エピソード2”異界への入り口”
「ったく、ヨッシーのやつ俺まで…許さん…」
巻き添えを食らって少し虫の居所が悪い。
「まあまあ、いいじゃんか!」
満面の笑みで言ってきやがった。
悪意しかないのが伝わって来る。
ナギたちは教室に戻る。
するとすぐに授業が始まる。
ナギは窓側の席の特等席、俗にいう窓側の一番後ろの席、その隣は___
「ナギ、おはよう!」
爽やかな雰囲気、少しパッチリした目、橙色の髪をしたこの声をかけてきたこの男は宮本くん。
ナギの唯一の男友達と言ってもいい。
そして学校一のモテ男である。
「おお、おはよう」
「今日のニュース見たか?朧市でだってさ」
「ああ、物騒たらありゃしない」
「そうそう、原因不明らしい…異世界に連れてかれたとかネットじゃトレンドになってるよ…」
「そう…なんだ…」
(異世界か…)
シオンの言っていたゲームもそんな感じだった気がするがはっきり出てこない。
「あとここ最近、同じ夢を見る人が続出してるらしい」
「どんなの?」
こういう怪奇現象やなんたらは苦手なはずなのについ深追いしてしまう謎の現象がナギを襲う。
「えー珍しいね。ナギが興味を持つなんて」
「まあ…な」
普段はこう言う手のやつは深追いしないのが彼のポリシーだ。理由は特にないが夢に出て来るのだけは遠慮願いたいなんて思っているようだ。
「じゃあ教えてあげるか!何かが追いかけてくるとかそう言う怖い話ではないから安心したまえ。」
彼なりに気を使ったのだろう。
自信ありげに一応前置きをしてくれた。
「あんま面白げはないけど、ほんとただ銀髪?白髪?の少女が後ろを向いて黙ってるだけの夢…みんながそんな夢を見たらしい」
「そう、そうか…えっそれだけ?アサッ」
あまりの浅さに率直にな感想が出てしまったが、 みんなが見ていると言う点が不気味さを際立たせてる。これに関してナギは覚えがある。
そのためか無意識的に一瞬、顔の筋肉が強張る。しかしそれを見逃す宮本くんではない。
「何?もしかして…心当たりでもある?」
眉を顰める宮本くん。
一瞬間が開く。脈が早くなっているのをひしひしと感じる。不気味な体験をした一員となると少し恐ろしさを感じられざるを得なかった。
しかし話し声が大きかったのか、先生が注意する。
「そこうるさいぞー」
その言葉がナギたちの会話を断ち切る。
ナギは少し安堵したのかホッとため息をつく。
昼休みのチャイムがなった。
キーンコーンカーンコーン
「おっす、昼飯一緒にいい?」
シオンがきた。
「いいよー」
ナギの意志を無視して、宮本くんが勝手に返事をした。
「ナギさー、今日珍しく起きてたよね。まあずっと外見てたけど」
ナギは勉強はあまりできる方ではない。
それ故かいつも寝ている。
「そうそう、なんか悩んでる感じもしかして…恋の悩み?」
「っな訳ねーだろ!」
宮本くんがナギを揶揄うのはいつものことだ。
「えーそうなの?まあ悩みがあるなら相談に乗るぞー。まあ話、聞くだけだけど」
ドス黒い魂胆が丸見えな言い方をする。
「…」
ナギは外方を向いて問いには答えず黙り込む。
その時3人組の女子が声をかけてきた。黒上のチビ、金髪に染めたモブ顔。
3人の中で一段階、顔がいい、茶髪のやつがリーダーとすぐに理解する。
「おい」
俺たちは思わず黙り込む。
そう、この3人組は学校でも素行が悪いことで有名だ。
「おい、そこの紫髪」
「わ、私!?」
「そうお前、放課後屋上にこい!話がある」
「え、あ、はい…」
シオンは圧に押されて、”はい”以外の返事ができなかった。
すると彼女らは去っていった。
「…大丈夫か?なんかした?」
「してねーよ、たぶん…」
昼休みの終わりを告げるチャイムと同時に会話もなくなる。
生物の授業で裏庭に植えてある橘を観察する。
正確には花粉を採取し、観察するのが目的だ。外は陽の光に照らされ、暖かさを肌で感じる。
暇つぶしに地面を見ていると、
3匹の蟻が仲間割れをしているのを見つけた。
「なに、見てんの?」
宮本くんが声をかけてきた。
「ん?ああ、蟻が芋虫の死骸をかけて争ってのを観察してるんだ」
「へー懐かしいな、蟻。よく潰して遊んだもんだ。こんな感じで」
宮本くんは蟻を踏みつけた。
蟻は中身をぶちまけたが小さい芋虫の死骸は靴裏の溝の部分にマッチしたためそのままだった。
「うわ、小学生かよ…」
「うん?虫潰すのって楽しいじゃん」
「そう…なのか?」
校舎の壁にナナフシがくっついているのが宮本の目に入った。
「うわナナフシだ」
「潰すなよ」
「え、何言ってんの?流石に潰さんよ、うん」
「え、あ、うん」
宮本くんの目は絶対零度のように冷たかった。
なんだか肌寒くなってきた。
そんな感じがしたのはきっとナギだけだろう。鹿のキーホルダーが落ちているが2人は気づかずその場を去る。
教室の窓から橙赤色の光がさす。
「そういや、シオン、屋上に呼び出されてたな…一緒に見に行くか?念の為」
「俺はやめとく、お前と違って暇じゃないんで」
バッサリと断られてしまった。
「いつもの家庭の事情ってやつ?なんなんだよそれ。何処ぞのゾ⚪︎ディック家かよ!」
「教えなーい。じゃあまた」
ナギのちょっとしたイジリに意を返さずヘラヘラと返事をする。
「おう…」
「あ、そうだ!何かあったら守ってあげろよ」
「あ、えあ…」
「強く生きろよ」
「じゃあねー」
意味不明な言葉をおいて、彼は去っていった。どこか懐かしさを感じたが気のせいだろう。
すぐに追いかけたが宮本くんの姿はなかった。
(強く…ね…)
カラスの鳴き声が静寂のなか響く。
彼はしばらくの間考え込んでいたことに気づく。
(なんか今日は考え込む日だな…らしくねぇ。早く屋上に行かないと…)
階段をなるべく音を立てずに駆け上がる。
そして屋上のドア窓から様子を見る。
何か話してる。
よく見るとシオンの頬が腫れている。
そして鮮やかな赤色の液体が鼻から流れている出ている。
俺は扉をゆっくり開ける。
(鉄扉のくせして、意外と軽い…)
ドアはキーーーと言う具合で高い音を立てる。
すると彼女らの注意がこちらに集中する。
「ッチ」
彼女らはその音だけを残して去る。
ギギーーーバタンとドアが閉じたことを確認してから声を出す。
「大丈夫か?」
「あ、当たり前だよ!」
鼻血を拭い、彼女は笑って見せたが、どこかぎこちなく、目が合わない。
「なんか言われた?」
「別に…」
その声の調子は哀しみと怒りを物語っている。 あえて深追いはしない。
少しの間沈黙が続く。いつもより重力の重みを感じながら、ただそこに立つ。
カラスの鳴く声がさっきより大きく響いているように思えた。
寒い。
空の色が青みがかっている。
「ごめん、すぐ行ってやれなくて」
慣れないことを言ったためか、少しぎこちない。
こんなことしか言えない自分が情けない。
「なんか、らしくないよ、今日」
「え?」
第一声が予想外だっため、核心を突かれたためか間抜けたこの一言しか出なかった。
「ナギのくせに考え込んだり、私なんかを心配して、なんか知らんけど勝手に自分のせいにして、いつも見たいにふーんって言っとけばいいのにさ…」
彼女が制服の袖を握る。俯いていて表情が見えないが、頬の辺りに光が当たって青っぽく輝く。宝石に劣らないくらい美しいなんて言う感想を持ったのはさて置き少し間が開いてから返答する。
「はあ、言っとくけど俺は以外と友達とか大切にする派の人間だかんな!」
冷たい人間と思われたままなのは癪に障るので訂正しておく。情には熱い方だと自身では思っているようだ。そのため勢いで物を言ってしまう癖があるので後悔する事も多々あったりなかったり。
「ナギのくせに生意気な!」
彼女の顔にいつもの明るさが戻る。
「お前がな!さっさと帰るぞ!」
残り少ない夕焼けをカラスの群れが覆う。
屋上の扉のドアノブが真冬のように冷たい。そしてしっかりと重たい。
扉を開けるとギギギと鈍い音を立てた。
特になんの変哲もない階段があるだけ…
そして中へ足を踏み入れる
瞬きをした一瞬、晴れていて、湿度が低いはずなのに湿っぽさを感じた。
次に足を地面ににつけ、扉がバタンと音を立てた時、日常が非日常に変わる。
そこはもう異郷の地___
「は!?」
俺たちはそれ以外の言葉を見つけることができなかった。
見渡すと誰も知らないであろう見た目の花が壁に生えている。
現実とは異なる空間だと認識するには十分すぎた。
おまけ②
エピソード2、見てくれてありがとー
そうえば登場人物の見た目のせてなかったので載せておきます!
下書きでごめん!
また色塗ったやつを多分載せます。
まあ、こんな奴らって言うイメージを掴んでいただけたら幸いです!
てな感じで、また!
あとよかったらフォローよろ!
コメント
2件

下書き…なんすかあれ… わしには到底できねー芸当だ…