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『ブランシュが無事仔馬を産んだら、それはリリーにあげよう。お前だけの馬だ。――大切にしてくれるね?』


その約束を思い出した瞬間、胸の奥から温かな喜びが溢れてきて、思わず両手を胸の前で組みしめていた。


「……嬉しい! 落ち着いたら、その子にも会わせてね!」


リリアンナの声は、弾むように明るかった。


「承知しました。リリー嬢の馬になる子ですから、最初に会ってもらわないと」


カイルもどこか誇らしげに微笑み、リリアンナの喜びを分かち合うように頷いた。



そのやり取りを少し離れて見ていたナディエルは、微笑ましさと同時に胸の奥に小さな不安を抱く。


(……あまり馬に近づきすぎると、噛まれたり蹴られたりしかねませんよ?)


心配を押し隠しながらも、ロゼッタが優しく鼻面を寄せる様子に、少しだけ安堵の息を吐いた。


(それにしても……カイル、もう少し言葉を選んでもらいたいものですが)


とはいえ、カイルと話すリリアンナの表情はとても楽しそうで、少し離れたところから二人を見守るナディエルも自然と口元をほころばせていた。


(ああ、でも……。結局のところお嬢様が笑っていられるなら、それが一番?)



そんなナディエルの視線など気づかぬまま、真っ白な毛並みの老馬スノウや、漆黒の牡馬ぼばナイトが羨ましそうに首を伸ばしてくる。柵越しにのぞく瞳はどれもこれも「自分も撫でてほしい」と言わんばかりだ。


「待って、待って。みんな、順番だよー」


リリアンナは笑みを浮かべ、ロゼッタのたてがみから手を離すと、一頭ずつ丁寧に鼻筋を撫でていく。スノウは嬉しそうに鼻を鳴らし、ナイトは誇らしげに首を振った。



滞在当初は互いに少しよそよそしかったカイルとも、毎日のように顔を合わせるうちに冗談を交わせるほどに打ち解けていた。


呼び名も、〝リリアンナ嬢〟から今では〝リリー嬢〟へと変化している。これは、リリアンナが「リリアンナ嬢はくすぐったい。リリーって呼んで?」とお願いしたためだ。



もっと遊びたい気持ちを抑えて、リリアンナは名残惜なごりおしそうにきびすを返す。


クラリーチェ先生との講義の時間が差し迫っていた。



***



厩舎きゅうしゃをあとにしたリリアンナが、家庭教師カヴァネスのクラリーチェ・ヴァレンティナ・モレッティから書簡作法や宮廷儀礼の基礎を学んでいた頃、ランディリックは鍛錬場へいた。そこへ兵士が駆け寄り、頭を下げる。


「報告いたします。城壁の外で、獣に食い散らかされたとおぼしきウサギの死骸が見つかりました。付近の足跡からみて、オオカミの仕業だと思われます」


幸いオオカミは一匹分の足跡しか確認されなかったらしい。恐らく、何らかの理由で群れからはぐれたオオカミだろうとのことだった。オオカミたちは基本エルドヘイムの森付近にいるので人との接触はほぼないのだが、一匹とはいえ城の付近まで降りてきているとしたら、遠からず人への被害も出るかも知れない。


「場所は?」


「城壁の南側付近です」


南側と言えば、厩舎が近い。瞬時にそこへ足繁く通っているリリアンナの顔が浮かんだランディリックは、表情を険しくする。


実は今朝がた、執事のセドリックから、城壁の南側に修繕が必要な箇所があると報告を受けたばかりなのだ。


訓練を早めに切り上げて、そこを見に行かねばと思っていたランディリックだったが、今すぐ確認に行った方がいいかも知れない。


「……厩舎へ行く」

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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