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火宮 頼奈 あだ名:ラテ(抹茶ラテが好きだから)
萌村総合学院高等部2年の女の子
自称《平凡》
毒舌だが根は優しく、女ウケがいい
翔とは幼馴染だがイラスト今は少し壁ができている
汐田 翔
萌村総合学院に通う高等部2年の男の子
人気アイドルグループの〈ORTHO〉のメンバー
頼奈の幼馴染
序章
暖房が入っているのか、効きが悪いのかわからないけれど、古びたバスの中はとにかく寒かった。
小さく身を震わせて、私は雨によって曇った車窓から外を見つめる。
歩行者はおろか車も通らない田舎道を、バスはもう何時間と走り続けている。
色褪せてヒビが四方に入り捲れ上がったアスファルトの上を通るたび、車体は大きく上下する。
その揺れに合わせて、窓にもたれかかっている頭も軽く上下するので、外の景色は一点に定まることはなかった。
私は小さく息を吐き、車内に視線を戻す。
冷気がこびり付いたような車内の乗客はまばらだった。
前方に腕を組んで目を瞑っているスーツのおじさんと手押し車の持ち手を握りしめて足元を見つめているお婆さん。
真ん中あたりにイヤホンを付けてスマホをいじっている女子高生がいるだけ。
そして私“たち”は最後尾のベンチシートに並んで腰掛けていた。
隣をチラリと見る。
彼の顔は私と反対側の窓に向けられていて、表情を確かめることはできない。
バスが揺れるたび肩と肩がぶつかるけど、彼は無反応だった。
もしかしたら眠っているのかもしれない。
形のいい耳と、ボサボサの後ろ頭をじっと見る。
以前は隙なく切り揃えられていた襟足が、今は伸び放題になった髪に隠れて見えなくなっていた。
今の彼の気持ちを体現しているようで、見ていられない気持ちになる。
私は息を軽く吐いて、外に視線を戻した。
何処までも続く冬枯れの田んぼと、それを取り囲むようにそびえる薄く雪を被った山々。
ここがどこなのか、どんな地名なのか私たちは知らない。
ただ適当な駅で電車を降りて一番近くの停留所に一番早くきたバスに乗り込んだだけだ。
このバスに乗って約半日、雨が降り続けているため自分の感覚でしかない。
スマホを見る気にはなれなかった。
何故かは分からない。
もしかしたら見たくなかったのかもしれない。
見せたくなかったのかも知れない。
この強烈な私たちに容赦なく降り注ぐ光を。