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〇病院からの帰り道
空を見上げながら歩くひまり。
ひまり(もし滉星が退院して家に帰る頃、私の中にまだやり直したいって気持ちがあったら、
そのときは再構築を考えてもいいのかな……)
〇ひまりと滉星が暮らしていた家
ひまりはかつて滉星と一緒に暮らしていた家の玄関前に立っていた。
インターホンを鳴らすとすぐに滉星が玄関のドアを開けた。
滉星「ああ、ひまり……ありがとう。さっ、入って入って」
ひまり「こちらこそ今日はお招き、ありがとう」
ひまり(……って言っても、私も住んでた家なんだけどね……)
N「執刀医の腕が良かったのか、滉星の術後は順調で入院した次の月にはもう退院。
退院後は実家で半月ほど過ごして退院から1か月後、滉星は自宅に戻った。
自宅に戻ってすぐ『お見舞いに来てくれたお礼に』と私を自宅へ招いてくれたのだった」
〇回想シーン
自宅に戻った滉星が少し不安そうにひまりに電話をかけている。
ひまり「もしもし?」
滉星「……あっ、ひまり? 俺だけど……今日、やっと家に戻ったとこ」
ひまり(ああ、よかった……元気そう……)
滉星「それで……ひまり、お見舞いに来てくれたろ? そのお礼をしたくてさ。
ご招待ってのもおかしな話だけど、一度家に来てくれないかな?」
ひまり「うん……いいよ」
電話を切った後、ひまりはふぅーっと安心したように息を吐いた。
ひまり(どうなってるのか気になってたし、私のほうから電話でもしたほうがいいのかなって
思ってたけど……滉星から電話があってよかった。これで退院祝いもできるし)
〇ひまりと滉星が暮らしていた家
リビングのテーブルはすでにセッティングされていて、茶碗蒸しと握り寿司が並べられていた。
ひまり(何も食べないで来てって言われてたけど、こういうことだったのね)
滉星「……ひまり、今日はわざわざ来てもらってごめん。でも、本当にありがとう。
寒かったろ? さっ、座って座って。寿司食べよう」
ひまり「すごい御馳走。退院祝いしないといけないのはこっちなのになんかごめんね……
でも、おいしそう。いただきます」
滉星「……あっ、待って。味噌汁、味噌汁……」
そう言って滉星がキッチンに取りに行くのを見て、ひまりもキッチンに入る。
ひまり「私も手伝うよ」
滉星「いい、いい。ひまりは今日はお客様なんだから座っといて」
ひまり「そう?」
ひまりは素直に席に戻った。
滉星が味噌汁を持ってきてから、改めて2人で「いただきます」と手を合わせてから食事を始めた。
食後、ひまりがキッチンに入ってコーヒーを淹れると、滉星のところへ運んだ。
滉星「……ひまりの淹れてくれたコーヒー、久しぶりに飲むけどやっぱ自分で淹れたのとは全然違うなぁ。
めちゃくちゃおいしい」
ひまり「褒めまくっても何にも出ませんよ~」
滉星「いやぁ、だって……本当においしいんだからそりゃ褒めるよ。
……こうやってまたひまりと向き合ってコーヒーを飲める日が来るなんて思ってもみなかった。
案外、刺されてよかったのかも」
ひまり「もうやめてよ。どれだけ周りを心配させたと思ってんの? ……ぶつわよ」
滉星「ぶつなら、ほら……ここ、ここ」
そう言いながら滉星が片方の頬を突き出す。それを見て、ひまりが吹き出す。
ひまり「ふふっ、なんか……らしくないキャラになってない?
刺されておかしくなっちゃった?」
そんなやり取りがふと途切れ、沈黙が続いた。
滉星「……ひまり、戻ってきてほしい。俺が言えたことじゃないってのは重々承知してる。
でも、やり直してもらえないか。
俺も何度もひまりとの生活を諦めようって自分に言い聞かせるんだけど……ダメなんだ。
もう一度だけ、もう一度だけチャンスをください……」
頭を下げる滉星を見て、ひまりは困ったように笑った。
ひまり「……本当は言いたくなかったんだけど、実は滉星くんが刺されたって聞いて、
最悪死んじゃうかもしれないって思ったの。
そのとき、私めちゃくちゃ動揺したんだよね。
許せなくって、憎んでたくらいだったのに『死なないで』って思っちゃった。
……やり直しができるか正直、自信はないけど、でも私もやってみる価値は
あるのかなって思ってる」
滉星「ひまり……」
N「その後、私たちは話し合いを重ねて、改めて結婚生活をやり直すことに決めた。
以前、滉星が言っていたようにお互いの勤務先のちょうど中間あたりで家を探し、
そして同居が始まった」
〇ひまりと滉星が暮らす新しい家
冴えない表情のひまり。
N「自分でも予想はしていたものの、滉星との生活は決して穏やかなものではなかった」
滉星が家で楽しそうに電話をしているのを見て、不安になるひまり。
ひまり「……ねぇ。今の相手、誰?」
滉星「えっ、取引先の人だけど……」
ひまり「でも、楽しそうだった。……本当に取引先の人? 女の人じゃないの?
また……私に隠れて他の人と……」
滉星「違う違う! ほら、番号見て! 取引先のオフィスの番号だから! 調べればわかるよ!
……ああ、ごめん。ひまり、本当にごめん……もう絶対にあんなことしないから……」