???「おい、アカシック」
と誰かが呼びかけ、彼の方をポンポンと叩いた
この声は、誰もが聞き覚えのある声だった
後ろを振り返ると……
ビリーヴァが立っていた
彼はその場から仰け反り、警戒した目で見た
「何の用だ?そして、何故ここに居る?」
とアカシックは聞いた
そんな彼にビリーヴァは言った
「お前に礼を言いたい」
「…………は?」
まさかあのビリーヴァからそんな言葉が出るとは予想がつかなかったので、みんな口をあんぐり開けた
ビリーヴァが?あのビリーヴァが?
固まるアカシック達に彼は言った
「奴から僕を解放してくれてありがとう。危うく、奴に乗っ取られそう(人形にされそう)になっていたんだ」
困惑したアカシック達は場所を変えた
そしてステラがビリーヴァに聞いた
「今更何の話だ?」
「あー…………そうだな。そこから話さないといけないな。長いが、聞いてくれるか?」
彼らはまだビリーヴァの事を完全に信じていたわけでは無かったが、首を縦に振った
「アカシックがまだ5歳(現実世界だと推定で100歳)の話だ。お前は、その時体が弱かったんだ。そのせいで他の精霊の貴族の家系の者たちから『体が弱い精霊なんか使えない』と言う理由でお前を殺せと僕たちの家系に通達が来たんだ」
そこまで聞いたアカシックたちは一つの疑問を抱いた
それが事実だとしたら、一つ矛盾点がある
何故、アカシックは生きている?
何故、ここにいる?
そんなことを口にしたとき、ビリーヴァが答えた
「……アカシック。お前は一度、奴ら……いや、母さんたちに殺されているのさ」
その言葉を聞いて、皆がヒュッと息を飲んだ
今、ビリーヴァは何と言った?
彼が……アカシックが殺されているだって?
コレに1番驚愕したのは、紛れもなくアカシックだろう
「え……兄さん、どういうこと?」
「お前は覚えていないかもしれないが、殺されたのは本当さ」
その時、アカシックの頭の中に痛みが走った
「うっ……あっ……!!」
彼は、思い出していた
精霊の貴族たちが雇った者たちに
無惨に殺されたことを
いたい、いたい……たすけて……
なんで、こんな、ことをするの?
と映像の中の彼は微かに声をあげている
彼は逃げ出さないように手足を縛られ、両目とも殴られて失明させられていた
彼の体は果物ナイフが刺さったまま
そして雇われた殺人者たちにナイフを抜かれ
もう一度彼の小さな体に刺した
彼が動かなくなった後、殺人者たちは去った
アカシックは血まみれで倒れていた
「誰か……助けて……寒いよ……怖いよ……」
そこに籠を背負っている旅人がやってきた
やってきた旅人はアカシックをみてすぐに手当てをしようとしたが、もう助からないと思ったらしい
せめて身体を温めてやろうと、彼に籠にかけていた毛布をかけた
「すまない……この傷だと、手当てを施しても君の命を助けられない……だからせめて、この毛布に包まって温まってくれ」
すると、彼は何も感じなくなっているはずなのに旅人の方を見た
「寒かった……ありがとう……」
そう言い残して彼は息絶えた
その時ビリーヴァはハッと目を覚まし、辺りを見回した
……アカシックはどこだ?
彼は自分の寝床を飛び出し、外へ駆けていった
「アカシック!!どこだ!?どこにいるんだ!?」
とまずは精霊の森を探した
だがどこを探しても精霊の森にはいなかった
彼は別の森に向かっていった
ビリーヴァはアカシックを殺すと言う内容の通達が来たことを知っていた
「くそっ……アカシック、無事でいてくれ!」
しかし、彼の願いは叶わなかった
ビリーヴァは森の奥の茂みの中で既に息絶えて冷たくなっている彼を見つけてしまった
彼は愛する弟の遺体をみて絶叫した
「アカシック……なのか!?!?うわあああああああああ!!!!目を開けてくれ!!!!死なないでくれー!!!!僕を置いて行かないでくれーーー!!!!!!!!」
と血を吐くような絶叫が夜明けの森に響き渡った
すると
ヒュン!!
ナイフがビリーヴァに飛んできた
振り返ってナイフの位置を確認して避けようとしたが、避けきれずに目に突き刺さった
「うああああああ!!!!!!!!」
ビリーヴァは痛みで叫んだ
痛い……………痛い……!!!!
焼け付くような激痛が彼を襲った
???「……外したか。首の頸動脈を狙ったんだが………運のいいガキだ」
ビリーヴァ「誰だ!?!?」
???「黙れ。レコード家の落ちこぼれ共」
落ちこぼれ共?
誰に言ってるんだ?
僕か?
いや、だとしたら「共」は付かないはずだ。
もしかして
アカシックも含めてか?
…………許さない
大切な弟を侮辱しやがって
僕だけなら良いが、弟のことをそう言うふうに言うのは……許さない
ビリーヴァは???に殴りかかった
???「私に触るな、邪悪な悪魔が」
ナイフでもう片方の目も潰された
「ぐあああああああ!!!!!!!!」
と彼は大絶叫をあげた
???はその隙を見逃さなかった
彼にとどめを刺そうとした
だが
ビリーヴァの方が早かった
痛みに耐えながら???を崖から突き落とした
???「うわああああああ!!!!」
グシャッ
奴の頭が潰れる音が聞こえた
でも、弟を殺した奴のことなんか知らない
「ハア……………ハア……………」
と彼はアカシックの遺体を抱え、家に帰ろうとした
しかし、もう彼にそんな力は残されていなかった
そして道端に倒れ込んでしまった
(僕は……ここで…………死ぬのか。嗚呼……アカシック、すまない。お前を、助けて、やれなかった…………神様……何故、こう言う時に奇跡を起こしてくださらないのですか?僕は死んでも良いので、どうか……どうかアカシックを、助けてください…………)
???2「その願い、叶えてやろう」
(誰か……きてくれた…………)
「お前も、お前の弟の命も助けてあげよう。ただし、条件がある」
ビリーヴァ「条…………件?」
???2「ああ、そうだ。条件を飲んでくれさえすればお前の命を助け、お前の弟も生き返らせてやる。条件は、私の『人形』になる事と、お前の記憶を私に差し出す事だ」
「人形……だと?」
「さて、この条件を飲むか?」
(お前が助かるなら……僕はどうなったって構わない……アカシック……すまない)
彼は???2に言った
「条件を飲む」
「そう言ってくれると思っていたよ」
とアカシックとビリーヴァの身体に触れた
みるみる身体中の傷が治っていく
そして、彼は目を開けた
「……あれ?兄さん?もう朝なの?」
「…………」
ビリーヴァは答えずに???2と去っていった
彼はその後、精霊の貴族たちを探し出し
皆殺しにした
ビリーヴァは笑い声をあげながら次々と手にかけていく
叫び声や命乞いをする者たちの悲痛な声が響くが、彼はその声を完全に無視して無差別な殺戮を繰り返した
勿論、その中には兄弟たちや両親も含まれていた
「ビリーヴァ……やめるんだ!!」
と家族たちは冷や水を浴びせるように静止の声をかけたが
「……黙れ」
そう言いつつ、両親の胸を深く切り裂いた
血が大量に吹き出した
「ギャアっ……!!!!」
「命乞いをするなら、アカシックにするんだな」
「ごめんね……アカシック……ビリーヴァ……」
と両親は息絶えた
「……さて、次はお前たちだ。何故、実の兄弟であるアカシックを見殺しにした?何故、見向きもせず、嫌がらせができたんだ?答えてもらおうか、マロニー、ラッキー、セドリック?」
とナイフの切先を向けながら言った
ラッキーはこうほざいた
「お、お兄ちゃん……私たち何もしてないよ?」
ビリーヴァは黙ったまま、ラッキーの口をナイフで切り裂いた
「ぎゃあっっ!!!!!!!!」
「嘘は言わなくて良い。アカシックをいじめていただろ?体が弱いのに、無理やり外に連れて行って走らせたり、体調が悪い時に無理やり食事を食べさせていたりしただろ?お見通しなんだよ。アカシックはあんなに嫌がっていたのに、苦しんでいたのに……血も涙もないお前たちに何も悪くないアカシックは謝っていたのに……どうしてそんな真似ができたんだ!?!?」
「ち、違うよ……」
そう言いかけたラッキーの口に毒薬を捻じ込ませ、一緒に水を無理やり飲ませた
数十秒後
彼女は震え始め、口から大量の血と共に内臓を吐き出して息絶えた
「お前たちもだ、マロニー、セドリック」
「………………」
彼らは震えて、何も答えられなかった
ビリーヴァは呆れたように長く溜息をついた
「お前たちに聞いた僕が馬鹿だった」
そして2人まとめてナイフで首を串刺しにした
2人はビリーヴァに怯えた目を向けながら倒れて、息絶えた
まさに地獄絵図だった
記憶のないアカシックとリリックは、震えながらその死体たちを見つめていた
2人はビリーヴァを見て言った
「兄さん!!酷いよ!!みんな兄さんに何かしたの!?あんまりだよ!!!!この人殺し!!人殺しーーー!!!!!!」
リリックたち2人に罵倒されたが、ビリーヴァは無表情でアカシックたちを見て去っていった
コレで………いい……
幸せに暮らしてくれるなら……それで良い………
と呟きながら
僕は……
僕は、弟の為ならヒーローにだって、悪者にだって何でもなってやるさ
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