テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「伊藤くん、上履きのかかとは踏んじゃダメなんだよ」
クラスの委員長は相変わらずうるさい。
「はいはい、わかったって」
それくらいいいじゃん。
かかとを踏んだって誰にも迷惑をかけるわけじゃないし。
「かかとを踏んでると、噛まれるよ」
急に変なことを言うから、俺はふき出してしまう。
「ぷっ! なにに噛まれるんだよ!」
意味不明だな。けれど、委員長は真剣な表情で首を横に振った。
「せっかく上履きが足を守ってくれているのに、わざわざかかとを出したら危ないよ」
委員長って時々変なことを言うんだよな。
「それっていつも委員長が読んでる都市伝説の本の話?」
「うん、ほら、ここに描いてあるでしょ。ロウカワニに噛まれると大変だよ」
廊下からワニが飛び出してきている絵が描いてあった。
「そんなのありえないって!」
笑う俺に、委員長は心配そうに眉を下げた。
*
昼休み、それは突然起こった。
廊下を歩いていると、床がぐにゃりと柔らかく歪んだのだ。
「え、なんだ⁉︎」
足もとはまるで沼のようになっている。
カチッカチッ。妙な音がして振り返る。そこには歯を鳴らしている深緑色のワニがいた。
「ひっ!」
そして、俺のかかとにワニの歯がぷつりと突き刺さる。
「いったぁ!」
咄嗟に「かかとを隠さないと!」と思い、足を持ち上げて上履きを履き直す。すると、ワニは恨めしそうに目を細めて床に沈んでいく。
な、なんだったんだよ。今の!
廊下は元に戻り、足を引きずりながら教室に戻る。そこで上履きと靴下を脱ぐと、痛むのになぜか血はでていない。けれど、明らかにいつもと違う。
「か、かかとがシワシワになってる?」
ガラガラと教室のドアが開かれる。そこには委員長が立っていた。
「どうしたの?」
「噛まれたんだ! 本当にいたんだ! ロウカワニ!」
委員長はふうっと息を吐いて、俺のかかとを見ると眉を寄せた。
「だから言ったのに。噛まれると、そこだけ一気に老化しちゃうんだよ」
「え?」
「目をつけられると次も狙ってくるみたいだから、伊藤くんの寿命がどんどん食べられちゃうかも」
ふと廊下を見ると、そこには金色の目をしたワニがいた。そして、床の中からこちらを見つめている。
「も、もうかかとは踏まない! 絶対に踏まないから!」
ワニに向かって叫ぶ。上履きさえ脱がなきゃいいはずだ。
けれど、ワニはにやりとギザギザの歯を見せて笑った。
『早く帰りの時間にならないかなぁ』
コメント
1件
この「ロウカワニ」、めっちゃ好きだわ。委員長の「かかと踏むな」が実はホラーだったって伏線の張り方、良いよね。踏まないと噛まれるって言われて笑ってた主人公が、実際に廊下でワニに襲われるシーンは想像以上に不気味で。かかとだけ老化するっていう描写も、理屈はよくわかんないけど妙に説得力があってゾッとする。最後にワニがニヤリ笑って「早く帰りの時間にならないかなぁ」ってのがまたね…これから帰り道もずっと狙われてそうで、続きがすごく気になる。