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この世界は、怪獣と人間が共存している。
高校で学習していたり、コンビニでレジ打ちしていたり、数多の企業などの人間社会に怪獣が溶け込んでいるのだ。
これでも、この世界は平和である。人間と怪獣、互いにコミュニケーションを取ることが可能なので無益な戦いが起こることもない。そして法もしっかりしている。
………しかし、全てうまくいっているわけではなかった。
この世界にはたまに、「歪み」と言うものが発生する。
ただ発生するだけにはなんの問題もない。その歪みからたまに、不純物なるものが現れるのだ。
ゾンビウイルス、核物質、麻薬成分を含む煙などなど、その種類は多数だ。そしてごくまれに、怪獣を凶暴化させる物質まで出てくるのだ。
そんな歪みを野放しにしてはおけない。そう考えた者達が現れ、各地域監視組織を作り始めた。
この物語に出てくる組織も、歪み監視組織だ。
それでは、皆もこの世界の住民の一人だと思いながら読み進めていってくれ。
喫茶「ばんじょう」。
それは、関東のとある地域で経営されている喫茶店である。
マスターは怪獣であり、名は「キングパンドン」。赤い体色の、双頭を持つ怪獣だ。そんな彼が営むこの店は、知る人ぞ知るという店であり、たいてい来店者はそこそこの数だ。
そしてこの日も、客はいなかった。
「暇だ」
短く呟くと、彼はスマホを取り出した。画面に映るのは、ネットニュース。画面をスクロールすると、芸能人の結婚報告や人気番組の打ち切りなどのニュースが流れてくる。
「わぁ……このドラマ最終回荒れたのか」
ぶつぶつ呟きながら気になるニュースを見ていくパンドン。あまりの集中は、今店内に客が入ってきたことにすら気づかないほどだった。
「ま、マスター? またネットニュース?」
常連客である、メガネをかけた少年が声をかけたことでようやく気づいた。
「おぅ、なんだメガネ君か。いつものカプチーノでいいか?」
「あー、いや。今日は甘いやつを飲みたいな。ミルクティーってある?」
「あるとも。それが頼まれたのは今日が初めてだ」
パンドンはまず熱い紅茶を作る。そこに砂糖を多めに入れると、そこにカップ入りのミルクを投入。それをかき混ぜて、少年の前に置いた。
「ほらよ。超絶熱《マジアツ》いから火傷には注意な」
「うん、ありがとう」
彼はカップが触れるくらいの温度になるまで待つと、ゆっくりミルクティーを飲みはじめた。
「あ、そうだメガネ君。実は今パンが余っててな、消費に協力してほしいんだわ……安心しろ金はとらねぇよ」
「パンドンのパン……ブホッ」
「は?」
「え?」
パンドンは一枚のパンを取り出した。それをいい感じの位置に吊るす。
そして、彼の双頭の口が火を吹く! 火はパンを覆い、やがていい感じの焼き加減のトーストが出来上がった。
「はい、シンプルなトースト」
彼がそれを完成させた時、少年は後ろ……外の通りが見える窓を見ていた。
「どうした、恋人でも見えたのか」
「いや………そう言うのじゃないんだけど………なんか」
ちなみにこの店がある通りは、あまり人が通らないことで有名だ。理由ははっきりしていないのだが。
「人……多くない?」
外に見える人の数は、いつもと違って溢れかえっている。そして、何やらガヤガヤと騒ぎ声も響いている。
「……メガネ君、ちょっと待っててくれ」
パンドンは外に出る。集まっている民衆は、何かを取り囲んでいるようだった。
「すいません、ちょっと通ります」
民衆をかき分け、彼は真ん中の方へと向かう。
そして、取り囲まれていたものとご対面する。
「む……これは」
それは、地面に倒れた一人の男だった。バーテンダーの服を着た金髪サングラスの男。
「空から落ちてきたみたいよ」
「やだ、もしかして歪み案件?」
歪み案件。その言葉にパンドンは反応した。空を見れば、確かに人一人が入れるほどの歪みが生まれていた。彼は男に歩み寄る。
「ちょ、あんた。そいつ歪みから落っこちてきたんだぞ」
「危ないかもしれないぞ!」
警告する民衆達。そんな彼らに、パンドンは手帳を見せた。
「皆様、私は歪み監視組織『気炎万丈』の者です。こちらの男性は我々が管理します……安心してください、歪み関係の物への対策はバッチリしておりますので」
そう、これこそが彼の本職。歪み監視組織の構成員なのだ。
彼は男を担ぎあげると、そのまま店の中に戻っていった。
中に入ると、少年が驚いた顔をした。
「うわっ! マスター、何その人!」
「あぁ、気にすんな。ちょっと二階に籠もるから、好きなときに帰っていいぞ」
パンドンはそのまま上の階へと上がっていった。
2階には、たくさんの研究道具や資料などが揃っていた。
パンドンはとりあえずソファに男を寝かせると、スマホを取り出した。そして連絡用のアプリを開く。
[チーム 気炎万丈]
《キングパンドンです。歪みから出てきた男を保護してます》
❲唐突すぎるわ。しかもそれ不純物じゃないの?❳
《ちょっと俺だけでは判断できません。できれば皆、俺の喫茶店に来てください》
『しょうがない。暇だし行くよ』
❲じゃあ俺も行く。一応変な物質持ってないか調べておいて❳
「よし。皆来てくれるな」
パンドンはスマホをしまうと、研究用の棚から何か道具を探しはじめた。
「えーと、探知機探知機……」
その時だった。
「う……が……」
ソファの方から、声がした。それを聞いた彼は動きを止め、ゆっくりと振り向いた。
そこにいたのは、目を覚ました男の姿だった。