「うわ…雨じゃん…」
朝の天気予報なんてあてにならないもんだな。あんなに今日は晴れるって言ってたのに。
いつも決まって同じ時間に同じテレビを見ている。親は俺より早く家を出るため、あまり顔を合わせず一人朝ごはんを食べて占いを見てから家を出るのだ。山羊座の俺は占い最下位。かと言って何かあった試しはないし、天気予報も外れるし、全然信じてはいなかったんだけど。
「今回はある意味当たったのかな…」
朝はしっかり晴れてて、帰りも平気だったのに…
急に降られたために駅まで行けなく、途中のバス停で雨宿りするところだ。
(ツイてないな…)
「ねぇ」
ベンチに座ってスマホをいじっていたときだ。顔をあげると、自転車に乗りながら傘を突き出している青年がいた。制服を見る限り、同じ学校の生徒らしい。
「なに、これ?」
「困ってるんでしょ、やるよ」
背が高い青年だった。ざっと180はあるだろうか。
「いいの?」
「うん」
「でも、君は?」
「俺はいいよ。じゃ」
そう言って雨の中走り去っていった。雨は激しい。打たれたら風邪を引いてしまうんじゃないか、とも思ったけれど、そんな心配もできないまま、もうその姿は小さくなってしまった。
「いいのかな、これ…」
ボロボロで汚れた、使い込まれた傘。ちょっと雨水が漏れてくるところもある。でも、傘がないよりは断然マシだった。
その傘を差しながら、俺は駅へと向かって歩く。帰るまでに服が多少濡れたけど、ずぶ濡れよりはいい。
「ただいま…」
玄関を開けても返事は来ない。早くに出て行っても、帰ってくるのも遅いため、この広い家には一人きり。高校生だから大丈夫だと思われてるようで、両親は本当に放任主義なのだ。
部屋の片隅に立てかけた折り畳み傘。バス停で貸してくれたあの高校生。襟足が赤く、長身の彼は何だったんだろうか。傘を貸してくれたのはありがたかったけど、顔見知りですらない。
明日会ったら返そう。どうせ同じ学校だろうしね。でも今思えば、顔は知っているものの、クラスも名前も知らない。特徴的なのは身長と髪。クラスの奴らにも聞いてみるか。
「今時いるんだ、あんな奴…」
ファンタジー感のあるその第一印象に、ますます気になって仕方なかった。
To Be Continued…
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