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二話 出会い
拝啓神様。なぜでしょうか、神崎くんとは話したこともないのにいきなり呼び出されるなんて……何を言われるのかとても怖いです。
緊張で身体が硬くなっていた私は階段につまづきかけて、さらに気まづい雰囲気になってしまった。神崎くんは柔らかい笑顔を崩さずにいたけど、彼の瞳はどこも見ていなくて、彼の本心は全くもってわからなかった。
人気の少ない屋上への階段を二人で登る。彼は意図しているのか、はたまた無意識か、歩幅を合わせてくれているようだった。何を聞かれるのかと不安と緊張で口から心臓が飛び出そうだ。そんな私の緊張を感じ取ったのか、彼はりんご味の飴を私の手に乗せた。
りんごは嫌い?と聞かれて、つい大好き!と小さい子供のようにはしゃいでしまった。それは良かったと微笑む彼の姿に少し緊張が和らぐ。恥ずかしさで顔が赤くなりリンゴのようになりながらもりんご味の飴を口へ転がす。
「急に呼び出してごめんね〜!……単刀直入に言うと、……彼岸に告白でもした?」
「えぇ!?!?なん、え、え!?」
「その反応みるに多分したんだよね?」
「え、あ、は……、はい!……ごめんなさい。……え、遠山くんから聞いたんですか?」
「いや、彼岸のやつはずっとぼーっとしてたよ。……それにずっと澄川さんのこと見てたし。」
「え、えぇ!?!?!?見られてたんですか!?え!?いつ!?」
「澄川さんいつも彼岸のこと見てるし、彼岸のこと好きなのかなーってずっと思ってたから……」
「え!?私、そんなにわかりやすいですか……?もしかして、遠山くんにもずっと前からバレてたとか!?!?」
「あ、いやそれはないと思うよ。彼岸って結構鈍感だし。まぁーでも、澄川さんはわかりやすい方だと思うけど……ね?」
「ええええええ!?!?!?!?」
もしかしたら神崎くん以外にも、多くの人に気づかれていたかもしれない。驚きのあまり私は大きく後ずさる。なくなりかけていた飴もつい飲み込んでしまった。
「まぁ、だから、澄川さん関連だと……告白とかかな?って。」
「……すみません。告白して振られたらこの気持ちも諦めがつくと思ったんですけど…………」
「あ、振られる前提だったんだ…………で、告白したけど諦められなかったんだね。」
「………はい……」
「んーじゃあさ、彼岸にもっとアタックしてみたらどう?」
「え?」
「多分、彼岸のやつ告白されてから澄川さんのこと意識し始めたと思うんだよねー。」
「……え、まだ希望はあるってことですか……?」
「うん。行っちゃえば〜?彼岸のやつも本当に嫌なときは嫌っていうし、なんなら告白されて嬉しかったんじゃないかな?あんな浮かれてるし」
「浮かれてる……?……まぁでも、まだ頑張ってみようかな。……ありがとう!神崎くん!!!!」
「いや〜彼岸にずっと話が通じないのはこっちも困るしさ〜。………てゆうか、本当に振られたの?」
「はい!」
「へぇー……」
「……?」
まさか遠山くんの友達にバレていたとは。私の顔はまたりんごのように赤くなっていた。焦って来たものだから、髪もボサボサのままだった。
神崎くんがあんなに優しい人だったとは。遠山くん並にモテる人ではあるけど、男女問わず距離が近い人気者なため、女癖が悪いって噂もよく聞く。だが、私が見る限りそんな人には見えなかった。といっても、私は表面上の彼しか見ていないから何も言えないが。
彼岸くんは好きな人がいると言っていた。でもまだ付き合っていないようだし。がんばれば、もしかしたら、もしかしたら、いけるかもしれないと淡い期待を抱いていた。奇跡を信じて夢見る私と、夢を見るだけ泣くことになると言う私が、交互に応答し合う。恐らく行き着く結果は同じだろう。
(でも、彼岸くんの好きな人ってだれだろう?断る理由に使ってるだけで、本当はいないとかかもしれないけど。)
「まーた難しいこと考えてんのー?眉間のシワすごいけど」
「優華〜……」
「んー?」
「遠山くんのこと、やっぱり諦めきれないよ……」
「…………まぁ、そんな簡単に諦められないよね。」
「……だから、これからは遠山くんに意識してもらえるようにがんばろうと思う!!」
「そう……え?……えぇっ!?!?」
「どーしたらいいかな、まずいっぱい話しかけたりしてみる?でも私そんなコミュ力ないし…………連絡先教えてもらいたいけど……でもその前に仲良くならないと――……」
「え、え、……え?……マジで言ってんの?」
「絶対会話続かないー………………」
「いや置いていかないでくれる?」
重かった足が嘘みたいに軽く、羽のように感じた。今ならどれだけ否定されても、好きって伝えられそうなぐらい気分が上がっていた。
一度振られたからか、糸がプツッと切れたように吹っ切れてしまった。今までは彼の気持ちを尊重することが一番だと思っていた。でもこれからは、好きになってもらえるように頑張りたい。
自分の気持ちは押し付けたくない。でも、本気で好きだったんだなってことはわかってほしい。
「彼岸!!よけろ!!」
「え」
八番のゼッケンを着た男の子が蹴ったボールが顔面に当たる。物凄い音と同時に、俺は後ろへフラフラと倒れ込んだ。
「彼岸!!大丈夫か!?!?」
「大丈夫!?すっごい音したけど!?」
「どうしたんだよぼーっとして!」
「え、あ、ごめんごめん考え事してたわ。」
「おいおい、試合中に考え事すんなよ!」
「すみません……」
「一応保健室行くか?」
「いや、ちょっと休憩してすぐ戻るわ……」
サッカーの秋の大会が近いからか毎日練習ばかり。かなりキツイし、自分は体力がない方なので結構嫌な時期ではある。だがそんなこと口に出せば顧問に怒られるどころじゃすまないから口には出さない。
秋なのに外が暑すぎるせいで、熱中症で倒れたやつが二人もいる。だから今日は休みなしに練習に集中しなきゃいけないのに、澄川さんのことが頭から離れない。
できることなら部活なんて休んで澄川さんのことを整理したいのに。
なんでいつも以上に澄川さんのこと気になるんだろうか?告白されたから?振った罪悪感からか?
頭の中がグルグル回って全てがごちゃごちゃだ。まともに睡眠をとれないほど俺は彼女に夢中になっていたのだ。
みんなが家に帰宅し、日が暮れてしまった放課後、私は塾に行っていた。長い一本道を急ぎめに歩きながら、私は胸に手を置いて心を落ち着かせていた。
(あ〜もう最悪!部活は大会近いからって伸ばされるし、そのせいで、塾は遅刻で怒られるし、そのぶん時間伸ばされたうえに最後だからって掃除させられるし!!最悪すぎる!!!!)
すっかり帰るのが遅くなってしまった。歩きながらも斜め上の空を見上げて息を吐く。秋になり、外が暗くなるのも早くなったなと感慨にふけっていると、お腹が音を立てて私の目を見た。
(あぁーー疲れたぁ!もう無理動けない……帰ってすぐに寝たい。今日の夜ご飯はなんだろう?ハンバーグがいいな、オムライスでもいいな、いやお寿司でも――……)
考えれば考えるほど、先が暗くなっていく。その中でも、彼が見えなくなるほど盲目的になってしまうのが怖かった。
疲れて重くなったなまりのような足を必死で動かした。眠くなりながらもフラフラの状態で帰り道を歩いていく。一人、暗い道を歩いていくのは、寂しく、暗い気持ちになるものなんだと思った。でも、冷たい空を泳ぐ月だけは私に向かって暖かく微笑んでくれた。
暗い公園の横を通った時、小さな声がした。
もう暗い時間で子供はいないはずだし。電柱の光に照らされた公園には大きな人影もない。人気もない公園からなんで声がしたのだろう?怖くなって疲れたことも忘れて走って帰ろうとしたとき。
「あー、だからそっちじゃないって。」
「え?こっちじゃなかったっけ?」
「違ぇよ!!お前に言ってねぇわ!!!!」
「ごめんてぇ〜そんな大声出してると怪しまれちゃうよ?」
「バカ言うな。大体てめぇが――」
「えっ」
「?今女の声しなかったか?」
「その子の声でしょ〜?」
「いやこいつ男だって」
「え〜?でも僕のも男の子だよ?」
「はぁ?」
「疲れてんじゃない〜?――……」
何あれ何あれ何あれ。怖い怖い怖い。デカい鎌持ってる……なんで、え?これヤバいやつ?黒い格好してるし、光ってる丸いものがなんか浮いてる……。え、さっきよりも寒くなってきたし、なんか暗くてよく見えないけど絶対良くないやつだし!!
これヤバいやつかな、バレた?いやバレてないでしょ、どーしよ、早く帰らなきゃ、でも走ったらバレるよね?こっそり行った方がいいよね?でもそれじゃ時間がかかりすぎない?え、どうしたらいいの!?
古びた小さな公園には、黒い大きな人影が二つあった。二人の近くには丸い光るものが飛んでいて、漫画の世界に入り込んだようだった。黒い二人は大きな鎌を持っていた。一気にあたりが冷たくなる。呼吸の仕方も忘れてしまった。こんなに寒いのに汗が止まらない。
なにもわからなかったが、なぜか本能的に命の危機を感じた。早く逃げろと、脳がずっと訴えかけてきている。逃げなければならない、でも震えて足が動かない。先ほどと同じ笑みを浮かべる月も、今度は私を見捨てたらしい。
「あんた、もしかしてみえてる?」
「へ?」
「……あ?……澄川さん?」
「え?と、遠山くん?」
「え?え、俺のこと見えてんの?え?本当に?」
「え!?遠山くん……だよね!?……え、あ、と、遠山くんは、何してるの!?こんな時間に!?」
「……」
遠山くんは口をあんぐりと開けて目を見開いている。私がいたことが相当驚きだったようだ。私もとっても驚いている。驚きすぎて変なことを口走ってしまった。
(なんで遠山くんがここに!?なにその格好!?でも、かっこいい!驚いた顔も可愛いし、やっぱり綺麗な顔〜!!!!…………じゃなくて!!)
「え〜?この女の子見える系?めずらし〜い!」
「……え……」
「え、えっと、すみません!えっと、私今すぐ帰らなきゃいけなくて!!すみません!えっと、遠山くん!また明日!!」
「あ、待って!」
「え、と、ととと、遠山くん!?あ、あの、ううう腕が、あの、なんで掴んで!?!?」
「今日のことは誰にも言わないで、また今度ちゃんと話すから、今日はもう暗いし、……気をつけて帰って。」
「え?あ、うん!わかった!と、と、遠山くんももう暗いから、気をつけてね!!」
色々ありすぎたせいか、頭は遠山くんのことで埋まっていた。遠山くんと喋れたことの嬉しさと緊張で、顔が真っ赤に火照っているのを感じた。気づけば私は足は止められないほど速く走っていて、目はすっかり覚めていた。
髪、整えておくんだった、服もちゃんと着るんだった。……もっと可愛い姿にしとけば良かった〜!!
恥ずかしい感情ばかりで埋まっていたけど、「また今度話すから」ってことは、また話せるってこと?
もし、次があるのなら、そのときは髪も服も整えて、ニコニコして、うんと可愛くなって会いたい。
prrrrr……
ポケットで唸るスマホを取り出すと、表示された時間に目を疑い、足を速める。
「ちょっと!みこと!?あんたどこにいんのよ!はやく帰ってきなさい!ご飯冷めちゃうわよ!!」