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そ う じ ゃ な く て .
「なに、好きな人のことでも考えてんの?」
「え、え? いや、そんなんじゃないよ? ただ、仲良くしたい人がいて……」
「ほお?」
ニヤニヤする彼を見るに、信じてないっぽいな、と思う。
冗談は通用しないものか。
「まあ、俺も話しかけるの緊張したなぁ~」
「……誰とー?」
「ん?好きなやつ」
「……へえ。じゃあ、もう仲良いの?」
「まあ、そいつがどう思ってるかは別として、俺的には結構いい感じかな」
「ふうん。じゃあ、まだ付き合ってないんだ」
「うん、そーなんだよ」
ちょっとだけ、ほっとしてしまう。ちょっとだけ、期待してしまう。
そんな気持ちから、
「このクラス?」
なんて聞いた私が馬鹿だった。
「いや、隣のクラス」
「あぁ、そっか~」
可能性ゼロパーってこと。
私なわけないか、そりゃあ。
「頑張ってね」
「おう! お前も頑張れよ!」
「……うん、ありがとう」
そうじゃなくて、私が好きなのは君なんだよ。
貴方に好きな人がいるって分かった上で頑張れるわけないし、貴方のためにも頑張れないや。
複雑だなぁ、、。
笑って誤魔化していると、
彼は唐突に「あ」と目を輝かせた。
廊下を歩く、一人の可愛らしい女の子。
「噂をすれば、例の隣のクラスの女子」
ドキッとする。「そう、行ってくれば」と私が言うより先に、
「んじゃ、俺行くわ!」
と私の隣から腰を上げ、私に向いていた瞳はキラキラと光りながら女の子へ向く。
ほんの一瞬で、私の隣は空席になった。
肩をポンと叩いて笑いかける彼に、彼女は少し驚いた後、頬を赤らめて幸せそうに笑う。
両想いなんだな、とすぐに分かった。
そっか、そうだよね。
分かっているのに、心がなぜか追いつかない。
「……へへ」
口から零れ落ちた私の笑い声は、驚くほどに渇いていた。
……どうしてかな。
目頭が熱い。
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