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「で、麺は、作るのですか?」
「そうねぇ、どう、しようかしら?」
「うーん、義姉上《あねうえ》のお考えからすると、必要ないかも」
「あー、小麦が、これでは、足りませんっ!」
「雑穀、で、誤魔化せないの?」
「パサパサになりませんか?作ったことないので、わかりません」
「いや、童子よ、それは、鶏《にわとり》の餌に、置いているものだぞ!使われては困る!」
「旦那様は、きっと、次は、麺だ、って、言っているでしょうしねぇ。次を、とにかく考えないと。予定を変えて、いっそ、潰しますか?」
「うーん、致し方ないですね」
「出来ませんと、言う前に、潰してしまった方が、良いと思うのですよ」
「あー、でも、誰が、捕まえるのですか?私は、嫌です!」
「童子は、小さいから、無理だろう。ここは、私が」
「均様、庭でさばいてください!調理場だと、血だまりができて、後片付けが大変ですから」
「ああ、わかった。しっかりと食べているのだから、そろそろ十分だろうし。義姉上《あねうえ》、今日の、元は、きちんと取りましょう!」
「均様、包丁は、研いでます。そろそろ、じゃないかと思って」
「おお、童子、気が利くなぁ」
「何しろ、奥様は、肉好きですから」
「均様?私達も、お相伴できるかしら?」
「はいはい、そのつもりですよ。柔らかめ、でしたね?」
あらあら、まあまあ!
──と、実に和やかな雰囲気が、流れているのだが、酔いの回った徐庶《じょしょ》の耳は、恐ろしげな言葉を捕らえていた。
潰す。そろそろ。包丁は研いである。奥様は、肉好き……。今日の元は取る。
「……まさか。いや、悪妻の考えることだぞ。しかし、これでは、まるきり鬼ではないかっ!」
何を勘違いしたのか、徐庶は、あわてふためき、転がりながら、孔明の元へ戻ると、長居をした!馬を出してくれと、言ったのだった。
「あら、お帰りですか?最後の料理が待っておりますのに」
徐庶を見送りに出た、かの美女たる侍女は、言ってのけた。
──ちょっと待て。その、最後の料理に、俺は、なりとうないのだっ!!
心の内で、叫びつつ、徐庶は、馬にまたがり、世話になった。諸葛亮、どうか、達者でいてくれよ!などと、今生の別れのような言葉を発したのだった。
「いったい、なんだったのでしょう?」
「あっ!兄上が、何か、余計な事を言ったのではないですか?」
「わ、私が?ですか?!」
均様!と、童子の声がする。
「あっ、そうそう、折角なので、今日は、久しぶりに、鶏《にわとり》を潰しますよ。徐庶様も、鶏料理《とりりょうり》を召し上がっていけばよかったのに……」
本当に。もったいない。と、月英と孔明は、徐庶の慌て振りに首を傾げるのだった。