き、もう他メンバーもまろもすぐにでも帰れるという頃合だった。
夕方。外の夕日は既に傾き始めていて、ブラインドの向こう側の光が隙間からこちらを照らすように漏れ入ってくる。
「残った仕事手伝う。ちょうだい」
社長用のデスクの向こうから、まろが少しだけ身を乗り出した。
差し伸べられる大きな手はいつも通りなのに、普段浮かべられていたはずの笑顔は今日も見られない。
「…ん」
確認作業とまとめ作業が残された資料を手渡す。
…あれ、こんな時どんな会話をしていたっけ。
仕事を手伝ってもらったときって、どうやってお礼を言ってたっけ。
そんな簡単なコミュニケーションの取り方すら分からなくなる。
受け取ったまろは、そのまま踵を返して部屋のドアへと向かった。
そこから出て行こうとしていることに気づいて、俺はバッと顔を上げる。
「何で」と疑問が浮かんだ瞬間には、それは口から吐露されてしまっていた。
「どこ行くの、まろ」
「え? あっちのミーティングルーム」
顎で部屋の向こうを指し示しながら、まろはこちらを不思議そうに振り返る。
「…何で?」
いつもならここで…俺の隣で仕事するじゃん。
真剣に資料に向かい合いながら…それでもたまに思い出したように雑談を始めて、いつもはそこで笑ってるじゃん。
「なんかしょにだが話したいことありそうやったから、聞きながらこれ片付けてくる」
俺が渡したばかりの資料を軽く持ち上げて見せて、まろはそう言った。
その言い分には何ら不自然なところはない。
でも…嘘ではないかもしれないけれど、それは取り繕われた言い訳だ。
まろはここに…俺の隣にいたくないんだろう。
何で? 告白されてそれを断ったら、もう今まで通りにも戻れない?
まろは俺を避けているわけじゃないけれど、これまで通りに戻ることもきっと拒んでいる。
俺とは最低限の距離を保ち、それ以上は踏み入ってこない。
そんなの友達以下、仲間以下の存在だ。
今まで俺に向けられていた笑顔と声が、その分他のメンバーにも同じように分散されて振り分けられたような気分だった。
「…何で…」
今日何度目かのそんな言葉が、つい口をついて出た。
それを自覚したときにはもう俺は椅子から立ち上がり、大股でまろの方へ向かう。
ズカズカと床を踏み鳴らす音は、明らかに自分の苛立ちを表していた。
ドアに手をかけようとしていたまろが、俺の急な剣幕に目を見開いてこちらを見やる。
その状況を理解しきれていない呆けた表情を睨み上げて、俺はぐっとその胸倉を掴んだ。
「なぁ、最近のお前なんなん? 避けてるわけじゃないかもしれないけど、普通に感じ悪くない?」
首元までしっかりとボタンを留めているまろのシャツを、握りしめる。
それに更にぐっと力をこめると、驚いていたまろの目がすっと徐々に光を失っていくのが分かった。
「お前の気持ちに同じ質量で返せないだけで、俺は仲間としてのお前も失わなきゃなんないの?」
ブラインドの向こうから差し込む夕方の赤い光が、まろの横顔を照らす。
怖いほどに整った顔がこちらを見下ろすせいで、重苦しい圧力のようなものを感じ取った。
それでも俺の口は自分自身ではもう制御なんてできなかった。
「何でそんなに極端なんだよ! お前には0か100かしかないわけ!?」
ダン、と大きな音を立てて壁にその体を押し付ける。
胸倉を掴んだ態勢で見上げた目は、こちらが思わず息を呑むほど冷めた光を宿していた。
大声を上げて怒鳴ったせいで、息が上がる。
肩を上下させて呼吸を整えようとした俺を、まろはしばらく目を細めて見据えていた。
だけどやがて、「…かつく」とボソリと低い声が俺の耳に届く。
聞き逃したそれに「…え?」と声を漏らした瞬間、まろがバッと俺の手を振り払った。
そしてその隙を逃さず、今度は逆にまろが俺の胸倉を掴み上げる。
「その気もないのに、この距離はむかつく」
配信時の高くふざけた声なんて、彷彿とすらさせない低い声。
いつもこちらを甘やかすような柔らかさなんて欠片も見せない固い空気。
その全てに戸惑いを覚えたけれど、そんな俺に構うことなくまろが掴んだ服ごと力任せにぐいっと引き寄せた。
「…ん…っ?」
乱暴に押し当てられる唇。
ぶつかるような勢いのそれは、甘さなんてものは微塵もなく「キス」なんて言えるものじゃなかった。
ただ…だからこそまろの苛立ちが伝わってくる。
「100になったらこうなるんやから、覚悟もないくせにこっちに来んなよ」
冷淡な声を俺に突き刺しながら、まろは掴んでいた手も乱暴に離した。
ぐいと突き離されながらも、俺は目を白黒させてその冷たい眼差しを見つめ返すことしかできない。
「俺は…」
一瞬目を伏せたまろが、次に顔を上げた時にはさっきよりも眉間に皺を寄せて表情を歪めていた。
「50のないこなら、いらない」
冷たいようで……だけどどこか痛みを抱えたようなその視線に、俺は言葉を失ってそこに立ち尽くした。
コメント
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この作品がついにここでも読めるんですか…、!?!?✨✨ 想いを伝えたあとから始まるのが衝撃的なんです…😭💕 些細な変化に気づくのは黒さんなイメージがあって解釈一致すぎです👉🏻👈🏻💕 一つ一つの表現の仕方が的確で書き手として尊敬でしかないです…語彙力の幅が広くて研究させてもらってます…✨✨ いつも癒しをありがとうございます…あおば様のおかげで明日も頑張れます、!𐔌ᵔ ܸ . .ᵔ ꣓