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│ 第8章 嘘をついていない人 │
「……嘘をついてない人は、誰なんやろうな」
曽野がぽつりと言った。
夜の宿、五人は同じ部屋に集まっていた。
「そもそも」
塩﨑が腕を組む。
「誰も“明確な嘘”はついとらん」
「覚えてない、分からない、勘違いかもしれない。 全部、本当かもしれない…」
吉田が頷く。
「だから厄介なんだよ」
「じゃあさ」
佐野が言う。
「逆に考えない? “嘘をつけなかった人”」
「つけなかった?」
曽野が聞き返す。
「状況的に、 嘘をつく余裕がなかった人」
一瞬の沈黙。
視線が自然と一人に集まる。
"山中柔太朗"
「……俺、?笑」
山中は小さく笑った。
「なんで」
「柔太朗さ」
佐野は言葉を選んだ。
「一番、説明してない。 鍵のことも、写真のことも」
「いや、疑われてない分、説明の必要がなかったし」
「それって」
曽野が続ける。
「嘘つくタイミング、なかったってことやろ」
山中は、少し考えた。
「まぁ…確かに」
否定しなかった。
「でも、それってさ」
吉田が言う。
「普通に犯人だっていう証拠にもならなくね? 犯人でも、語らないことは誰だってできる。… ただ」
吉田は言葉を切る。
「一つだけ、気になってることがある」
「何?」
塩﨑が聞く。
「通話」
全員が息を詰める。
「スタッフ男性にかかってきた、非通知の二分間。 通話記録の位置情報」
吉田は続けた。
「館の“圏外エリア”だった」
「圏外?」
佐野が眉を寄せる。
「電波が弱くて、通話が不安定な場所…そこって限られてる」
山中が、静かに口を開いた。
「……地下通路、!」
全員が、山中を見る。
「この館」
山中は言った。
「昔、地下に管理用の通路があった。今は使われてないけど、構造自体は残ってる。…ロビーから、行ける」
「……なんで知っとるん?」
曽野が聞いた。
「みんなが自由に見回ってた時、一人でロビーいたじゃん?俺もロビー見回ってたら、案内図見つけて、それ見てたから」
誰も、それ以上追及しなかった。
その夜、五人は警察に無断で館へ向かった。
「行くなら、今しかない」
#佐野勇斗
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塩﨑が言う。
「見つかったら、怒られるぞ」
佐野が言う。
「それでもや」
曽野が答える。
地下への扉は、ロビーの奥にあった。
古い金属製
「……開く」
佐野が言った。
鍵はかかっていなかった。
中は暗く、狭い。
「ここなら」
吉田が低く言う。
「電波、ほぼ届かない」
「通話の二分」
曽野が呟く。
通路の途中
床に何かが落ちていた。
「……スマホ?」
塩﨑が拾い上げる。
画面には、ヒビ。
裏には、スタッフ男性の名前。
「……ここで、落とした?」
誰も、答えなかった。
その時
「……足音」
佐野が言った。
背後から、ゆっくりと
振り返る
そこにいたのは____ 警察官だった。
「ここで何をしている?」
空気が 一気に冷えた。