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「つっむぎさーん♡ 何か、手伝えることありませんか?」
「今のところ無いかな、ありがとう。ゆず君」
「いえいえ」
上機嫌で、ゆず君が俺の方にやってきて、何か手伝えることはないかと尋ねる。今のところ何もないし、逆にゆず君に何かをやらせた方が危ないのではないかと思ってしまい、俺は断りを入れる。
ゆず君はそうですか、と軽く返し、俺の顔を覗いた。
「な、何?」
「凄く、エプロン姿に合ってるなあ、と思って」
「そう……かな、ありがとう」
晩ご飯を食べ終え、食器を洗っている姿を観察するゆず君。その視線が痒くて、ちょっと離れていて欲しいなって思った。だって、こんなもの見せるものじゃないし、面白くもないだろうと。
エプロンは、ゆず君の家にあったものを拝借しただけ。まあ、ゆず君にエプロンあるかと聞いて、ありますよ、とかして貰ったものなのだけど、ちょっと女性ものっぽかったから、もしかしたら、ゆず君のお母さんのものなのかも知れないとも、思った。そんなものを借りて良かったのかという気にもなったが、服に汚れが飛ぶのもあれだし、あとから洗って返そうと、使わせて貰ってるだけだが……
「ちょ、ちょっと離れてくれるかな?」
「何でですか。もっとくっついていたいです」
「えーでも、泡とか飛ぶよ?」
「なんか、紡さん、もの凄く人妻っぽいです」
「ひ、人妻っぽいって何!?」
いきなり飛び出したパワーワードに、思わず皿を落としかけてしまう。ギリギリの所でキャッチし、一旦洗い物を中断する。キュッと蛇口を捻れば、泡が排水溝にたまって渦を作る。
ゆず君は左手の人差し指を口元に当て、第二関節らへんを噛みながら、俺をじっと見つめる。
「前から思ってたんですけど、紡さんって人妻っぽいんですよね」
「だから、何で!?」
「髪の長さというか、それもえっちポイントですし、少し垂れ目なところとか、あと、尻がデカいところとか」
「意味分かんないよ!」
この会話の終着点が、見えなくて、俺は思わず声を上げてしまった。
食事には断じて何も変なものを入れていないはずだ、断じて。
「裸エプロンとか、一回見てみたいです」
「いや、しないからね!?」
俺が顔を真っ赤にして言えば、背後からスルッとすり寄ってきたゆず君は、慣れた手つきで、俺の服の中に手を忍ばせてくる。
脇腹を撫でられて、ビクッと身体を揺らせば、ゆず君が耳元に唇を寄せてきた。
「紡さん、このままやっちゃいません?」
「ひぁっ、ちょっと、ゆず君、悪ふざけは……」
「巫山戯て何てないですよ。『俺』は人妻の紡さんとヤってみたい」
カプりと耳を噛まれてしまえば、もう、俺の身体は言うことを聞かなくなってしまう。
抵抗しようにも、手に力が入らなくなってしまい、ただ、ゆず君にされるがままになってしまう。
「んっ、ゆず君」
「紡さん『俺』と演ろ?」
完全にスイッチの入ったゆず君を、俺は止めること出来なかった。否、俺も期待していたから。
緩く首を持ち上げて、俺はゆず君の方を向いた。すると、ゆず君は目を細めて、嬉しそうな表情を見せた。
「紡さんの顔えっちぃ。僕のこと欲しいって顔してる。嬉しいなぁ」
チュッ、チュッと首にキスの雨を降らせる。
絶対に、口にはキスをしないって、俺とゆず君の暗黙の了解があるから、絶対にしない。だけど、他の所にはキスをするし、あとだって残す。いつからそうなったかなんて、覚えていない。
「着衣えっちって萌えるんですよねえ。着ているからこそのエロさ? っていうんですか。紡さんはそっちも似合うかも」
「へ、変態」
「今更ですね」
確かに、そうだ。俺はゆず君に散々抱かれているんだから、もう充分すぎるくらい。でも、この何処ではいるか分からない演技スイッチを、この変態疑似プレイを止めることは出来なかった。
「紡さん、僕は、紡さんの浮気相手。そういう役って思って下さい」
「そういう役って」
「紡さん、だんなさんがいるのに、僕なんかで反応していいんですか?」
と、言われて俺はハッとする。ゆず君が浮気相手役で、俺は奥さん役の不倫ごっこ。
そう思うと、急に罪悪感が湧き上がってくる。
ゆず君が作る独特な空気感に飲まれて、いけない事をしているのだと、背徳的な感情が芽生えてきて、胸がドキドキと高鳴る。バカになった頭が、バカ見たいな事を口走らせる。
「旦那には、内緒、だからっ、ゆず君のこと、何も言ってないから」
「へえ。いけない事してるって自覚あるんですね。誰にでも股開くんですか?」
「違うっ、ゆず君だから……相手が、ゆず君だから」
「とんだビッチ」
蔑むような視線に、何故かゾクッとしてしまう。ああ、本当にダメだ。
そんな風に見られても、感じてしまう自分がいて、どうしたら良いのか分からなくなる。
「あっ、うぅ……」
「ふふ、こんなにおっ勃たせて、本当、淫乱な人だなあ。紡さんは」
「ちがっ」
「何が違うの?」
服の上から、ツンっとつつかれてしまえば、腰が浮いてしまう。それを見て、クスリと笑われる。ゆず君は、そのまま、器用にズボンのファスナーを下げて、直接触ってくる。
ゆるく握られれば、先走りが漏れる。ぬるぬるとしたそれを、塗り込むように擦られる。それだけで、イってしまいそうになる。俺が声を漏らすたびに、ゆず君は笑う。それが恥ずかしくて、でも、その羞恥心すら快感になってしまって。
「ほら、見て下さいよ。これ、全部紡さんのせいですよ」
「やっ、だめぇ、ゆずくん」
「何が駄目なんですか? こんなことして? 旦那さんに悪いって? 今更ですね」
そういって、ゆず君は俺を押し倒し、後ろを向かせる。尻だけを高く持ち上げて、所謂四つん這いの体勢にされる。
「ははっ、丸見えですよ。紡さん。貴方のエロい穴が」
ゆず君の言葉責めは止まらない。
ゆず君が指を舐める音が聞こえる。そして、ゆず君の指が俺の中に入ってくる。ゆっくりと侵入してくるそれに、俺は声を上げる。
ゆず君の細く長い綺麗な指が、俺の中を犯していく感覚。気持ち良くて、俺は夢中になる。
「もう三本も飲み込んでますね。分かりますか?」
「わかる、ゆずくんのゆび、きもち、ぃ、からぁっ!」
「ここ好きでしょ? ほーら、ぐりぐり〜って」
「やぁっ! そこぉ、すきぃ、もっと、ちょうだいっ!」
ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てて、指を激しく動かされる。俺の良いところを的確に攻めてくるゆず君。俺はただ喘いで、強請ることしか出来なくて。
だけど、まだ足りない。これだけじゃ満足出来ない身体。ヌポッと指が引き抜かれ、ゆず君の大きなあれが尻の割れ目に食い込む。
「このまま入っちゃいそうですね。でも、本当にいいんですか? 抵抗しなくて。ここ、旦那さんにしか、許してない場所でしょ?」
「うっ……」
「それでも欲しいんですか? 僕にぐちゃぐちゃにされたい?」
「ゆずく、ほしい、ゆずくんの、おっきぃの、ちょーらい」
「紡さんは、本当にドMですね……旦那さんなんて……他の男なんて忘れさせてあげますからっ、僕だけをッ!」
ゆず君の熱い楔が、一気に奥まで突き刺さる。挿入れられる前にゆず君が言った言葉、それって、本来なら台本に無い台詞だよね? と、何処かに残っていた思考の欠片がいう。ゆず君の本音をぶつけられているようで、それに少しゾクゾクッとしてしまう。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
いきなりの激しいピストン運動に、俺は悲鳴にも似た声を上げてしまう。ゆず君の動きに合わせて揺れる自分の性器。まるで獣みたいに、欲望のままに求め合う。
まだ演技は続いているとか、普通のセックスをしているんじゃないかとか色々考えが浮かんでは、霧散していく。
「はぁっ、紡さん、可愛いです」
「あっ、んっ、ゆず、ゆずくんっ」
名前を呼び合う。お互いを求め合う。
キッチンに響く水音。肌同士がぶつかり合う乾いた音。それから、ゆず君が息を荒げる声。全部、俺を興奮させる材料でしかない。
俺は無意識のうちに、自分で腰を動かしていた。
「ははっ、紡さん、えっちだ。自分から腰振って、僕のこと離さないようにしてる。僕もそろそろ限界なので、一緒にイきましょうか」
そう言うと、ゆず君は更に動きを早める。激しい抽送に、俺は何度も達してしまいそうになるけど、それは許されない。
「やっ、あぅ、イきたい、イきたいっ」
我慢出来ずに言えば、ゆず君が耳元で囁く。
―――イってもいいですよ。その代わり、僕の名前呼んで下さいね。
そう言って、彼はラストスパートをかける。パンッと一際大きい音が鳴ったと同時に、最奥を突かれる。それと同時に、俺のものからは精液が吐き出され、同時に中に温かいものが注がれる。
「はっ、紡さんっ――です」
「んっ、あぅ、ゆず、くん」
ズルリとゆず君のモノが抜かれ、喪失感に苛まれる。
ぼやぼやとした視界の中で見たゆず君の顔はうっとりとしていて、意識が完全に落ちる前にちぅっと額にキスを落とされたような気がした。