城下町、お忍びで来たちょっとした散歩
深く被ったフードの隙間から国の様子を眺める
「いやぁ〜発展したねぇ〜、俺嬉し泣きしちゃう!」
「ちょ、はるてぃー声でかいバレるって」
よく通る溌剌とした声をたしなめつつ周りの目に気をつける
それでも小さな集落が、数年でよくここまで成長したと
はるてぃーほどではないが俺も少し感動した
商店街を歩き回る
あちらこちらから住民の明るい客引きと笑い声が絶えず聞こえてきた
最初は視察らしく業務的な話もしていたが次第に俺達も楽しくなってきて
気がつけば街を満喫してしまっていた
「お、裏路地」
「ホントだ」
自分の国だからこそ、汚いところもわかっていないといけない
法を犯していればその場で即捕縛だってできる
二人顔をあわせて、一際暗い路地に飛び込んだ
街とは打って変わって陰湿で湿気た道
狭苦しく所々にゴミが落ちている
よくわからない香水の香りやそこいらにいる物乞い
俺達が未熟ゆえの失態とも言える街の姿
その奥に、一つ
不思議な装飾店
店は薄暗く看板は傾いているが、何処か不思議なロマンを感じた
思いの外こういうのが好きなはるてぃーはずんずんと店に入っていく
粗雑に並べられてるかと思ったが案外丁寧に置かれた宝石
「…なんだい総統サマがこんなオンボロ屋になにか用かい?」
少し北の訛りが入った特徴的な喋り口調の老人
手に持った煙管からは独特な香りの煙が立ち上っていた
老眼鏡をかけ、片手に新聞を持っており、深い紫のローブさえ被ってなければよくいる老人という姿
「ッッ…!」
まさかバレるとは思ってなかった
この短時間で俺達の正体を明かしただけではなく値踏みまで終えた老人に目を剥く
「大丈夫だよ、バラしたりなんてしないさ浮世には興味がないんだ」
しゃがれた酒焼け声でそう言われると、何処か説得力があり
不思議と荒れていた心が落ち着いた
フードをおろし物色していく
大小さまざまな宝石があり、注文によれば加工もしてくれるようだ
「お、これいいな」
そう言ってはるてぃーがさしたのは意外にも深い青色が美しいサファイア
「そいつぁ11月13日に仕入れたサファイア、石言葉は誠実‥総統サマが身につけるにゃ十分な代物さ」
ちらりと一瞥しそれだけを言う老人
「へぇ…気に入った、いくらだ?」
「いらないよ」
吐き捨てるように言われた言葉に耳を疑う
「だからいらないと言ったんだ。その石はあんたを受け入れた」
それだけで十分、と老人は老眼鏡をかけ直し再び新聞を読み始める
どこまでも不思議な店だ
はる「うたは?どれにする?」
うた「俺は…」
丁寧にはめ込まれた大粒の宝石を覗き込む
世界がきれいな水色に染め上げられた
俺が選んだのはブルージルコン
あいつの瞳と似た色
もしかしたら、これを通せばあいつと同じ世界が見えるんじゃないかって
あいつの重責も、一緒に抱えられるんじゃないかって
「?何やってんだ?」
そう俺の顔を覗き込むはるてぃーの顔は、何処かやつれている
沢山のものをすぐに抱え込んで、あまつさえそれを見せてくれさえしない
そんな馬鹿なこいつに小さな讃美歌を
「世の友われらを捨て去る時も、祈りに応えて慰められる…アーメン」
ぶっきらぼうに言い放てば
意味を理解したはるてぃーが笑う
「ありがとな!」
ブルージルコン「安らぎ」
世の友われらを捨て去る時も、祈りに応えて慰められる。アーメン「聖歌『いつくしみ深き』より一部抜粋」
BL要素どこ行った…?
コメント
4件
宝石ありがとうございます!BLじゃなくても神なのなんなんですかッ!(褒めてる) ♡1000失礼します!
え 、BL 要素 無くても 大好き なんですけど 。 なんで そんなに 上手い んですか (( 見れて幸せです