なくした記憶

めめは本当に俺の情報だけを失っていた。

入院中自分たちの映像を見て、俺がメンバーの1人である事、『阿部ちゃん』と呼ばれている事、普段の立ち居振る舞いなどを頭に叩き込んだらしい。

収録などではその場に9人グループとして揃う事ができていたが、ファンは目敏い。

『めめあべ最近なんか距離あるね』

『めめが阿部ちゃんの方を全然見なくなった』

『阿部ちゃん元気ない』

なんてネットに書かれ始めた。

俺とめめのペアが好きな人は少しの違和感も見逃さないようだ。

💜「人間色々あるだろくらいに思っといてくれたらなぁ」

💚「でも、元気ないって思わせてるのは良くないな。意識して前向かないと」

💜「まぁ、それはそうだけど」

ふっかはずっと俺のケアをしてくれている。

この生活も、はや1ヶ月。

めめは経過観察も終え、通院の必要もなくなったらしい。

俺がわからない事だけが残ったが頭のことだし、そのうち戻るかもと軽く片付けられ、あまり問題にされなかった。

💜「今日、照と一緒にめめに会ってくるから」

💚「うん」

代わりにと言っちゃ何だけど、康二が帰国してるから来てくれるって、と言うが早いかインターホンが鳴った。

🧡「来たでー！」

💚「康二…」

🧡「阿部ちゃんしんどいよな、うまいもん食べよ。何がいい？」

康二は食べたくないという俺に次々選択肢を与え、結局少しだけ食べるのでも許されるからと寿司屋に決めて連れ出してくれた。

💚「ありがとね、康二」

🧡「なにが？俺もちょうど日本の寿司食べたかってん」

明るい康二に少し救われる思いだった。