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不安定ラジオ
2
ほわ🌇
21
ふぃる汰
2,015
「綺麗…」
「そうだね。宝石みたいだ」
ふわふわと漂うクラゲたちのコーナーで私たちは目を奪われていた。
これまでいろんなコーナーを回ってきて休憩がてら静かなところに来たのだがこんなに幻想的なものを見れるとは。
なんでもここの水族館の目玉のうちの1つらしい。
そしてここを過ぎてすぐにある、もう一つの目玉というのが…
「深海特別展?」
はるさんが驚いて立ち止まる。
「そうなんです!最近希少なメンダコやラブカなどが展示されていて、もともと居たダイオウグソクムシと合わせて展示されているんです!」
「へぇ、すごいね」
過去に飼育例が少なく、長期飼育が難しい深海生物たちがここ2~3日立て続けに捕獲されたらしい。普段あまり馴染みのない深海のことを身近に感じてもらおうと、この展示は開催されたらしい。
展示室の中に入って人気そうなメンダコとラブカを見たあと、ゆっくり展示を回っていく。
「すずが深海生物を好きになったきっかけって何?」
カイロウドウケツとドウケツエビの展示を見ている時、そう聞いてくるはるさん。
「えっと、メンダコとかが可愛いっていうのもあるんですけど…、なんか安心するっていうか元気をもらえるんですよね」
「元気?」
「光が届かないくらい暗いところでも一生懸命に生きている姿とか…。光がなくても生きていけるのが私には羨ましくて」
私には中学生くらいの記憶がなぜかおぼろげにしか残っていない。
それでも苦しいときに、誰かが手を差し伸べてくれたのは覚えている。
私にとっての光であるその人に会えていなかったら私は…
「―すず?大丈夫?」
はるさんの声で我に返る。
つい考え込んでしまった。
「ちょっと疲れたかな?」
私の顔を覗き込んで心配そうだ。
「ここで最後のコーナーだし、もうショップ行って帰ろっか」
そう言われて時計を見ると、もうそろそろ4時になるところだった。
帰るにはいい感じの時間かもしれない。
私たちはお土産を買うべくお店に向かった。
「―まさか記念にやったぬいぐるみくじで1等当てるとはね」
苦笑いを浮かべながらそういうはるさん。
その腕には身長の半分はありそうなコウテイペンギンのぬいぐるみが抱かれていた。
大人じゃなくてヒナなところが水族館のセンスが光っていると思う。
「はるさん今日誕生日だから、運が集まってたんですよ!多分」
「そうなのかな?」
ぬいぐるみの頭を撫でながらそうつぶやくと、何かを思いついたように私の方に顔を向けた。
「せっかくだし、これすずにあげるよ」
「えっ、でも…」
「いいのいいの。すずと一緒に誕生日過ごせて楽しかったし、そのお礼だから」
そう言ってぬいぐるみを手渡してくれた。
――どうしてはるさんは私のことをこんなにも気を使ってくれるのだろう。
これまで一緒に部活をしているときも何回か思っていたが、ただの先輩後輩以上にはるさんの中でなにかあるのだろうか?
「信号青だ。行こ、すず」
はるさんの笑顔。
その向こうからあれは…
【キキィー!!】
「―すず!!」
考える前に体が動く。
突き飛ばされたはるさんは焦りと不安が混じった顔をしている。
あぁ今日はそんな顔をさせたくなかったのに。
突っ込んできた軽トラックは
もう目の前だ。
【ドンッ!】
コメント
1件
深海の闇で懸命に生きる姿に「光がなくても生きていけるのが羨ましい」と語るすずちゃんの心情が、クラゲの幻想的な輝きと対照的でとても印象的でした。はるさんがぬいぐるみを譲ってくれる優しさにほっこりした直後のあの展開、心臓が止まるかと思いました…。おぼろげな記憶と「私にとっての光」の伏線も気になります。お二人の関係がどう変わっていくのか、続きが待ち遠しいです。