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「…無限だろうが、時間は限られている。」
五条悟は無感情な声で呟いた。顔には冷徹な決意が宿り、その眼差しは不敵であり、同時に深い覚悟を孕んでいた。彼の背後で、鋼谷が必死に竈開から逃げようとし、炎の柱をいくつもかいくぐっていた。だが、そのどれもが鋼谷の異能を押し戻していた。
宿儺が冷笑を浮かべながら言う。
「お前の無限も、力尽きたな。」
五条は無言で視線を向け、手をかざす。無下限呪術が再び空間を切り裂き、宿儺の炎をいくらか押し戻す。しかし、その間に鋼谷はついに倒れ込んでしまった。
「くっ…!」
鋼谷の異能が尽きかけ、体力も限界を迎えている。五条の表情に一瞬の影が差す。彼は次の手を打つ時間を与えるために、鋼谷をかばう形で立ち尽くした。
「…もう、無理だな。」
五条は静かに呟いた。彼の目は完全に宿儺へと集中している。
宿儺がその言葉を聞いて笑みを深める。
「無理も何も、すでに死んでいるのだ。気づいていないのか?」
五条の体から、微かに血が滲み出る。それは彼が無下限呪術を使い続けることによる負荷が原因だった。彼の術式は、その膨大なエネルギーを消耗するため、時間の経過と共に確実に彼自身を蝕んでいった。
「お前が言う通りだ。俺はすでに…」
五条は静かに口を開け、今まで隠していた事実を吐露する。
「だが、俺にはまだやるべきことがある。」
宿儺はその言葉を無視して炎を激しく燃え上がらせ、五条を消し去ろうとする。しかし、五条はその場から動くことなく、次の瞬 間、爆発的な力が放たれる。
五条の体は爆風に包まれる。炎が彼を飲み込み、無下限呪術の力が完全に制御を失い、異能の力が暴走する。その爆発音と共に、鋼谷は目を見開いて立ち上がろうとする。
だが、その瞬間、五条は完全に姿を消した。爆風が収まった後に残ったのは、無傷の床と無意味に燃え続ける炎だけだった。五条悟の体は、まるで最初からいなかったかのように消え去っていた。
宿儺は一歩後退し、その光景を見守っていた。
「…そうか。お前の力は、まさかこんな形で使われることになるとはな。」
鋼谷はその場に膝をついて、息を切らしながらも立ち上がった。五条の死を見届けたことで、彼の中で何かが大きく変わる。
「……五条。」
鋼谷は静かにその名を呼ぶ。
「お前のためにも、俺はもう一度立ち上がる。」
彼の目には、復讐とともに、五条が遺した意志を継ぐ覚悟が宿っていた。鋼谷はその決意を胸に、宿儺へと向かっていく。
宿儺は五条の死に無関心を装いながらも、その心の奥では確かな警戒を抱いている。
「面倒なことになるな。」
彼の目の前に立ちふさがる鋼谷は、死んだ五条の影を背負って、次の戦いへと進んでいく。