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その日、私は帰宅してからタイトなワンピースに着替えた。
明さんが帰宅してから夕食を済ませ、食後のワインを楽しんでいるときに「今度のお休みに映画でも行かない?」と、私から誘いをかけた。
「最近見たい映画があるの」
「来週の日曜ならいいけど。久しぶりだね。そうやって千尋がどこかに行きたいと言うのは」
「最近はスクールに通っているでしょう?街に出ると幸せそうなカップルを見かけるじゃない。そうすると私も明さんとデートしたいなって思っちゃうの。それに友達の下島さんや斉藤さんの話も聞いてるとね、そういうの大事なのかなって」
「最近の千尋はなんだか若返ったように綺麗だね」
明さんはこのての世辞は言うタイプじゃなかった。
なにかの影響を受けたのかな?それか誰かの影響。
「とってもストレートに褒めてくれてありがとう」
笑って少し頭を傾げる。
「明さんは私の味にうるさくなったのかな?と思っていたからうれしいな」
「なに言ってんだよ。そんなことないさ」
「美味しいものを味わうのは舌も心も豊かになるわよ」
ワインを一口あおってから微笑む。
その後、一日の主菜を心行くまで味わった。
翌朝、満腹で気怠いまま明さんを送り出すと、朝食の食器を片付けながらテレビを流していた。
昨日は浩平と明さんのいいとこどり。
そういうのってズルいと言われるだろうけど、誰かを裏切って楽しむより全然健全じゃないって思う。
キッチンで食器を洗っているときにテレビから耳に入った言葉のせいで手が止まった。
愛が遺体となって見つかった。それも果歩と一緒に。
「嘘でしょう……」
私はしばし呆然としながら水を止めるのも忘れて立ち尽くしていた。