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七話 畏怖されし森(2)
真っ暗な視界。
微かに鳥の鳴き声と、水音が聞こえる。
真理(目を開ける)
「……ん……っ!」
視界が晴れると、蔦で四肢を拘束され、木と木の間に吊るされていた。
真理
「ここは……あっ!」
隣を見ると、同じように吊るされているバルトと――なぜか逆さ吊りのリンが。
⸻
バルト(呻きながら)
「おお……真理…起きたか……」
リン(目を開け)
「……? えっ? わたし……あれ……なにこれ……?」
真理(苦笑しながら)
「どうやら捕まっちゃったみたい。魔法使いなのに“吊るし役”ね」
リン(逆さまのまま真理を見る)
「スカートが捲れる…ヤダ…」
バルト(首をかしげて)
「なんでリンだけ逆さなんだ?」
リン(顔を真っ赤にして)
「し、知らない!なんなの!?嫌がらせ!?」
頭に血が上ってきたリンは、無理に頭を上げようとするが……
リン
「ふんっ……うっ……あっ!!(腰を痛める)」
真理(冷静に)
「あーあ。言わんこっちゃない」
リン(涙目)
「わたし、どうすればよかったの!?」
⸻
そこへ、あの“森の男”が再び現れる。
森の男(静かに)
「よく寝たか……人間」
真理(やや皮肉気に)
「ええ、おかげさまで。おもてなし、ありがとう」
森の男(無反応)
「……お前たちは、“ヴェルデリア”に覚えられていない。だから、拘束した」
リン
「ヴェルデリア……?」
森の男(森を見上げるように)
「この地に宿る、“記憶する森”。それがヴェルデリアだ」
バルト
「俺みたいに強くて派手なやつでも覚えてねえのか?」
ロストロビン(断言するように)
「ヴェルデリアが覚えない者は、弱いか、目立たないか、あるいは──初めての侵入者だ」
真理(真剣な表情で)
「お願いです、私たちは旅を急いでいるんです。森を出させてもらえませんか?」
森の男(静かに首を横に振る)
「無理だ。この森は“記憶の迷宮”。出口を知っているのは、ヴェルデリアだけ」
バルト
「ならお前が案内してくれよ」
森の男
「できない。俺は……森から出ることができない」
一瞬、森の男の表情に「苦悩」が浮かぶ。
真理(ため息をつきつつ)
「じゃあ、どうすれば?」
森の男
「“試練”を受けろ。北西の森に棲む“ウッドパス”を討て」
リン
「ウッドパス……?」
森の男
「“αランク”をわずかに超える魔物。これを討てば、お前たちを森から解放しよう」
リン
「ええぇぇぇ……それってかなり強いよね……?」
森の男
「それでも来たのだろう、“体現者”として。選ばれし者として」
真理「そういえば、あなたの名前は?」
森の男が振り返り、静かに名を告げる。
ロストロビン
「……俺の名は、ロストロビン」
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