__《クバル村》__
「ほーらユキちゃん♪いないいないばぁ~」
時刻はお昼過ぎ、自分の娘のお昼寝の時間。
キールの妻、【エリコ】はお昼寝の時間になっても泣き止まない娘をあやしていた。
「もう、家事がまだあるのに、はぁ……あの人が居てくれれば助かるのにぃ」
そう言って何年も帰ってきてない夫の事を考える。
「でも、あの人の方が寂しいわよね……娘にさえ会えないんだから」
そんな境遇を可哀想と思ってか、エリコは村のみんなに慕われていた。
「そう言えば、昨日、隣のおばさんからウーリーシャークを貰ったけど……美味しかったなぁ」
ウーリーシャークはこの辺りの川に生息する魚類の魔物だ。
大人になると二メートルとでかくなり性格は凶暴だが、子供の頃は30㎝くらいで人も襲わなく、臆病であるため、食用に向いている。
「キールもウーリーシャークのお刺身好きだったなぁ」
夫の事を思うと胸が苦しくなってきた。
「だめだめ、私がしっかりしないと」
ぱんぱんっと自分のほっぺを叩いた後、娘を寝かしつけ外へ……向かった先は____
「こんにちは、神父さん♪」
「これはこれはエリコさん」
クバル村、教会だった。
「今日も神にお祈りですか?」
「はい♪」
「では此方へどうぞ、神はいつも私達を見てくれています」
神父は教会のお祈り部屋の扉を開ける。
その部屋はあまり広くなく、神様と思われる銅像の前に魔法陣があるだけだ。
「では、お祈りください」
エリコが入り、扉が閉められる。
「……」
魔法陣の上に乗って手を握り、祈りを捧げる__
__キールが安全で無事で有り続ける様に。
__ユキがすくすく育ちます様に。
「__私達家族が、幸せでありますように」
祈る……家族の安全を……
それに呼応する様に魔法陣は赤く光を放ち……
「フォッフォッフォッ、エリコ殿……どうですかな?」
「……」
神父は反応のないエリコの胸を揉むが、目は虚になっていて反応はない。
「ばっちり効いておられますな」
手を離して神父は通信をとった。
「サクラ女王、代表騎士キール様の妻、エリコの洗脳に成功しました」