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にゃーにゃ
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次の日、佐久間くんが何となく元気がない。
見た感じはいつも通りだけど、何だか違和感。
心配だけど何て切り出したらいいか分からなくて、収録の間ずっと様子を見守ってた。
カメラが止まってる間、何度も漏れるため息。
やっぱりいつもと違う。
収録終わり、思い切って声をかけた。
佐久間くん、今日はこれで終わりだって言ってた。俺もこの後の仕事はない。
「佐久間くん、久し振りにご飯食べに行かない? 行きたい店あるんだ」
「どうしようかな…」
「ね、行こ。きっと佐久間くんも好きな感じのお店だと思うんだ」
なるべく重くならないように誘う。
じっと俺の顔を見上げていた佐久間くんが、ふっと笑顔になった。
「うん、行く。連れてって」
行ったお店はフレンチ。とは言っても敷居の高い感じじゃなくて、家庭料理に近い感じのメニューが揃ってる。個室もあるし、ゆっくりするにはちょうどいい。
「雰囲気良いお店だな。メニューも美味しそう」
「でしょ。佐久間くんこういうの好きだろうなって思って」
「…ありがとな、蓮。俺が元気ないの気付いてて誘ってくれただろ」
「うん…。けど、まずはご飯食べよう。お腹空いてると余計に気分が落ちちゃうから」
「ふはっ、そうだな」
俺の言葉に同意して笑ってくれたことにほっとする。
それぞれ気になるメニューを注文して、シェアしたりもしながら食事を楽しんだ。
俺と佐久間くん、意外と食の好みが似てるんだよね。
「うまかったなー。連れて来てくれてありがとな、蓮」
「ううん。一緒に来られて良かった」
「…聞かないのか? 何で元気なかったのか」
「俺からは聞かない。佐久間くんが話してもいいって思うなら、聞きたい」
聞かなくても大体分かるよ。あの人絡みなんでしょ。
悲しげに目を伏せながら佐久間くんが口を開く。
「…ずっと微妙な距離だった人と、正式に付き合うことになったんだって。嬉しそうに報告してくれた」
「そっか…」
「何か俺、いつもそうなんだよなー。一番好きな人は、俺のことを好きになってくれない。そういう運命なのかも」
そう自嘲気味に笑って話す佐久間くん。どんな慰めも、きっと今の佐久間くんには届かない気がする。
ふと真顔になって呟いた言葉に、それが当たってると確信した。
「…だから、そういう自分が、嫌いなんだ」
『俺じゃ駄目?』なんて、言ったところで何の意味もない。
だって佐久間くんの一番は俺じゃない。俺に好きだっていくら言われたって意味はない。
俺も同じだよ、佐久間くん。
こんなに好きなのに。佐久間くんは俺なんて見てくれない。
「…俺も似たようなものかも」
「蓮も?」
「好きな人がいるんだって。俺なんて、全然振り向いてもらえない」
「もったいないことしてるな、その人。蓮はこんなに優しくてかっこいいのにさ」
そんなこと言ってくれるの?
それでも、絶対に振り向いてなんてくれないくせに。
「…でもさ、人の気持ちはどうにもならないから」
「そうだな。…幸せそうに笑われると、それを壊しちゃう気がして自分の気持ちも言えない」
そう言って佐久間くんは悲しそうに微笑んだ。
自分よりも、相手の幸せを尊重したいって思うとこ。
そういうところが好きなんだ。
「諦めるの?」
「…すぐには気持ちは消せないから、多分、好きなままだと思う。けど…伝えることはしない」
「それでいいの…?」
「迷惑になるくらいなら、伝えない方がマシ。困らせたくないからさ」
少し声を震わせながら、そう言い切る佐久間くん。
その笑顔はとても綺麗で、恋をしてる佐久間くんはやっぱり可愛い。
その表情全部が世界で一番大嫌いで…大好きだ。
「こんなこと聞かせてごめんな。お前優しいから、ついつい言っちゃった」
「ううん。話してくれて嬉しい」
佐久間くんが抱えてる気持ちごと全部、俺だったら受け止めるのに。あの人を好きなままでも、それでも俺なら佐久間くんを愛せるのに。
そう伝えたところで、あなたは頷いたりしないだろうけど。