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休ませてもらった後、がっつり仕事をした。生活のため、娘のためにほとんど毎日仕事に出ていってた。でも週に一回は必ず休まなくちゃいけなかったから、休んだものの、実際休んだ気はしなかった。
でも、休むことって大事なんだと、今になって実感している。この五年間、がむしゃらだった。
無理をしていたけれど、でもそうするしかなかったんだよね。
新しい場所でもあったけど、いつも通りのパフォーマンスをした。ここ数日分を取り戻せたと思う。正直しんどかったけども。
でも、あぁ、気持ちいい。
性を解放する場でもあるよね、この仕事は。
「すごいですね、さくらさん……チップも多くて。でも、今から休憩して、夜からの稼げる時間までしっかり回復してくださいね」
「ありがとう……」
今日捗ったのは……つづはらさんのことを考えながら。普段はかっこいい俳優さんやアイドルの男の子を想像して気持ちを上げていたけど、今日はつづはらさんが相手だと、私はやっぱりちょろいな。昔から惚れやすいから、少しでも優しくされたり親切にされると……綾人の時もそうだった。あぁ。
あれから彼には会ってないし、もちろん連絡先も知らないし……事務長は勝手に神奈川に帰っていたし。
あ、服を取りに行かないと。
ほんの少し親切にされただけで、こんなに彼のことを考えて燃え上がってしまうなんて、私は本当にちょろい。
私は両手で頬を挟み、パシッと叩いた。
「まずは休む、休む!」
そう言わないと休まないから、気をつけないと。
⸻
そして最終日。
「本当にお疲れ様でした。無理はなさらず、また戻ってきてくださることを期待しています」
社交辞令かもしれない、鵜呑みにしてはいけない、この業界では。でも、私は頑張ったからこそ、労いの言葉をもらえるのが本当に嬉しい。
そう、労いの気持ちが、綾人にはなかったんだ。
「こちらこそありがとうございました。サポートがあったからこそ、ここまで頑張れました」
「……早く娘さんの高校が決まるといいですね」
そうだった、高校からまだ連絡がないんだった。憂鬱になりながらも外を見ると、まだ小雨。ここ一週間ずっと雨が降っていた。ずっとその中で働いていたから、というか、雨を感じたくないからほぼ外に出なかったに等しい。頭は痛かったけど。
神奈川の事務長からもメールが来ていて、「すごいじゃん、またこっち戻ってきても稼いでね!」って。はぁ、結局はそこなんだよね。
私はキャリーケースを引きながら、事務長から送られてきたマップを頼りにあの店に向かった。まだ夕方だから準備中だろう。でも荷物だけ引き取って、さっさと電車に乗ろう。
傘をさしてキャリーケースにはビニールをかけたけど、それでも隙間から雨が垂れてきてしまう。まぁ、いいか。
……まだ明るいから、店はこんなふうになっていたんだ。提灯の灯りはまだついていない。裏に回ったほうがいいかな。表はやはり準備中のままだった。
裏に回ってみると、そこは薄暗かった。
そして、そこにいたのは……つづはらさん。軒下でタバコを吸っていた。吸ってたんだ。
「……あれ」