「なあなあ、ラウールってさ…俺らといる時、あんま焦らないよね…。」
楽屋のソファでスマホをいじりながら、深澤がポツリと呟いた。その言葉に、周りにいたメンバーたちが「確かに」「達観してるよな、あいつ」と頷く。
「…末っ子の癖に…。」
渡辺が、少し悔しそうに付け加えた。その一言が、お兄ちゃんたちの悪戯心に火をつけた。
「「「…やっちゃう…?」」」
誰からともなく声が上がり、ニヤリと悪魔のような笑みが交わされる。
ターゲットは、最強の末っ子、ラウール。
ドッキリの内容は、「ラウール以外のメンバーが、急に『大人だけの秘密の話』を始め、ラウールを仲間外れにする」という、彼のメンタルを揺さぶる作戦だ。
***
ニセの打ち合わせが終わり、楽屋で待機している時のことだった。
今まで普通に談笑していたのに、急に、岩本と阿部が真剣な顔で話し始めた。
「いや、だから、来年からの新NISAの枠をどう使うべきか、っていうのが問題で…。」
「僕は成長投資枠でインデックスファンドを考えてるけど、照の考えも聞きたいな。」
「…え?」
その、全く聞き馴染みのない単語の羅列に、近くで話を聞いていたラウールがキョトンとする。
すると今度は、向井と目黒が話し始めた。
「こないだ行った接待ゴルフ、スコア最悪やったわ〜。」
「めめは上手いからええやん。俺なんて、部長に気ぃ使いすぎて全然やったで。」
「ゴルフ…?接待…?」
ラウールの頭の上には、どんどん「?」が浮かんでいく。
「翔太、この間のパーティーで飲んだワイン、どこのか覚えてる?」
「あー、あれ?確かブルゴーニュの…82年のやつだろ?涼太が好きそうな味だったよな。」
宮舘と渡辺が、優雅にワイングラスを傾ける仕草(エア)をしながら、大人びた会話を繰り広げる。
楽屋のあちこちで、急に始まった「大人の会話」。
いつもなら「ラウール!」と構ってくれるお兄ちゃんたちが、今日は誰も自分の方を見てくれない。
「ねえ、何の話してるのー?」
ラウールが、一番優しそうな佐久間に声をかける。
すると、佐久間は人差し指を口に当てて、「しーっ」と悪戯っぽく笑った。
「これはね、大人だけの、秘密のお話なの。」
その言葉は、ラウールの心に、思った以上に深く突き刺さった。
(大人の話…?僕だけ、子ども…?)
楽しそうに話しているお兄ちゃんたちの輪に、自分だけが入れない。
どんどん口数が少なくなり、俯いて自分のスニーカーの先をいじり始めるラウール。その大きな瞳が、不安げに揺れている。
(やべ、やりすぎたか…?)
メンバー全員が、内心焦り始めた、その時だった。
ラウールが、震える声で、ぽつりと呟いた。
「…僕、もう、みんなの可愛い弟じゃ、いられないの…?」
目に涙をいっぱい溜めて、寂しそうにそう言うラウールの姿。
その、あまりのピュアさと可愛さに、お兄ちゃんたちの悪戯心は、一瞬で砕け散った。
「「「ごめんんんんんん!!!!!」」」
誰が言うでもなく、全員がラウールに駆け寄り、わしゃわしゃと頭を撫で回す。
「ドッキリ大成功〜!っていうか、ごめん!マジでごめん!」
「ラウールは、俺たちの一生可愛い末っ子だから!」
「大人になんてならなくていい!」
わらわらと群がってくるお兄ちゃんたちに、ラウールは最初、何が起こったか分からず目をパチクリさせていたが、やがてドッキリだと理解すると、
「ひどいよぉー!」
と、泣き笑いの表情で叫んだ。
「マジで、俺だけ仲間外れにされたかと思ったじゃんか!」
ぷんぷん怒りながらも、その顔はどこか嬉しそう。
結局、どんなに大人びて見えても、ラウールはみんなに愛されている、可愛い可愛い末っ子。
そして、そんな末っ子を、お兄ちゃんたちは、泣かせたいくらい、大好きなのでした。
コメント
6件
えー!ラウ可愛い!(私は深澤担ですよ、)
らうちゃん~きゃわたん💖次は誰かな??

らうは一生かわいい弟だよーー!!! マジこんなかわいい作品書けるなんて主は神ですか?!