首だけで180°ぐにゃりとこちらを向き、ニヤリと不気味に笑ったロノらしきモノは奇声を上げてこちらへ飛び付いてきた。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前 …祓いたまへ 清めたまへ !!!」
『ァァァァァァァア!!!!??』
「ぐっ…クソ、こンなとコデ余計な力使っちャッた……」
焦りのせいで普段なら気付ける違いにも気付けなかった。ホント、最っ悪だ。ロノと同じ見た目、声質…多分、こいつはドッペルゲンガーだ。ドッペルゲンガーは本人と会うと死ぬ、というもので周囲への害はないはずなのだが、この空間のせいで凶暴化しているのだろう。
「チィ……ロノが無事ナらイいんだケド」
「主様、大丈夫ですかっ!?」
「だァジョうぶ。ソれよリ急グぞ」
「なんか体ダルいし最悪っす〜!!!」
「瘴気のせイダろゥなァ。今ノ状態は浄化能力ガ低下すルから余計ニダ」
ロノの安否が心配なので、急いでベリアンが言っていた厨房へ向かう。そろそろ結界を貼って休ませないと瘴気よる影響が命に関わりかねない。この中で1番瘴気に当てられているナックがそろそろやばい。力を結構消費することになるが、こうなったらそんな事を言ってられない。
「ベリあン、ぁモン!!ロノとバすティンと合流デきたラ結界ヲ貼る!ソの中デ待ってイロ!」
「わかりました、ですが主様は大丈夫なんですか!?」
「大丈夫ダ!気にスンな!」
途中で何匹か現れた雑魚を祓いながら厨房へ向かう。食堂につき、机をいちいち避けて通る暇は無いので机にのりあがって走る。
「ロノ!!ばスティん!!無事か!!!」
「主様!?無事でよかった!!」
「その姿は…?」
「何があったんですか!?」
「ロノくん、バスティンくん、ユーハンくん!無事で良かったです!」
ロノ、バスティンの2人の他にユーハンがいた。もう1つ気配があると感じ取っていたので誰かいると思っていたが、それがユーハンで良かった。この世界の法則だか知らないが、同じ国の者が集まると霊に対する耐性が高まるのだ。恐らく、霊を認知出来ない、反抗できない代わりに与えられたのだろう。低級が多いのもあるだろうが、この法則のおかげで霊から護られているのだろう。
「説明八後でスル、聞いテくれ。こノ空間が怪異化してィる。本来ならココに残るノハ得策じゃナい、が、そロソろナックがヤバい。アモンも具合が悪くなっテきてイル。だカラ、こコに結界ヲ貼る。その中で待ッてイてくレ。結界がアルから怪異は寄ってコナィが、念の為前鬼と後鬼を置ぃていク。万が一がアッてモ大丈夫だ」
「ナックさんが……わかった。だが、気を付けてくれ…」
「結界……なら、大丈夫ですね。神社にも結界が貼ってあり、そのお陰で神社は悪しきものを跳ね除けてくれると聞いたことがあります」
「料理作ってる途中だったんで、早く帰って美味いもん食いましょ!」
「ァア。楽しミだ」
未だ眠っているナックをベリアンに託し、結界を貼る。これで大丈夫だ。白虎にばかり仕事させる訳にも行かないし、自分も動かなければ。それにしても、流石に霊力使い過ぎたな……アイツに人格引っ張られそう
アイツを抑え込みながら、気配の近い所へ向かう。模擬戦してたし、フェネス、ボスキ、ハウレス、テディの4人は外で固まってるっぽい。後は…地下かな。ミヤジとフルーレ、ラトの三人の気配がする。後はハナマルとルカス、ラムリだけど…くそ、やっぱり気配を探しにくい。あちこちに怪異の気配するしこの空間で元々探しにくいし、ほんっと最悪!
「あっ、主様!!無事だったんですね!良かった…!」
「ソれはコっちのセリふ。こノ姿に関シテは後で説明すルかラ付ィてコい。離レタ方がイいが、あンま離れ過ぎンナヨ」
「色々言いてぇことはあるが…まぁわかった。ついてくぜ」
「はいっ!ハウレスさん、大丈夫ですか?」
「ああ…少し頭が痛いだけだ、さっきより和らいだから大丈夫だ」
「………そゥだナ。てディの傍二いレばある程度軽減サれルだロウな。光ガ強いヵラ」
「光?」
私がいる光とは、生命力とかオーラとかそういう感じのもんだ。テディはその光が強い為、怪異や霊に対する耐性が高く、浄化出来る。だが、生命力が高いと怪異も集まりやすい。怪異から見ればご馳走に見えるからだ。それに、テディは光が強いが、内に抱え込んでる闇もある。そこに付け込まれる可能性もあるから、注意が必要だ。
気配を辿ると、どうやら白虎は地下に向かっている様だ。ならミヤジ達は任せて、私はルカス達と合流しよう
「……ア?動いテル?」
「なんか凄いドタドタ聞こえますね…っまさか何かあったのでは?!」
何かデカイ気配に追いかけられてる…?したらマズイ、アイツらは怪異に対する耐性を持っていない!
(窓から入ればすぐ会える、けどフェネス達を置いていく訳にも行かない……!)
チィッ、と舌打ちをする。力を使いたくは無いが、フェネス達を守る為には仕方がない。そう考えた私は式神をもう1人召喚する為に指でかたちを作る
「急急如律令 白狐」
《お呼びですか、主様!》
「ふェネス達を守レ。後で撫でテやル」
《ふふ、承知致しました。のう、貴様ら。主様のご命令で護る事となった。余りそこを動かぬことだな》
「あ?」
「凄い、ミヤジ先生見たいです!」
白狐は私の事が気に入っており、呼び出された事が嬉しいらしく尻尾をパタパタと横に揺らしている。だが、フェネス達に目を向けた途端尻尾は止まり、高圧的な態度になる。まじそう言うところだぞ。ボスキはそんな態度が気に入らない、といった様子であ?と低い声を出す。
そんなやり取りを見ている暇は無いので私はすぐ駆け出す。身体能力が上がっている為、スピードは結構早い。思い切り地面を蹴り、壁にある突起物を手で握り、足を窓に引っ掛ける。そのまま2階の窓から中に入り、ルカス達を探す。ルカス達は3階で怪異から逃げているが、逃げた方向から察するに階段を降りて2階へ行くっぽい。そして私は先回りをして合流しようということだ。
「っ主様!?ちょ、逃げて!!!こいつ攻撃あんま効かねぇ!!主様の姿にもツッコミたいけど取り敢えず逃げて!!!!」
「元気ダなァはナマル。コいツハ私に任セろ」
「ええ!?大丈夫なんですか主様!」
「こんな現象初めてです。ちょっと好奇心が湧いてきました」
「お前ハ余裕ダナ…オイ、そコのォ前。八尺様じャネぇかァ………ラムリはともヵく、ショたコンの癖二真逆ノルかス達を追イヵけ回しテンじゃねェよ、ババア」
《ポポポポッポポ》
「昔のカービィノ名前呼ンでんジャねぇヨ」
《ポポポポポポポポ》
「ウるセェナぁ…食ウ気失せタから祓ッてャるよ」
「 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前 」
《ポポポポポポポポポポポポポポポポポポ》
「祓いたまへ 清めたまへ」
《ポポポポポ!!!!!》
「“八尺様は死んだ”」
《ポ_______》
「……え?消えた…?」
「あんなデッカイ女倒しちゃうとか主様凄いです!!」
「どういう原理でしょう…?」
「言霊ダよ。そレヨり、皆と合流スルぞ」
【読まなくてもいい設定】
主人公は人間の中で最も神に近く、最も神から遠いとされる。→強力な式神等を従えたり、霊力がかなり高い為神に近い。だが、アイツが中にいる為、神聖な物とは掛け離れてしまった。
身体能力が高くなり、回復能力も高い。ジャンプでギリ2階に届く。腕の1、2本程度なら半日か、遅くて1日で治る。
“白虎”(びゃっこ)
その名の通り白い虎。姿は基本獣で、必要とあれば人型にもなれる。獣の姿は大きく、人が3~4人程度乗れる。人型の見た目は短髪の大男。イケメン
主人(主人公)事を気に入っており、撫でられるのが好き。だが滅多にデレない。
読み方が白狐と同じなので、偶に間違えて出てきちゃう
“白狐”(びゃっこ)
その名の通り白い狐。基本人間の姿。尻尾が九つあるが、普段は邪魔な為1本にしてある。戦闘とかになると九尾に戻る。長髪のつり目で、和服を着ている。
主人(主人公)の事を凄く気に入っており、撫でられたりするのが好き。めっちゃデレるし他の式神に構うと嫉妬する。
読み方が白虎と同じなので、偶に間違えて出てきちゃう。白虎と分かってても自分が割り込むことがある。
“前鬼 後鬼”(ぜんき ごき)
その名通り鬼。そこまで大きくなく、3分の1位のサイズ。鋭い牙で怪異を食べる。
主人(主人公)の事を気に入っており、主人から貰うお菓子が好き。
ちょっとゴブリンっぽい感じの見た目な為、初対面だと怖がられる。その度シュンとする
コメント
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初コメとフォロー失礼させてもらいます! お話も設定もすんごい凝ってて、情景の書き方とか全てに惚れました(( 続きをのんびり待ってます!
一応ホラーなのに隠しきれないコメディー感が面白い笑 いきなりの大食いピンクの話出てきて声出して笑ったw