テラーノベル
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僕らは先程正式に交際を始め、解散の流れは自然に消え去り現在は元貴の家で泊まることになった。もちろん明日に備えて早寝する予定ではある。風呂を終え、二人で寝ようと元貴のベットに飛び乗ったところだった。
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ピロン、と軽快な音が通知を知らせる。
先程元貴が若井に送った、僕らの関係の変化についての返信だろう。案の定君はくしゃりと笑いながら楽しそうに画面を見せてきた。
『ほらな〜、恋愛マスター若井さんの腕は本物だろ?ともかくおめでとう!!涼ちゃんにも伝えといて✋』
こいつ〜、と元貴は堪えきれないようにタップ音を奏でる。そんな横顔を微笑ましく眺めていると、ひとつ今でしか聞けない疑問が浮かんできた。
「…変なこと聞いてもいい?」
「ん、いーよ。何?」
スマホをサイドテーブルに置き、こちらを見る。今の仕草、昔ディズニーで見たのと変わらないな、可愛い。ひとりで勝手にほんわかしていると怪訝そうに見つめられてしまった。
「あのね、元貴はそのー…どうして…やっぱなんでもないっ」
「そこで止める!?ふふ、も〜分かってるよ。涼ちゃんの好きなとこでしょ?」
「ぐぅ……お見通しだったか〜」
超バレバレで恥ずかしい。君に隠し事は不可能だな。手で顔を覆っていると、優しく手首を掴まれそのまま元貴の頬に持っていかれた。目を閉じ歌うように君は言う。
「さっきもちょっと言ったけど、笑顔と匂いと気配り屋さんな所は特に好き。もちろんいっぱいあるけどね。もしかしたら初めて会ったときからいいなって思ってたのかな」
懐かしそうに笑いながら言う。なんだか照れてきたが、相手もそうなのか丁度よく涼ちゃんのも聞かせてと話題転換してくれた。
「かなり昔からだからいつからかは覚えてないなあ。特に好きなところは、雰囲気とか顔とかなんでもできるところとか。やっぱり常に先を見てるところは尊敬してるよねぇ。あとはギャップも大好き」
今はこんなに甘えんぼなのにね、と頬から手を離し頭に持っていく。くすぐったそうに、でも嬉しそうに頭をこちらに傾け撫でてと要求する姿は犬さながらで。映画で気迫の演技をしていたとか、ライブでのパフォーマンスの時のイメージすら湧かない。もちろんどの元貴も同じぐらい好きだ。
「あ、そういえばぶっちゃけちゃうけど…」
はっとしたように頭を上げ、気まずそうに言い出した。嫌な予感が背筋を走った、が。
「実は好きだって気付いたのはちょっと前からなんだ。多分無意識に感情に蓋をして、叶わないだろうからって見ないふりしてたんだと思う。関係が崩れるのも怖かったし。そのせいで涼ちゃんは長い事思ってくれてたのに、辿り着くまで時間かかっちゃった。ごめんね」
突然の新事実に、驚きつつも安堵する。
「全然!僕も臆病で不器用だから…。ともかく元貴の真意がわかってよかったよ」
微笑むと、君もほっとしたのか優しく笑った。
そしてどちらからともなくキスをする____
と思いきや。気がついたら天井。そして元貴の顔。みるみる口の端が吊り上がり、寝巻きを脱がそうとボタンを外される。
え、ちょっとまって。展開早くない?まだ心の準備出来てないんだけど。ひゃっ、どこ触ってんの元貴!もう、締まらないなあ。え?とりあえずちゅーするの?はいはい、分かったから優しくしてね。
僕らはどちらとも変わることが怖い。ゆっくり足場の確認をして、まわりの安全も確かめられたら、やっと1歩足を踏み出せる。そんな将来を見つめすぎて消えてしまいそうな君と、何もかも不器用な僕だから、ここに来るまでは時間がかかってしまった。でも、だからこそお互いを見守って、支え合って、唯一無二の存在になれるんじゃないかな。僕だけなら絶対無理なことでも、君となら可能の更に先に行けちゃったりして。
ちょっとずつ、学んで、歩いてゆこう。折角思い合えて手に入れた関係だから。
…とは言いつつも、初夜ながら盛り上がり過ぎて次の日腰の痛みで何も出来なく、若井に呆れながら怒られちゃうのは、また別のお話。
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読んで下さりありがとうございました!
これにて『Folktale』完結です。お付き合いありがとうこざいました。楽しんで頂けましたか?歌詞の節々を連想出来ればいいな、と入れてみたので良かったら探して見てください。
次もまた同じぐらいの量の連載を始めようと思っているので、是非読んで頂けるとうれしいです!こちらに限らず感想お待ちしてます〜
コメント
2件
更新、ありがとうございました!私もこの曲が好きなので、歌詞が散りばめられてて、嬉しかったです💕 次のお話も、楽しみにしてます!