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28 - 第二十八話「鏡の中の俺を、壊すために」

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2025年07月25日

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――現実世界。


静かな部屋。

ないこは、ギターを抱えたまま、鏡の前に立っていた。


ないこ(心の声):「ヒビ……広がってる。何かが……出てこようとしてる」


カタカタ、と鏡の中の景色が微かに震えた。

だがその震えに合わせて、ないこの胸の奥でも何かが疼いていた。


ないこ:(……わかってる。“あいつ”が、いる)


声は、まだ出ない。

でも――音はある。


ないこはギターの弦を、指でそっとなぞる。


ポロン――。


その音に、鏡が共鳴するように光を放った。


ないこ(心の声):(……俺の音が、届いてる?)



――鏡の裏側。


闇ないこは、冬心と累の前に立ったまま、静かに目を閉じていた。


闇ないこ:「……来るな。オレの場所に、アイツが来るな……!」


累:「来ちゃうよ。“君”が呼んだから」


冬心:「そろそろ、決着の時だ」


鏡が、砕ける。


現実と深層が、つながる――

光と影が、交差する瞬間。


次の瞬間、ないこと闇ないこが、“鏡越し”に対峙した。


ないこ:(……あれが、“俺”)


闇ないこ:「……来んなよ。お前が来るたびに、オレは……オレは消えていくんだよ!」


ないこは、ギターを手に、一歩前へ出る。


ないこ:(……俺は、お前を消しに来たんじゃない。お前ごと、生きるために来た)


鏡のヒビが、音を立ててさらに走った。


闇ないこ:「ふざけんなよ……! いまさら、取り戻せるわけないだろ!」


ないこは、そっとギターの弦を鳴らす。


それは、たどたどしくも確かに、“ないこ”自身の音だった。


ないこ(心の声):(……これが、俺の“声”)


闇ないこ:「やめろ……その音、オレの中に残ってる……

     思い出すんだよ、“信じようとした気持ち”を……!」


闇ないこが、頭を抱えて膝をつく。


ないこ:(お前は、俺だ。どこまでも俺だ。

    だから、もう――)


ないこは、拳をゆっくりと鏡に添える。


ないこ:(――壊してやるよ、“境界”なんて)


その瞬間――


バァンッ!!


鏡が砕け、粉々になったガラスの中から、

“もう一人のないこ”、つまり闇ないこが、現実世界へと“出てきた”。


重なるふたつの影。


ないこ:(……ようやく、ちゃんと向き合える)


闇ないこ:「ふざけんなよ……! “お前”に、何がわかる……!」


ないこ:(わからねぇよ。だから、歌ってきた。ずっと、俺は)


ふたりの“ないこ”が、真正面から睨み合う。


今度は、逃げない。


今度は、自分自身を拒絶しない。


鏡はもう、ない。


次回――ついに、“ないこ”と“闇ないこ”の共鳴が始まる。




次回:「第二十九話:この声が届くまで、俺は歌う」


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