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第一章:沈黙の鐘
レオ(若き魔導士)「……あれが、噂の時計塔か。見た目より、ずっと古びてるな。」
ミラ(王国の諜報員)「時間が止まってる。あの針、100年前から動いていないって話よ。」
レオ「100年前……“黒の鐘鳴り事件”の直後だな。」
ミラ「あの夜、王都中の時計が狂った。ひとつだけ鳴った鐘の音で、すべてが変わった。」
レオ「そのとき、何が起きたのか。俺たちは今から、それを確かめに行く。」
ミラ「心の準備はできてる?」
レオ「とっくにできてる。さあ、入ろう。」
第二章:眠れる記憶
ミラ「……この空気、変ね。普通じゃない。」
レオ「時間が動いてない。生き物の気配がない。」
???(少年の声)「だれ……?」
レオ「今の、声か?」
ミラ「子どもの……どこから……?」
???(少年の声)「レオ……ミラ……」
レオ「なぜ俺たちの名前を……!?」
ミラ「聞いてるの?あなたは誰?」
???(少年の声)「ぼくは……時計塔に閉じ込められた……“記録”……」
レオ「記録……?お前は、人間じゃないのか?」
???(少年の声)「ぼくは、誰かの“記憶”……名前を思い出させて……」
第三章:謎の名
レオ「名前……それが鍵なんだな?」
ミラ「100年前に閉じ込められた記憶……それに“名前”を与えると?」
???(少年の声)「そうすれば……ぼくは、自由になる……」
レオ「ヒントをくれ。お前の名前の、手がかりを。」
???(少年の声)「鐘が鳴った夜、ぼくはこの塔の上にいた……それだけしか……」
ミラ「塔の記録を探すしかない。どこかに、この塔の最後の記録があるはず。」
第四章:狂った時間
レオ「これは……日誌?塔の管理人のものか……」
ミラ「“時守 ラウル・エレミア”……最後の記録に、こうある。」
ミラ(朗読)「『今夜、13回目の鐘が鳴る。誰もいないはずの鐘楼から、子どもの声がする』」
レオ「ラウル・エレミア……それが名前か?」
???(少年の声)「ちがう……その人は、ぼくを見た……でも、ぼくじゃない……」
ミラ「じゃあ、その子どもは、塔の記録に残っていない“存在”……?」
レオ「幽霊か、幻か……いや、“時間に喰われた”のか……?」
第五章:13番目の鐘
???(少年の声)「13回目の鐘が……鳴ると、また最初に戻る……」
ミラ「どういう意味?」
???(少年の声)「ぼくは、13番目の鐘が鳴るたびに……また、ここに戻る……」
レオ「ループしてるってことか。100年間、ずっと?」
???(少年の声)「うん……だけど、君たちは“違う”……はじめての人たち……」
ミラ「私たちが、ループを壊せる?」
???(少年の声)「君たちが、“真実”を知れば……」
レオ「そのためには、名前が必要なんだな?」
???(少年の声)「うん……最後の鐘が鳴る前に……」
第六章:名を持たぬ少年
レオ「記録の続きがあった……“ラウルは一人の孤児を保護していた”」
ミラ「“名前も記録もない少年”……それが、あなた?」
???(少年の声)「……ぼくには、名前がなかった。でも……ラウルはぼくを守ってくれた」
レオ「そのとき、何が起きた?」
???(少年の声)「ラウルは、鐘を鳴らしてはいけないと言った……だけど、ぼくが鳴らした……」
ミラ「なぜ?」
???(少年の声)「ただ……知りたかったんだ。時間の外って、どんな感じだろうって……」
レオ「そして、お前は“時間の外側”に落ちた……?」
???(少年の声)「うん……だから、ぼくの名前を見つけて……“今”に戻して……」
第七章:選ばれる名前
ミラ「記録の最後に、こう書いてある。“彼に名前を与えることは、神に抗うことだ”」
レオ「それでも、名前を与えなければ、彼は戻れない。」
???(少年の声)「名前を、与えて……」
ミラ「あなたの目は、ラウルに似てる……彼の息子として、生きてたのかも」
レオ「じゃあ……“エレミア”。それが、君の名前だ」
???(少年の声)「……エレミア……ぼくの……」
(ゴーン、と13回目の鐘が鳴る)
ミラ「レオ!空間が崩れ始めてる!」
レオ「しっかりしろ、エレミア!名前を忘れるな!」
エレミア「ありがとう……やっと、“ぼく”になれた……」
(光が満ち、時が動き出す)
最終章:時計は再び動き出す
ミラ「……終わった?」
レオ「時計の針が……動いてる。100年ぶりに、時が戻ったんだ。」
ミラ「あの子は……エレミアは?」
レオ「どこかで……今という時間の中を、生きているさ。」
ミラ「この塔、まだ秘密がありそうね。」
レオ「時間ってやつは、いつも何かを隠してる。」
ミラ「でも今日は、それをひとつ暴いたわね。」
レオ「次は、どの時間を暴こうか。」
ミラ「あなたって、本当に性懲りもないわね。」
レオ「それが、俺の性分だからな。」
――完――