阿部ちゃんの態度はしょっぴーの前で恋をする前も後も変わらない。だからしょっぴーはおろか、メンバーは誰も阿部ちゃんの想いに気づいていないし、俺から見てももどかしく思えるほど2人は何も進展がなかった。
しかし、その火は熾火のようにいつまでも燃え続けていて、ふとした眼差しやところどころの言葉のあやに確かに表れていた。
俺が誰よりも阿部ちゃんを見ているのだから間違いがない。
阿部ちゃんは、誰にも言えない胸の内を、黙って聞いてくれる相手を求めていたのだろう、時々俺に話しかけてくるようになった。
💚「俺ってうじうじしてんね」
🖤「そんなことないよ」
もっとうじうじしてるのはこの俺だ、と声に出して言ってしまいたい衝動につつかれながら、阿部ちゃんの話を聞く。
少し離れたところで、しょっぴーは岩本くんと仲良く話している。しょっぴーが岩本くんにベタ惚れなのは誰から見ても明らかで、時々喧嘩もするけど、あの2人は基本的にすごく仲良しだ。
💚「最近、1人仕事の方が気が楽なんだよね」
阿部ちゃんは長い睫毛を伏せて、無理に笑った。俺がいるでしょ、と立候補したい気持ちをどうにか抑えて辛抱強く話を聞く。
しばらく黙って何かを考えていた阿部ちゃんは、今夜、一杯だけ付き合って?と俺に甘えて来た。
💚「翔太と話そうと思う。その後、付き合って」
🖤「いいよ」
その時。
その時、俺は本当に最低なんだけど、阿部ちゃんの失恋を願った。
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