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青々とした森の中。
悠々と魚が泳ぐ。
木漏れ日が肩にかかる。
砂利を踏みしめて、歩いていく。
「ねえ、その絶景スポットってどこ」
「フフ、こっちよこっち」
僕は、おかっぱの少女について歩いて約1時間。
もうそろそろ足が疲れて来た。
「フフ、ここよここ。綺麗でしょ?」
そういった時、視界が明るくなった。森の中の小さな滝と崖。
崖には舗装もされていない。
ベンチもない。
そこにあるのは、ただただ美しい景色だった。
空中を水の中のように泳ぐ魚が、バッタをぱくりと食べている。
青い木々は、目にいいだろう。草花が水草のように揺れる。
水中のように歪む太陽は、あまり眩しくなかった。
ざあざあと水が流れる、音がする。
「本当にきれいだね」
「やっぱりそう思うでしょ?」
にへら、と笑う少女の名前は知らない。
僕が誰であったかなんてものも知らない。
ただ、美しい世界に溺れるだけ。