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Relu side -
「ゆうくん! これ、おそろで買お!」
「えー、また何か持ってきたの?」
ゆうくんが呆れたようにそう言う。
「だめ?」
「いや、いいけど…」
渋々といった様子で、
ゆうくんはそれを受け取る。
緑色と水色の、星の形をしたキーホルダー。
「まったくお金の使い方が荒いんだから…」
そう言いながらも、ゆうくんはなんだかんだ
嬉しそうにそれを持って笑っていた。
まるで、夏の太陽のようだった。
◇
ゆうくんから、一通の電話が来た。
すこぶる嫌な予感がした。
電話に出た瞬間、踏切の音が聞こえた。
それは、どんどん近づいてくる。
「ゆ、ゆうくん…?なにして…」
ゆうくんは、俺の問いには答えなかった。
ただ、たった一言
泣きそうな声で、彼はこう告げた。
「…君は友達」
ヒュ、と喉に何かが引っかかった。
電話は切れて、
俺の荒い息以外、何も聞こえなくなった。
「…そうだね、ゆうくん」
そうだよ、君は友達。
だからこそ、俺の手を掴めばよかったんだ。
俺は君がいなくちゃ、
居場所なんてないんだよ。
なかったんだよ。
邪魔なやつなんて誰もいない、
そんな透き通った世界で、
ふたりだけで愛し合えたらよかったのに。
…途端、脳裏にフラッシュバックする。
蝉の声、
二度とは帰らぬ君。
永遠にちぎれていく、
あの日あの時一緒に買ったお揃いのキーホルダー。
君が消えたのも、
俺が俺でなくなったのも、
ぜんぶ夏のせいにした。
夏が消し去ったんだ。
白い肌の君も、薄笑いの獣もすべて。
いっそのこと、
俺を指さしていた、あの透明な君に、
悲しいぐらい、
取り憑かれてしまいたい。
…頭のいい君には、ぜんぶバレていたんだね。
泣いて喚いた俺を慰めてくれる人は、
もういない。
愉快な音楽は、ボロボロに壊れて、
既に止まってしまったんだ。
◇
踏切の音が鮮明に聞こえる。
それは、電話越しなんかじゃなく、
すぐ傍にまで響いていた。
「俺は、君のことが、大好きだ」
俺は彼と同じように、
携帯を片手に持つ。
そして、絶望の縁に立って、
踏切へと飛び出した。
赤いアネモネ『恋の苦しみ』