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後日あの海岸で見た船の所有主を純に聞くと彼女はこう答えた
「ああ、あの船の持ち主は日本を代表する資産家『伊藤ホールディングス』の初代会長、『伊藤定正』さんだよ、私達が逆立ちしたってお近づきになれない雲の上の人」
「伊藤・・・定正・・・」
間違いない、百合はその男の女になっている
その日から鈴子は伊藤定正の名前を呪文のように唱えるようになった
・:.。.・:.。.
【五年後】
神戸の港町を秋風がクリスタルタワーのガラスの壁を軽く吹き抜けていく、38階建てのこのタワービルは、神戸港の青い海と六甲山の緑を映し、まるで空と海を繋ぐ鏡のようだ
このタワービルに君臨するのは、日本一の冷凍食品企業、『伊藤ホールディングス株式会社』年間総売上2.2兆円、従業員4万人を誇る巨人企業、kここは世界の食卓に日本の味を届ける使命を掲げ、今日もその鼓動を刻んでいる
鈴子は大学卒業後、本社の食品開発営業部へ入社して2年、虎視眈々とここのトップである会長の「伊藤定正」に近づく機会を狙っていた
しかし定正は企業のトップだけに世界中を飛び回り、実際この本社で彼の姿を見たのはこの二年で二度ほどしかなく、鈴子が百合に復讐するために定正に近づく計画は頓挫したかの様に思えていた
入社して得た情報では百合は北新地のホステスからここの会長の正妻にまんまと収まっていたと言う事だけだった、当然百合も全くこの本社には顔を出さなかった
このままどうすれば復讐できるか、自分の出来る事はここまでなのか、日々鬱々と考えている時に吉報が来た
長年会長の補佐をしていた熟年の女性秘書がガンを患って退職するというのだ
「新しい秘書を募集するはずよ!」
「きっと募集要項には「英語・中国語堪能」「機密保持の責任感」「柔軟な対応力」がいるわ!」
「あの会長の秘書ですもの!みんな狙ってるわよ!」
「私は大学で国際ビジネスを学び、留学経験もあるわ!」
「面接を受けなきや!」
「いつ募集がかかるかしら」
「私も!」
「私も!」
本社ビルの女性社員は会長の新しい秘書に誰がなるのか、いつ募集するのか噂で持ちきりだった、類に漏れず鈴子も情報を集めまくっていた
そして鈴子の出した結論は
「募集を待ってなんかいられないわ!こっちから出向いてやる!」
敵の懐に入る!今の鈴子はそれしか考えられなかった