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「つぼ浦ってさぁ俺のどこが好きなの?」
2人でダラダラと寛いでる所に急にブッ込んできた。水を飲んでる最中、驚いて思わずむせ返る。
「!?ゴホッゴホッ……やめろよ急に…ゴホッゴホゴホッ」
「えっちょっごめん、大丈夫?」
背中を擦りながら謝る。つぼ浦は涙目になりながらこちらを睨んできた。
「はぁ…はぁ…マジで勘弁してくれ…」
呼吸を落ち着かせて再度水を飲む。返答が来るかと思いきや、何事も無かったかのようにスマホを弄り始めた。
「え?あれ、無視?衝撃で忘れちゃった?つぼ浦は俺のどこが好きなの?」
「…そんなん聞いてどうすんだよ。」
平静を装っているが明らかに声に動揺が出ている。
「どうするっていうか気になるじゃん。何でも良いよ。それとも恥ずかしくて言えない?」
「何言ってんだこのオッサン…じゃあアオセンは言えるんすか。」
「俺?沢山あるよ?照れ屋なのにやけに素直で可愛い所とか、美味しそう〜な、幸せそうな顔しながら飯食ってる所も好きだし、困ってる人いたら迷い無く声かけて手助けするし、実は面倒見も良いし、こっそりクラフトしたり備品補充したりしてるのも」
「だぁ待ったストップストップ!俺が悪かったからもうやめ」
「でも1番はポジティブな所だな。ネガティブをポジティブで押し返せるほどパワーがあるの凄いよ、正に南国刑事だな。俺には無いものを持ってるのが偶に羨ましくなる。つぼ浦といると元気になるよ。」
気にしていない風を装いスマホから目を離さず聞いていた。
「…俺のその元気の源はアオセンっすよ。」
「ん?何か言った?」
「いやなんも?」
「あっおい隠すな、教えろ。」
「空耳じゃないすか?」
「絶対なんか言っただろ。てかそれより質問。俺が教えたんだからお前も教えろー!」
「俺は教えるなんて一言も言ってませーん!さーてそろそろ帰るかー」
「あっずる!逃げんな!」
じゃれ合いながら外へと向かう。1月半も経てば大分慣れたようで2人の距離も徐々に近づいていた。
「明日は出勤するすか?」
「かなー…あ、明日パシフィックある日じゃん。」
月明かりに照らされながら、優しい風が2人の髪を撫でた。今までは声をかけてから手を握っていたが、今日は何も言わず繋いでみようとふと思い立ち、無言で手に触れる。
「うぉあっ!?アオセン!?」
驚いて思わず手を引っ込めた。
「お前驚きすぎだろwほら。」
「いつもはなんか一言あるじゃないすか。」
目の前に差し出された手を少し乱暴に、今度はしっかり握りながら文句を言う。
「だっていつも帰り手繋いでるじゃん。だからもういらんかなと思って。」
「いや心の準備っつうモンが…」
本人は無意識だろうが、目を逸らしながら後ろに背負っているバットに手を回すのが照れ隠しの時の癖だと青井は知っていた。
「つぼ浦はウブだなー可愛い。」
「それはからかってんすね?」
またじゃれ合いが始まる。ひとしきりふざけ合い満足した2人は少し息が上がっていた。
「はぁーもう疲れた。こういう時歳を感じるな…」
「元はと言えばアオセンのせいっすよ。ふぁ〜ぁ、眠くなってきたな。……じゃ、また明日。」
「おー、また明日な。」
つぼ浦と別れ家に帰る。月を見上げながら、どこが好きなのかいつか絶対聞き出してやろうと静かに闘志を燃やした。