桃井愛莉視点
一歌ちゃんが話し終えると、屋上は沈黙が続いていた。
愛莉「…そう、だったのね…」
沈黙を破るかのように、私は言った。
一歌「ごめんなさい。桃井先輩は関係ないのに…」
愛莉「そんなことないわよ!」
一歌ちゃんは、謝罪を全力で反対している私を見ると、かすかに笑ってくれた。
愛莉「…えっ!もうこんな時間⁉」
ふと、時計を見ると9:37。
一歌「あっ…私、授業の最後の方は出席しなきゃ駄目なんです!桃井先輩、話を聞いてくれてありがとうございました!」
早口で言う一歌ちゃんは、少し辛そうだった。
一歌「では!」
一歌ちゃんは校舎の中へと走っていく。
愛莉「…一歌ちゃん!」
気づいたときには、もういなかった。だが、私のすることは出来た。スマホを取り出し、今の会話が録音していることを確認した。
愛莉「…これで、少しでも救われると良いんだけど…」
私は、一歌ちゃんの味方。宮女の中で私を含めないで朝比奈さんだけ。
愛莉「絶対に、救ってあげるから。もうちょっとだけ、頑張って。一歌ちゃん」
絶対に救う。そう、心に誓った。
星乃一歌視点
一歌「……」
あれから授業に戻って5分休みに入ったけど…何でみんなこっちを見てるの?
モブ「ねぇ、星乃さぁん?」
体の気温が下がっていくのを感じた。怖い。そう思っていたのかも知れない
一歌「…………」
何も言えない私に、モブさんの冷たい声が降り注ぐ
モブ「…星乃さん、聞いてる?」
一歌「あっ、えっ…あ…はい…」
やっと言葉を話せた。ただ、震えているのが分かる。小さい頃のように。
モブ「昼休み、屋上に来てくれない?」
一歌「…え?」
大体の予想はできる。「分かった」その一言を発すればいいだけの話なのに、言えない。
一歌「あ、えっと…昼休みは…」
なんとか誤魔化そうとする。
モブ「い〜よね?」
笑顔だが笑顔じゃない。教室は張り詰めた空気のまんま。
一歌「分かり、ました…」
本当に、どうしてだろう。私の思っていることの反対を言ってしまう。
そして、昼休み。穂波は、鳳さんと一緒に昼ご飯を食べている。
廊下に出て、屋上へ行こうとするとやけに楽しそうな明るい声が聞こえた。咲希だ。多分、志歩も一緒だろう。
一歌「…最初っから嫌ってたんなら、
みんなと一緒にいたく無かった」
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