テラーノベル
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「信頼関係か……それは確かに昔から変わらないことかもしれません……」
瑞穂は顔を上げると、鏡越しに萌音を見つめる。その瞳はどこか悲しみを帯びていることに気付く。
「実は私たち、義理の姉弟なんですよ。親同士が再婚して、小学生の時に姉弟になったんです」
萌音は思わず目を見開いた。だけどよく考えてみれば、二人の阿吽の呼吸や互いを思い遣る姿は、長い年月を積み重ねてきたものだとわかる。
「そうだったんですか……それなら確かに長いお付き合いになりますね」
「……私ね、ずっと弟のことが好きで……でも世間的にはおかしいって思われるような気がして、その気持ちを押し殺して別の人と結婚したんです。でもそんな考えだからバチが当たったのね。いろいろ失敗しちゃったの。だけどそこから救い出してくれたのが弟で……」
「何があったんですか……?」
「暴力を振るわれたの……今は消えたけど、あの頃は痣だらけで肌を見せる服なんて着られなかった……」
「じゃあそこから救い出してくれたご主人は、松島様のヒーローなんですね」
「うふふ……きっと昔からずっと私のヒーローだったのね。今ならもっと早く素直になれば良かったって思えるんだけど……恵介にきちんとフラれてから家を出ることも出来たはずなのに、あの頃は無理だったから……」
その時ドアが開く音がして、電話を終えた恵介が部屋に戻ってきた。
「遅くなってごめん……」
そう言ってから、瑞穂の姿に目を奪われ、照れたように片手で口を押さえる。
瑞穂は両手を広げると、嬉しそうに一回転して見せた。
「どうかな?」
「ん……すごく似合ってる」
恵介は瑞穂に近寄ると、彼女の髪をそっと撫でる。
「こんな日が来るなんて夢みたいだよ……」
お互いの目を見つめて微笑み合う二人に、萌音の方が恥ずかしくなってしまう。
「あっ……では靴とブーケを持ってくるので全体像を見ましょう」
萌音はいそいそと隣の部屋に向かうと、胸の高鳴りを抑えるのに必死だった。
きっと松島様と私は少し似ているのかもしれない……彼への気持ちに気付かないふりをして生きてきた。気付いても伝えるなんて出来なかった。
でも彼女は今、ご主人と結ばれて、真っ直ぐに気持ちを伝えられている。私は翔さんと気持ちは伝わったけど、それ以上になることを拒んでいる……。
彼女を羨ましいと思ったのは、なんのしがらみもないから。私だって本当は……。萌音はハッとする。今何を言おうとしたのだろう。そのことに戸惑いすら感じる。
頭を振って気を持ち直すと、靴とブーケを棚から取って隣の部屋に戻って行った。
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