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汚い汚い私の声。
夏は私の声を聞いてどう思うのだろうか。
嫌いになったかな。
それとも…。
そんな馬鹿な期待を胸に抱きつつ、
夏を見ると、振り返って私の目を見つめて
〔綺麗な声だね〕
と遠くで手話している夏が居た。
途端、私の頬に涙が伝う感覚がした。
そんな私を見て驚いたのか、
夏は慌てて私の所へ駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
喋り慣れてないようなカタコトの日本語で
そう私に問いかけた。
そんな優しい夏の声に安心したのか、
私は気づいたら本音を漏らしていた。
〔夏の耳が聞こえるようになったら、手話なんてする意味が無くなるでしょ?〕
〔それが嫌だった〕
そう伝えると
〔僕と声で話すのが嫌だったってこと?〕
〔違う〕
〔夏に私の声を聞かれるのが嫌だった〕
ぼろぼろと大粒の涙が頬を伝うのが
自分でも分かる。
「嫌いなの…自分の声が大嫌いだから…」
「僕は未鳥の声、好きだよ?」
そう夏は声に出しながら
人差し指と親指をつまむようにした動きと
同時に喉元から下に下げた。
手話で『好き』を表す動き。
あぁ、なんでこんなにも夏は優しいのだろうか。