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今にも発射しそうな彼女に、ガイランゲルが落ち着いた声で言う。
『ジグエラよ、俺はこの仔の叫びを聞いて駆け付けただけだぞ? この仔はヴノを助けたいんだそうだ、ほれ、そこで動かない猪を見るが良い…… ヴノ、死に掛けてるだろう?』
『むっ! こ、これがぁ? 確かに見た感じはヴノっぽいけど…… 何でこんなに小さくなっちまってんのよっ?』
『ンガァ、ジツハ、ネ――――』
そこからギレスラは一所懸命に飛沫(ひまつ)を撒き散らせながら、慣れない言葉で、しかし出来得る限り簡潔にここまでの出来事を説明したのである。
血抜きの練習でレイブがタンバーキラー入りの糊を付け忘れてしまった事。
その掠り傷から不思議な黒い霧、|靄《もや》が噴出してヴノがドンドン弱って行ってしまった事。
レイブがゼムガレのナイフに無垢の魔力を込めた事で、ヴノの上下の顎を刺し貫いてしまった事。
フランチェスカとバストロの迂闊さで、ヴノが更なる弱体を余儀なくされてしまった事。
ペトラの微回復(プチヒール)連投によって、ヴノの傷自体は修復できた物の、意識を失ったまま、まるで死んだようになってしまっている事。
ほとほと困ってしまった自分の叫びに応じて、ガイランゲルが現れて何と無くいやらしい言葉を言いまくっていた事など、慌てながらも一気に報告したのである。
要所要所にザンザスが如何程役立たずであったか、それを織り込む事も忘れていなかった、確(しっか)りしている。
いっぱい話したせいか、荒い呼吸で自分を見つめている稚竜、ギレスラにジグエラは優しげな声で言う。
『ギレスラ、アンタの話によるとさ、ヴノがドンドン弱って行ったのが判った、って話だよね、どうしてそう思ったんだい? その段階ではまだ縮んでいなかったんだろう?』
『ソ、ソレハ、ネ! ニカイ、タッタニカイ、ノ、ヒール、ダケデ、マリョクギレ、ニ、ナッタカラ、ダヨ!』
『ほお…… そうなのか、ザンザス?』
『どうなの? ザンザス!』
ガイランゲルもジグエラも揃って厳しい表情であった。
残念なザンザスは一切悪びれる事無く、平気の平左で答える、どうしようもないな……
『おう、そうなんだよな、ヴノ位の魔獣がおかしいだろう? 二回、たった二回で魔力切れを起こしちまってな、その後、レイブの小僧に刺し貫かれてからは勢い良く靄(もや)が溢れ出してよ、んで、縮んじまって意識不明、そう言う訳なんだよ! なあガイランゲルの旦那、ジグエラの奥方、何とかしてくれよぉ! 助けてやってくれぃ、お、俺の兄貴なんだよぉ!』