この作品はいかがでしたか?
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この作品は、実在する実況者様たちの名前をお借りした二次創作となっております。
御本人たちとはなんの関係もございません。
腐向けではありません。
nmmnを取り扱っております。
それでは、どうぞ_______________
感覚が無くなりつつある指先をポケットに突っ込んだ。無造作な動きは爪を生地に引っかけ、鋭い痛みが走る。悪いことしか感じない手に苛立ち、舌打ちをしようとして失敗した。浮わついた人混みの中で座っているベンチに拳を振り下ろす訳にもいかず、はぁと大袈裟なため息をつけば厚い眼鏡が曇った。それを拭くのも億劫で、仏頂面のままでいた。
「……踏んだり蹴ったりや」
「寒いんやったら店の中で待っといたらよかったのに」
「…居んねやったらはよ言えや」
すまんすまん、あと眼鏡曇っとんで、と棒読みで謝罪の言葉を並べる目の前の彼を睨んだ。
心底眼鏡を拭いていなかったことを恨んだ。
周りは大体が男女のカップルである。辛気臭い顔をしたサラリーマンもいるが、都会のネオンサインで存在自体を掻き消されているようだ。ちらりと自分より下にあるくせっ毛の頭を見れば、性格に似合わないふわふわの耳当てを着けていた。外の寒さに比べれば薄着の自分への当てつけに思え、奪い取った。
「何すんねん返せよ」
「取られる方が悪いんやろ」
刹那、蹴られた。脛を。
「痛ェ!」
「蹴られる方が悪いんとちゃうか」
暖かさを剥ぎ取られた奴は怖い。
ここが街中でなければ、壮大な口喧嘩が始まっていただろう。しかし、ここではコイツの名前も本名も口にすることは出来ない。同様に、自分の名前も本名もコイツに呼ばれない。大声を出すことも怖いのだ。
身バレ。
数年前までは自分にその言葉が当てはまるだなんて考えたこともなかった。一生あの暗いサラリーマンのままで、文字通り給料に一喜一憂して、媚びへつらって、それだけ。そう思っていた。
ある日、友人にごみ溜めから引っ張り出された。そしてチーノという名を貰った。新しい遊び場と職場を一気に手に入れた。名前が国名だった、本当に最初の時は彼らに自分の声は届かなくて、チャット上の会話だけだったけど、ゲームも着いていくのに精一杯だったけど、それすら心地良かった。新しい人生がこんな時に始まると誰が予測できたのか。自分は百八十度ぐるりと方向転換した。してしまった。
「ぼーっとしとらんと早よ返せよ」
「この高さに届いたらな?」
マスク越しでも分かる、自分のにたぁとした気味の悪い笑い顔にコイツは真顔になった。
「股間殴られたいん?俺は寒いねん、アホ」
滑舌の悪い声に寒さも相まって聞き取りづらいが、公衆の面前でのたうち回るのは嫌なので渋々返す。引ったくるようにして奪い取ったコイツは、それを耳に充てず首に掛けた。似合っているのが腹立たしい。
「掛けへんの、寒いんちゃうんかお前」
「もういいわなんか」
マスクを指で押し下げて吐き出す息は白い。動作一つ一つが絵になっているのは流石あの人の後輩か。
みなさんどうも、夜魔です。
こんな短期間(30分以内)に二個目を投稿するとは!吃驚した。
新シリーズですね、年終わりそうなのに。
さあ語り手の相手、アイツとは誰なんでしょうか。察しの良い読者さんならもう分かってしまわれたのでは?
それでは、また次の作品でお会いしましょう。
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