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登場人物• アムバッタ
黄金の血統を誇る、超エリートのお坊ちゃん。全知全能のバラモンの師匠の弟子で、自尊心はエベレスト級。
• ゴータマ(ブッダ)
森の聖者。元は王族だが、すべてを捨てて悟った伝説の人物。アムバッタが最も軽蔑するクシャトリヤ族の出身。
序章:エリートの視界不良
「あのゴータマという名の森の行者が、本当に偉大な聖者か? そんなのは、この完璧な私が見てやれば一瞬でわかることだ!」
馬車に揺られながら、アムバッタは鼻で笑った。彼の血には「バラモン(最強の知識階級)」としての絶対的なプライドが流れていた。この世の真理は、すべて彼らの聖典に書かれている。
彼の師匠ポッカラーサーティの命令で、アムバッタはゴータマのいる森へ向かった。彼の目的は、真理を知ることではなく、ゴータマを試して、自らの血統の優位性を確認することだった。
第一章:クシャトリヤの沈黙とアムバッタの激怒
ゴータマの生まれ故郷である釈迦族の村に入ったとき、アムバッタは信じられない体験をした。
彼はバラモンのエリートとして、集会所に堂々と座った。しかし、釈迦族の人々は誰も彼に挨拶しない。立ち上がって敬意を払おうともしない。まるで、彼がそこに存在しないかのように扱ったのだ。
「なんだ、この態度は! 私というの存在に対し、まるで道端の石ころを扱うかのような蔑視! 」
怒りで顔を真っ赤にしたアムバッタは、ゴータマの前にたどり着くと、その不満を爆発させた。
第二章:血統というメッキの剥がれ
ゴータマはアムバッタの罵倒を、静かな湖面のように受け止めた。そして、まるでガラスの靴を分析するかのように、アムバッタの「血統」というプライドの根っこを論理的に調べ始めた。
「君の言うバラモンが、古代の王族(クシャトリヤ)の子孫から始まったのを知っているかね?」
ゴータマは、バラモンの起源を語り始めた。かつては王族だった者が、修行の道に入り、それが尊敬され、バラモンという階級になったという歴史的な事実。
「つまり、君が誇るその『清浄な血』の源流は、君が卑しいと罵った王族の血なのではないか? 君の誇りは、借りてきたメッキに過ぎない」
さらにゴータマは畳みかけた。世間を見渡せば、バラモンが汚職で地位を失うことはあっても、王族(クシャトリヤ)の地位は簡単には揺るがない。
「世間のルールでさえ、王族の方が評価される場合が多い。それなのに、自分の努力でもない『生まれ』だけで、人を偉いと判断するのは、知識の傲慢ではないか?」
ゴータマの言葉は、まるで強力なレーザーのように、アムバッタの驕慢という鎧を一点一点焼き切り、彼の心はグラグラと揺らぎ始めた。
終章:真の最強(チート)と平等の光
「真に最強で、人として最高の完成者とは、血や生まれで決まるのではない」
ゴータマは最後に、最高の真理の基準を宣言した。
「それは、『明知と実践を具備する者』、つまり【知識】と【行動】を完全に手に入れた者だけだ」
• 明知: 真実を見抜くチート級の知識(世界はこう動いているという真理)。
• 実践: その知識に従って、常に正しい行いを徹底する行動力。
「この最高の境地に至る道は、誰の血統にも依らない。貧しい農民であろうと、王であろうと、努力と心構えさえあれば、誰もが最強の完成者になれるのだ」
アムバッタは、自分の全存在が、この普遍的で平等な光の中に晒されたのを感じた。彼の血統のプライドは、泡のように消え失せた。彼が今まで信じてきた「価値」は、あまりにも脆く、狭いものだった。
「私の慢心は、なんと愚かだったのか…!」
アムバッタは、知識を超えた真実の優しさと論理の力に打ちのめされ、すぐさまゴータマの足元にひれ伏し、弟子入りを志願した。
血統の呪縛は解かれ、アムバッタの人生は、ここから知識を実践に変える新たな旅路を歩み始めたのだった。