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この世の利器には柄に宝石を填めていた。古来からの宝石には想能(スランナン)と呼ばれる思念が詰まった魂でできていて、あらゆる祭りや戦い、占いなど様々な事象に深く関わっていると考えられている。赤は炎、青は水、黄は土、緑は風、紫は毒を象徴していて、その組み合わせやバランスによって禍福をもたらしたと騒がれていた。また、その5つの宝石が集まめて剣に填めたものを高魂剣(クァウゴェンキョス)と呼んでいた。劔使いは高魂剣を求め奔走するも、手に入れた者は紀元前何千年も前から数えても巻物の1巻にも満たないほどしかいない。それも、大部分は手に入れて直ぐにこときれていた。それほど厳しい話である。多くの劔使いは、長安(ダンアール)から四川・天府(スリィトゥロン・フリンファ)、青海・三江源(ツァェンファ・サムクァングァル)、雲南・拓東(グヮンナーム・フラァクトォン)、など西部(スネェルバッ)へ目指し、長く苦しい訓錬(グヮンラン)を乗り越える。今日もまた、高魂剣も求め四川や青海まで目指すものが現れた。
藍妹(ラムマーツ)。彼の家系は四川や青海系の先祖を持ち、長安で劔鍛冶を営んでいる。彼は父にこう話したという。「尊父。僕は一劔鍛冶として、高魂剣を目指して参ります。」彼は嵐すらもろともしない精神を持ち合わせており、両親も期待している。翌日、もう少しすれば日が昇るほどの時に藍妹は故郷、長安を離れ、隴(ロウ)を目指し歩む。黄河の川に沿い、道行く人みんなに二度見されても足を止めない。
道の途中で、同志(フロォンクッ)に会う。その同志に藍妹は話しかけ、名と出どころ聞く。「君は僕と同じく高魂剣を目指す者か。名と出どころは?」同志はこう話す「僕の名は福寧(プッネェン)。出どころは閩(ムァン)。君は?」と。藍妹も続けて答える。「僕の名は藍妹。出どころは秦(ズィン)。君の根性はすごいものだ。」苦笑しながらも福寧は続けて「大体の奴が蘇(サー)で諦めたんだ。」と言う。藍妹が「そいつらは甲斐性なしだな。」と辛辣に言う。けれど予想外にも、福寧が「本当にそうですよ。学びもなければ劔も扱えず、それでも高魂剣を手に入れて國を手に入れたいとほざいているんです。馬鹿も風邪も煙も大概にしろという話ですよね。でも、そんなやつを西部へ放り投げようとする奴親(ナァツシン)も頭おかしいだろ。」と藍妹の倍以上の諦めた仲間への辛辣な言葉が飛んできた。
宿までまだまだ距離があるが、白昼になった。藍妹と福寧は河原で昼食とした。藍妹は「火を起こすから荷物からなんでも持っていけ」といいながら、枝で火起こしする。福寧は「わかった。容赦なく米をもらっていくぞ。薬草を草原から採りに行く。」と2人は協力し、精進料理のような詫び寂しさがある粥を完成させた。2人はそれをかっ喰らう。かすかに塩味がするようなしないようななんともいえない味だが、これが2人の命の源であった。昼食を終え、再び歩き出す。宿へと向かい出す。
寄宿まではあともう少しでかつ日没の頃に福寧は疲れで喘ぎ始めた。
福寧は「疲れて歩けない。」と座り込む。藍妹はため息をして、福寧をおんぶした。そして、寄宿へ。宿は質素な作りで2人分の布団で限界レベルの部屋に、水が入っている大きめの桶があるだけ。
藍妹は福寧に「先に入れ」という。福寧は意味不明なことに赤面し、「藍妹が先に入れ。」と押し付け合い、最終的に藍妹が先に入った。ひどい腐卵臭で吐きそうだ。
藍妹が就寝した後に福寧も入ったようだ。でも…どこかを打ったのだろうか。近くに麻の葉に血がついていた。