それにしても、樹さん、モデルだったなんてすごいな。
だけど、柊君だって、今すぐモデルになれるくらいカッコ良い。運転する横顔もとっても綺麗だし、全てが完璧でキラキラしてる。
職場でも、キチッとジャケット姿の時もあれば、ラフなジーンズ姿の時もあって、どんな洋服でも上手く着こなしていて、とても素敵だ。
私が彼女ってことは……
一応、社員全員が知ってる事実。
なのに女子社員達は、お構い無しにファンクラブを作ってワイワイ騒いでる。完全に彼女としての立場を無視されて、ちょっとムッとする時もあるくらい。
だけど、柊君は、そんなたくさんのアプローチも笑い飛ばし、いつも私だけを大事にしてくれる。
周りの可愛い女子達よりも、私を選んでくれてることが不思議で仕方ないけど、でも、やっぱり……特別な感じがしてすごく嬉しい。
空港に到着し、私達は樹さんを待った。
何だか少し緊張する。
いよいよ柊君の弟に会えるんだ。
次から次に飛行機から降り立つたくさんの人々。
その中から、樹さんを探す柊君。
そして、柊君が大きく手を振りながら叫んだ。
「樹!! ここ!」
1人の男性が、かなり向こうからこちらに気づき、片手をサッとあげて柊君に応えた。さすが兄弟だ。柊君の声は聞き慣れているのだろう。
ゆっくりと私達に近づいてくる男性。
その人を見て、私は思わず息を飲んだ。
嘘みたい――
「柊君が2人!?」
驚いて慌ててる私を見て、隣で柊君がくすくす笑ってる。
「おかえり、樹」
「ああ。ただいま、柊」
2人は、顔、スタイル、話す声までほとんど同じだった。
確かに、声は柊君の方が少し優しくて柔らかい感じで、樹さんはちょっとクールで冷静な感じだけど。
それにしても、こんなに似てるなんて……
「驚いた? 柚葉」
「う、うん。すごくびっくりした」
「驚かせてごめん。実は、僕らは双子なんだ。一卵性双生児」
「そ、そうなんだ。まさか双子だなんて……」
本当に「まさか」だ。
柊君1人でもドキドキなのに、こんなカッコ良い人が2人も目の前にいて、今、ちょっとしたパニックを起こしてる。
「樹、紹介するよ。こちらは間宮(まみや) 柚葉さん。いつも話してただろ、僕の婚約者」
「は、はじめまして、間宮 柚葉です。柊君……あっ、お兄さんとお付き合いさせていただいてます。これからどうぞよろしくお願いします」
「美人じゃないな」
え、え?? ええぇぇ!!!
な、何なのこの人?
初めて会ったのに、そんなにハッキリ言わなくてもいいじゃない。
「すみませんね、美人じゃなくて」
つい、イヤミたっぷりに返してしまった。大人気ないかも知れないけど、あまりにひどすぎる。
いくら柊君の弟でも、この人は苦手かもしれない。
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