テラーノベル
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第32話
それから、何分か金属音が止まなかった。何箇所も怪我した。でも、ちゃんと、相手にも攻撃が当てられた。
この人は、雷も落とす。剣の先が振れないように気をつけた。この人の魔力は凄い。僕の何倍あるのだろう?
僕が隙をついて剣を振るったように見せて腕を蹴ると相手は倒れた。
この人は強い。五分五分だった。
その瞬間、騎士たちの歓声に包まれた。
は? 何があったんだ?
「ふっ。僕を倒すなんてね。しかも、最近十五年ぶりに歩いたとは思えない。昔、一回組手をした事があるんだが、腕が落ちてるように見えたな。でも、強さは健在だ」
「もっと頑張らないといけないんです。失われた時を求めてさまようように、生きるしか無いかもしれない。命が尽きるかもしれない。だけど、強くならなければいけないのは絶対」
「そこだよ。弱さは。お互い精進しないとな」
そう言ってその人は自分で怪我を治癒した。
魔力があるっていいな。
「当時、僕は君の事を嫌っていた。だけど、見直したよ。魔力の無い、出来損ないの無口で剣術だけの騎士では無いってね。僕はここまでにしておくよ」
……見直した? 今ので?
「頑張れよ。お前に僕が家族と一緒に暮らせるかかかってるんだ」
「言われなくても頑張りますので心配無用です」
「ふっ。そうなら良かった」
そう言ってその人はその場を立ち去った。
僕がポケッとしてると周りの人たちが僕の背中を叩いた。
「よくやったな。あいつは今まで、この国で一番だったんだぞ」
「そうだ、それも二本やってから……本当に化け物みたいなやつは存在するんだな」
「はっはっはっ。面白いな。立ってられるなんてとんでもないな」
僕はそういう人たちに囲まれて少し、身動きが取れなかった。
人付き合いは苦手なんです!
その間、そう叫びたかった。
僕はベッドの上に寝っ転がった。ホルム王がいないというのは護れなかったから。僕はアニカを護るのが使命だけど、見殺しにしたような気分が離れない。
それは、フリオを残したシルビオさんだって、あの二人の子供を残したマルコだって、家族が健在のまま残したロザンナ。全員に言える事。
逝ってしまったのだから、僕は残された遺志を継いで、成すべきことを目指して歩む。
それは、時間との戦い。僕だって、アニカだって、ソフィーだっていつまでいれるか分からない。
だから、人間って分からない。
僕の答え。
僕は息絶える事が必ずある。人は産まれるのと、旅立つのに挟まれている。
だから、今、頑張らないといけない。
僕はため息をついてから眠りについた。
一週間とちょっと、ここで鍛錬した。起きて丁度一ヶ月。かなり戻った気がするけど、まだまだだ。
僕には時間が残されてない。だから、早く、強く、負けないように……
『そこだよ。弱さは』
『肩の力を抜け。そしたら色々と見えるぞ』
『前会った時からもっと責めるようになっている』
三人から言われた言葉が頭を過ぎる。
今は、違う……休んでなんかいられない。
こんな、何も出来ないような剣だけしか振れない悪感に休んでいいような権利は無い。使命を果たせなかったのだから……
「ロルフ。張り詰めすぎ。そんなだったら、護れるものも護れなくなっちゃう」
「そうだ。俺たちの遺志だ。お前はそこで姫様を護れ」
「やり過ぎ。限度というものが無いのか? 全くお前ってやつは……」
「すまない。娘を、護れなかった俺に言える言葉では無いが、助けてくれ……父としてお願いだ……」
そんな四人の声が聞こえた気がした。
僕は剣を振る手を止めて目を凝らした。だけど、もちろんいるはずもなかった。だけど、彼らはそう思ってるのは変わらないだろう。
……大丈夫。少しくらい無理したって世界が救われるなら頑張る。だから、お願い。僕を、僕を、みっともない人では無くしてほしい……
この剣は護るために、傷つけないように扱わないといけない。だから、意識も変わらないといけない。
僕は、ポーチの中に必要な物を詰めて、出る準備をした。
「頑張りすぎるなよ。騎士団長としての絶対の言いつけだぞ」
「はいはい。分かってますって。それに、帰ってきますよ。引っ越すかもしれませんがその時はよろしくお願いします」
「それなら良かった。これからは他の街に行くんだな。ルミナもセルフもちゃんとある。そこは安心しろ。姫様の事を任せたぞ」
「はい。では行ってきます」
「あぁ」
騎士団長とそんな会話を交わしてから王城近くを離れた。
コメント
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こはるさん、第33話読みました! 強敵との一戦、五分五分で勝ったのに「見直した」って言われて戸惑う主人公がなんか人間味あって好きです。周りに「化け物」「立ってられるなんて」って言われてポカンとしてる姿も可愛かったですね。 その後ベッドで「護れなかった」と自分を責める内省のシーン、そこから幻聴のように四人の声が聞こえて「張り詰めすぎ」と諭される流れが沁みました。無理してでも使命を果たそうとする覚悟がひしひしと伝わってきて、胸がぎゅっとなりました。 騎士団長とのやり取りも、厳しさの中に温かさがあって好きです。続きが気になります!
りう。
39
#感動
こはる
917
上野文
6,439
#探偵
橘靖竜
5,392