ー 第2話 ー
朝食を食べ終え、片付け担当のうりとヒロくんが皿洗いを終えた。2人以外のメンバーは撮影準備に取り掛かり、全員が準備を終えたことを確認してから、俺はカメラの電源を入れた。
「じゃあ、始めるよ」
メンバーに呼びかけて、撮影開始ボタンを押した。
「はいどうもーこんにちは!じゃぱぱです!」
「のあです」
「たっつんでーす」
「ゆあんですー」
「シヴァです」
「どぬくです! 」
「うりでーす」
「えとです(小声)」
「ヒロです」
「なおきりです!」
「もふですー」
ん?なんかえとさんの声だけ小さかったような…俺はマイクの電源を落とし、えとさんに話しかける。
「えとさん、なんか声小さくなかった?」
「あえ?まじ?ちょっと待ってね」
えとさんはマイクの電源を確認するなり、
「あっ、電源入ってなかった!」
と、慌ててマイクの電源ボタンを押した。
「みんな、ごめんね!」
えとさんがメンバーに向かって謝ると、
「全然大丈夫ですよ」
「気にしない気にしない!」
すぐさまたくさんのフォローが上がる。やっぱりカラフルピーチっていいグループだな。俺はなんだかあたたかい気持ちになった。
撮影を再開し、マインクラフトをつける。
「今日やるのは、改名おにごっこでーす!」
「うわーまじかよ」
「いやや~俺絶対下ネタつけられるわ」
「1025さんだってつけるじゃないですか〜」
「なおきりさんもつけそうやなぁ笑」
「絶対うりさんも変なあだ名つけますよね」
「は?!つけないし!逆にのあさんつけて欲しいの?笑」
「欲しくないですぅ!!」
「私隠れとこっかな」
「えとさん僕がみつけてあーげーる」
「じゃあ俺はどぬくさん追いかけるわ~笑」
「あ、俺は参加しなくていい系?」
「シヴァさんには黒歴史あるもんね笑」
「もふくんがあんな名前つけるからでしょ?!笑」
一気にざわざわし出すメンバーたち。
改名おにごっこは、タッチされたらあだ名をつけられるおにごっこ。最後に鬼だった人は、1ヶ月SNSの名前をあだ名にしなければならないという罰ゲーム付き。これ、ハラハラして面白いんだよなー笑
「よし!じゃあ始めるかー!」
メンバーに呼びかけ、剣を持つ。
「改名おにごっこ…スタート!!」
大きな声で言って、1度マイクとカメラの電源を切った。さすがに一日中撮影する訳には行かないので、休憩を挟むようにしている。
「はーい、休憩~!」
ちなみにここまでで約1時間半が過ぎている。短い撮影でも、意外と時間がかかる。
休憩になると、みんな一気にオフになる。
「俺ななチキ買ってくるわ~」
「私もクッキー買いに行きます!」
と言って、コンビニに行くゆあんくんとのあさん。
「トイレトイレ~」
と慌てながら部屋を出ていくどぬくさん。
「はー疲れたー久しぶりの撮影大変やなぁ」
とため息をつきながら眼帯を直すたっつん。
「僕の愛しのポピーちゃんに水あげてきますね」
「お、久しぶりになおきりさんのお花見に行こっかな~」
とジョウロに水を入れるなお兄と、ついて行くシヴァさん。
「もふくん〜、プラモデル作ってるんだけどさ、わかんないとこあるから教えてくれん?」
「え、説明書無いの?笑 まあいいよ、行こ」
と少々呆れながらうりと階段を上がるもふくん。
「じゃぱぱさん。俺編集手伝うよ」
「じゃっぴ~ヒロくん~ラムネあるから一緒に飲も~」
とパソコンの前に座る俺の横に来てくれるヒロくんとえとさん。
「え、ラムネあるの?!最近どこも売り切れじゃん?!」
「前に買っておいたんだよねー!私天才かも?」
「えとさん、俺にもラムネくださいー」
チリン、と乾杯した時にラムネ瓶が音を鳴らす。夏はとても暑いので、毎日エアコンガンガンに効かせながら生活している。エアコンを効かせすぎて、前にのあさんに怒られたことがあった。電気代も考えないとな~。
そんなこんなで昼食を済ませ、撮影を再開した。久しぶりの撮影は大変だけど、メンバーとこうやって活動できることが楽しくて、疲れなんて感じない。撮影している時の時間の流れは早く、気がつけば空は暗くなっていた。
「そろそろ夜ご飯とお風呂にしよっか」
時計の針が7時を指した頃に、俺は立ち上がってお風呂を沸かした。大人数でシェアハウスをしているので、お風呂と夜ご飯は交代交代で済ませている。早く済ませたい時は、だいたい2人ずつお風呂に入っている。その間に夜ご飯を食べることで、時短にもなるのだ。
メンバー全員が夜ご飯とお風呂を済ませたのを確認してから、最後の夜の撮影に向けて機材を用意した。ちなみに撮影は皆同じ部屋で行っている。窓からは月が俺たちを照らしていた。
「じゃあ最後の撮影始めるよースタート!」
いつも通り、撮影を始めた時だった。
バンッ
部屋の電気がいきなり消えた。
「は?え?誰か消した?」
「俺消してないでー?」
「何も見えないです…」
「停電かな?」
いきなり消えたものだから、なんだか怖くなってきて、みんなで固まって座った。
ガチャ
「あ、つきましたね、じゃぱさん」
何事も無かったように、電気が再びついた。
「よかった~…私暗いとこ怖いんだよね」
「怖かった~!!!」
「もふくんビビりすぎだよ~笑」
電気がついたことに安心し、みんなが胸を撫で下ろす。俺も1度深呼吸をして、ふと後ろを振り返った時だった。
「…っ?!」
思わず息を飲んで、その場に座り込んだ。
「え、じゃぱぱさん…?」
「どうしたん?」
「じゃぱさん大丈夫?」
メンバーが声をかけてくれた。俺は震える指で、振り返った先を指さした。
メンバー全員の顔が一気に引きつっていく。
振り返った先で、俺が見たのは…
生命感を感じない程の細い手足、白い服に、肩まで伸びる髪。そして、光の無い瞳。
青白い肌をした少女が、立っていた。
「きゃー!!!」
「だ、誰?!」
「まって、まじでやばくない?」
「きみ、だあれ、?」
メンバーは驚いたり、怖がったりと落ち着きを無くした。それは俺も同じだった。
そんな俺たちを軽蔑するかのように、少女はじっと俺たちを見ている。まるで幽霊のようだ。
すこし辺りが落ち着き、静かになった室内。静かになるのを待っていたかのように、少女は口を開いて、こう言った。
「ねえ、みんな…ツキのカラダを探して」
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