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「……もうっ! 本当にあの部長は、いつも一言多いのよ!」
金曜日の夜
高瀬くんのマンションのリビングで
私は缶ビールを片手に、今日あった会議の不満をぶちまけていた。
普段は会社で「鉄の女」を演じ
どんな理不尽も無表情で受け流しているけれど、今の私にはそんな気力も必要性もなかった。
「『佐藤くんも少しは肩の力を抜いたらどうだ』なんて……! 私がどれだけ必死にこのプロジェクトを支えてると思ってるのよ。ねえ、聞いてる? 高瀬くん」
「……聞いてますよ、そうですよね。先輩は誰よりも現場を見て、泥臭い仕事まで拾ってる。部長、そこまで分かってないんですよ」
「そうなの! そうなのよ! 分かってくれるでしょ!」
私は勢いよく頷き、二本目の缶をプシュッと開けた。
高瀬くんは自分のお酒にはほとんど手をつけず
私の少し赤くなった顔を、穏やかな眼差しで見守っている。
「それに、取引先の担当者も! 提出期限は守らないし、修正をお願いすれば嫌な顔をするし……私、もう、……っ!」
「……大変でしたね。…本当に先輩は頑張ってますから、辛くなったらなんでも俺に吐き出してくださいね」
高瀬くんの相槌は、驚くほど完璧だった。
否定もせず、解決策を提示するわけでもなく
ただ私の言葉の端々を拾って
「そうっすよね」
「大変でしたね」
と全肯定してくれる。
その心地よさに甘えて、私の口からは次から次へと愚痴が溢れ出した。
「……はぁ。…なんか、全部吐き出したらスッキリしちゃった」
気づけば一時間近く、私は一方的に喋り続けていた。
少し酔いが回って、身体がふわふわと熱い。
ソファに深く背中を預けると
高瀬くんが「お水、飲みますか?」と言って、冷たいグラスを差し出してくれた。
「…ありがと、ねえ。高瀬くんって、本当に聞き上手よね。……なんか、不思議なくらい落ち着くわ」
「そうですか?……まあ、これにはちょっとした『教育』の成果がありまして」
高瀬くんは少し照れくさそうに笑いながら、自分の隣に座る私の横顔を見つめた。
「……教育?」
「はい。実は俺……」
おまる