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壊れたドアは、とりあえず板で塞いである。
エリオットは脚立に乗って釘を打っていた。
トン トン
チャンスはカウンターに座ってそれを見ている。
「……」
エリオットが振り向く。
にこにこ。
「見てないで手伝って」
チャンスは肩をすくめる。
「マフィアのボスの息子が大工」
エリオットは笑う。
「ピザ屋だよ」
脚立から降りる。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
チャンスが言う。
「癖強すぎ」
エリオットは楽しそうに言う。
「落ち着く」
チャンスは壊れたドアを見る。
「親父来るかもな」
エリオットは軽く言う。
「来るね」
チャンスが眉を上げる。
「分かるのか」
エリオットはにこっとする。
「父さん心配性」
その時。
外で車が止まる音。
キッ
チャンスの目が動く。
エリオットは普通に言う。
「ほら」
店の前に黒い車。
ドアが開く。
重い足音。
コツ…コツ…
店の入口に男が現れる。
黒いスーツ。
白髪交じりの髪。
鋭い目。
空気が変わる。
チャンスはすぐ分かった。
この街の裏社会を束ねる男。
ドン・ビルダー
エリオットの父。
男は店の中をゆっくり見回す。
壊れたドア。
ピザ窯。
そして――
チャンス。
最後に。
エリオット。
エリオットはにこにこしている。
「父さん」
ドンが低い声で言う。
「エリオット」
少し沈黙。
それから。
ドンがゆっくり言う。
「マフィアを追い返したらしいな」
エリオットは肩をすくめる。
「店壊されたくない」
ドンの視線がチャンスに向く。
空気が一瞬冷える。
「……そいつか」
チャンスは黙ったまま。
エリオットは間に立つ。
そして。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し引き寄せられる。
ドンが眉を上げる。
「……何してる」
エリオットは笑う。
「癖」
ドンは数秒黙る。
それからチャンスに言う。
「お前」
チャンスは静かに答える。
「チャンス」
ドンは頷く。
「息子が気に入っている男か」
エリオットが言う。
「ピザ常連」
ドンは少しだけ笑った。
でも目は鋭い。
「追われてる男を」
店を見回す。
「匿うのか」
エリオットは軽く答える。
「うん」
ドンが聞く。
「理由は」
エリオットは少し考えて。
それから――
ネクタイ。
ぐい
チャンスがまた前に引かれる。
エリオットはにこっと笑う。
「逃げるから」
チャンスが呆れる。
「その理由か」
ドンは数秒黙る。
それから。
小さく笑った。
「……お前らしい」
エリオットは楽しそうに言う。
「でしょ」
ドンはチャンスを見る。
しばらく観察するように。
それから言う。
「一つだけ」
チャンスが目を向ける。
ドンの声は低い。
「息子を危険に巻き込むな」
店の空気が少し張り詰める。
チャンスは静かに答える。
「……そのつもりはない」
エリオットは横で笑っていた。
そして。
ネクタイ。
ぐい
「もう巻き込んでる」
チャンスが言う。
「お前がな」
エリオットは楽しそうだった。
ドンはそれを見て――
少しだけ呆れたように笑った。