テラーノベル
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騎士たちとひと悶着あった後、朝食を部屋でとる。もっと不味いものを予想していたが、前線基地で食べるものとは思えないくらい美味かった。
綺麗に食事を平らげた頃に、アンドリューが迎えにやってきた。
「王子、そろそろお時間です」
「あぁ、わかった。朝食が美味かったよ」
「それは良かったです。今朝本国より物資が輸送されてきましたので」
「悪いね、兵たちの分なのに」
「いえいえ、王子が来ることを見越して送られてきた物資ですので、お気になさらず」
「じゃあ行こうか」
「はい、代表者と騎士以外は会場に連れていけませんので、奥様はこちらでお待ち下さい」
「行ってくる」
「頑張って」
ママ上と分かれた後、俺はアンドリューに連れられて、ヨハンナと共に各国の王子たちが集まっている会議室へと向かう。
扉の前に立つと、アンドリューが俺に振り返る。
「王子よ、これはわたくしからの助言ではございますが、この会議で国同士の仲が悪くなり、開戦の機運が高まることがあります。発言にはご注意下さい。前にイヤミル様が会議を行われた時、ギデオン国とは戦争寸前まで行きましたので」
「怖いこと言うなよ……。出席国の中で、リガルド嫌いな国ってどこなの?」
「恐らく全ての国が我が国を敵視しています」
終わってる。さすが世界の嫌われ者である。
「王子は初めての場となりますので、他国の代表者がどのような思惑を持っているかメモされるのがいいかと思います」
「なるほど」
相手と自国の利害を考えながら、誰と意見合わせると良いか読み合いを行うのか。
やっぱ俺にはハードル高いって。
アンドリューがぶ厚い扉を押し開けると、中から刺すような緊張感が漏れ出してきた。
俺が一歩足を踏み入れると、部屋の中では既に他の王子と王女たちが揃っており、一斉に視線がこちらに向けられる。その目はどれも怪訝で、敵意とまでは言わずとも、好意的なものは一つとして含まれていなかった。
4人の王子と王女は円卓に座っており、右周りにチンピラみたいな短髪の黒尽くめの少年、金髪ロングの制服みたいな格好の少女、紫髪のドレスの少女、全身フルプレートメイルで顔すら兜で隠している男。
様々な顔ぶれを見ながら俺は巨大な円卓の中央席に座り、ヨハンナは俺の真横に立つ。全員揃ったことで各国の代表者の視線が交差する。
びっくりするほど空気が悪い中、アンドリューが前に出る。
「私はリガルド帝国拠点防衛部隊長アンドリュー。この城塞都市の責任者でもあります。まずは、このブロックスへ集まっていただいたことに、心より感謝いたします」
彼の声は低く響き、広間の隅々まで届いた。
「皆様も知っての通り、この地は常に魔獣の脅威と隣り合わせにあります。魔獣防衛壁から這い出る怪物どもは日々我々の城塞を試し、兵を食い、民を脅かしています。ここにいる代表者たちは、それぞれの国を背負い、同じ問題に直面しているはずでしょう」
アンドリューは拳を軽く握りしめると、演説するように続けた。
「共に自国の利害関係を越えた解決策を模索していきましょう。今回はリガルド帝国よりラウル・グランツ第三王子が会議に初出席致します。初対面の方も多いはずです。まずは互いを知ることから始めましょう。順に自己紹介を願います。では王子」
アンドリューはチラリと俺を見やる。
あっ、俺からなのね。俺は椅子から立ち上がって、目付きの悪い王子たちを見やる。
「どうも、リガルド帝国第三王子ラウル・グランツです。身長163センチ、体重82キロです。好きなものはドーナッツです。よろしくお願いします」
そう短く言うと、チンピラみたいな少年が声を上げる。
「第二王子の次は第三王子か、とことんリガルドはダークラインをなめてると見えるな」
「情報も何も落とさないと、それも作戦か」
金髪ロングの女性が深読みしているが、全くそんな意図はない。ただ単純に自己紹介しろと言われたので、自分のプロフを紹介しただけである。
短い挨拶を終えて席に座り直すと、次に椅子の脚を軽く鳴らしながら、黒尽くめのチンピラ少年がゆっくりと立ち上がった。
彼は細身ながらも鍛えられた体で、鉄と革で補強されたコートのような衣をまとい、肩には歯車の意匠が施された紋章が輝いている。腰には分厚い機械仕掛けの銃剣を提げ、鍛え上げられた腕を組んで、堂々とした態度で場を見回した。
「ギデオン国王子、ジャガー・バンビーノだ。鉄と歯車の国の名に恥じぬよう、この場にはしっかりとした解決策を持ち帰るつもりだ」
彼の声は低く、まるで鉄を打ち鳴らすかのような響きを持っていた。
「オレたちギデオンは、長年にわたって魔獣への対抗手段を研究し続けてきた。銃も砲も、装甲騎士も、すべては奴らを粉々にするためにある。エンペラーマンモスすら裸足で逃げ出すギデオンの機械部隊だ。技術力ならリガルド帝国にすら遅れはとらねぇ」
彼は片手を机に置き、毅然と言う。
「オレはお喋りが得意じゃねぇが、一つだけ言っておく。ギデオンのトラ達は、戦う準備はできている」
「ではなぜ戦わないのか?」
隣の席に座る金髪ロングの少女に聞かれ、ジャガーは机をドンと叩く。
「ここにはオレ達が勝った後に、美味い汁だけ吸おうとするハイエナみたいな奴がたくさんいる。オレ達が戦うことができねぇのは、テメェらがオレらの背中を狙ってるからだ。ハトが飛ぶ平和にしてほしいなら、即時拠点を放棄しろ」
俺はふむふむとギデオン代表ジャガーの特徴をメモする。
(ギデオン王子、ジャガーバンビちゃんと。戦力あり、戦う意思あり、戦闘を開始したら背中が怖いと……。魔獣よりも俺達他国のことを気にしてる感じだな。あと多分動物が好きと)
ついでに動物のジャガーのイラストも描いて、吹き出しに『後ろから撃つな!』と書く。
発言を終えると、ジャガーは堂々と椅子に腰を下ろし、次の発言者に目を向けた。
続いて席を立ったのは、一際気品に満ちた姿の女性だった。
金色の長い髪にこぶりな顔、睫毛が長く深い青の瞳。年齢は俺より2つか3つ上くらいだと思うが、大人びていて20代にも見える。白地に黒のラインが入った学生のブレザーのような騎士服に、赤の短いスカートから白いおみ足と黒のニーソックスが見える。
彼女からはプライドとカリスマがにじみ出ており、金糸のように美しい髪は微かに揺れ、切れ長の瞳がまっすぐに円卓の面々を射抜く。
彼女は堂々と背筋を伸ばし、ゆっくりと口を開いた。
「トリスタン魔法騎士国王女、ソニア・ブランネージュだ。まずは、この場に集まった各国の方々に、僅かながら敬意を表しましょう」
その声は滑らかでありながら、どこか上から見下ろすような響きを持つ。
「我が国トリスタンは、剣と魔法を極めし歴史ある騎士の国。武を磨く者、知を高める者、そのすべてが美しき王国を支える礎となる。そしてその頂点に立つのが、最高の美である私──ブランネージュ家の名を冠する者」
スカートの裾を払うようにしながら一歩踏み出し、ゆっくりと視線を円卓の面々へ巡らせる。
「我がトリスタンの騎士は、魔獣との戦いを怖れない。むしろ、戦場こそが彼らの舞台であり、魔獣を討つことこそが、その力の証明。剣を振るうだけの蛮勇でもなければ、力任せの魔法でもない。洗練された剣技と、緻密に計算された魔法の融合こそが、真の戦術」
彼女のその目には揺るぎない自信と、王族としての威厳が宿っていた。
「そのわりには、お前の国が前線に出てるとこ見たことねぇけどな」
ジャガーがちゃちゃを入れると、ソニアは金色の細眉を吊り上げる。
「無策で魔獣に突っ込むだけでは勝利はつかめない。戦場とは、ただ武器を振り回す場所ではなく、知恵と技術が交差する場。田舎の歯車工場の国にはそれが理解できないのだろう」
「んだと、古いだけしか取り柄のない国がよぉ!」
「衛兵、この美しくない男をつまみ出せ」
「お二方とも静粛に願います!」
喧嘩しかかったジャガーを止めるアンドリュー。
「我が国の精鋭魔法騎士隊ヴィーナススターがいかにして戦うか、そなた達はいずれ知ることになるだろう」
最後に、ソニアは優雅に一礼すると席についた。
俺は再びメモをとる。
(ふむふむ、ソニア王女は少しお硬い貴族思考、プライドの高いお姫様っぽい。美しいものが好き。戦いに関しては消極的に見えるかな、魔法騎士部隊だし前衛戦力に自信がないのかも。ヴィーナススターって部隊は気になる。あとジャガーと仲が悪い)
俺はソニアちゃんの顔を描いて、吹き出しに『誰か前衛に出ろ』と書く。
コメント
1件
読み終わりました!ありんすさんしか描けない独特な会議シーンですね。各国の王子王女たちが登場して個性豊かなのに一目瞭然で、もうこれだけで今後のドロドロした展開が楽しみになってきましたね〜〜!特にラウル王子が内心でちゃんとメモってるところとか可愛くて好きです。「ジャガーバンビちゃんてwww それぞれの国の思惑とか距離感がちらっとだけ見えたのがまた気になる!次回もすごく楽しみにしてますね♪
🍎🥧アップルパイ
53
#ブルーロック
🍎🥧アップルパイ
59
#もしかしたらグロいかも
海月
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