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『開演前、誰もいないステージで』
年末の空気が、会場の裏側にも漂っていた。
ジャニーズ恒例の ジャニーズカウントダウンコンサート 前日。
リハーサルはまだ本格的には始まっていない時間帯。
広いステージには、まだ人もまばらで、照明も半分だけ落ちている。
そんな中——
「ね、ちょっと早く来すぎたね」
と儚愛がストレッチをしながら笑う。
「逆にチャンスじゃない?」
紗永はそう言って、スマホを取り出した。
この前の“バス動画”が世界的にバズってから、2人のダンスに注目が集まっている。
「ここで撮ったらさ、もっと面白くない?」
「…確かに」
まだ誰もいない、カウコンのステージ。
“本番前の静けさ”
と
“ 2人の遊び心”。
その組み合わせが、もうすでに危険だった。
「曲どうする?」
「やっぱり…twoでしょ」
紗永がセットした瞬間、儚愛が一歩前に出る。
「いくよ」
無音に近い空間に、音が流れ始める。
最初の一歩で、空気が変わる。
さっきまで“誰もいないステージ”だった場所が、
一瞬で
“パフォーマンスの場”
に変わる。
広いステージを使ったダイナミックな動き。
それでいて、カメラに収まる計算された距離感。
完成度は、さらに上がっていた。
「うわ、なんかもう本番じゃん…」
途中で入ってきたスタッフが、思わず足を止める。
ターン、ステップ、アイソレーション。
2人の動きは、まるで音を“支配”しているみたいだった。
ラスト
ステージ中央で、完璧にシンクロした決めポーズ。
一瞬の静寂。
「……えぐ」
後ろから小さく声が漏れる。
気づけば、リハに来た他のメンバーたちが、少しずつ集まっていた。
Snow Manのメンバーが苦笑する。
「いや、もうこれ本番でやれよ(笑)」
SixTONES側からも声が飛ぶ。
「てかそれTikTok用でしょ?クオリティおかしいって」
紗永は息を整えながらスマホを確認する。
「うん、撮れてる。完璧」
儚愛はステージを見渡して、少しだけ真面目な顔になる。
「ここでやるの、やっぱ気持ちいいね」
遠くでスタッフの声が響く。
「はい、そろそろ本リハ入りますー!」
空気が一気に
“仕事モード”
に切り替わる。
でもその前に——
「投稿、いくよ」
「どうぞ」
アップされた動画
タイトルはシンプルに——
『開演前の本気』
数分後
またしても通知が爆発する。
「これがウォーミングアップ?」
「本番どれだけやばいの」
世界は再び驚くことになる。
“本番前の遊び”
で、ここまでやるのかと。
『世界が止まった、開演前の数分間』
投稿から、わずか数十分
儚愛と紗永の動画は、日本だけじゃなく、一気に海外へ広がっていった
おすすめ欄に流れたその瞬間——
世界中のユーザーが、スクロールする手を止める。
「Wait… this is rehearsal??」
「No way this is before the show」
コメント欄は、すぐに多言語で埋め尽くされていく。
英語、韓国語、スペイン語、フランス語。
共通しているのは、ただひとつ。
“理解が追いついていない”
という驚き。
「The synchronization is insane」
「They move like one person」
「This is bettethanactual performances」
あるダンスクリエイターは、動画を切り抜いて分析動画を投稿する。
「見て、このステップ。重心移動がほぼズレてない。しかもターン後の止まり方…完璧すぎる」
別の有名ダンサーも反応する。
「このレベル、普通はカメラ何台も使って何回も撮り直すやつ。でもこれ…一発?」
コメント欄にはさらに熱が集まる。
「Bus video girls, right!?」
「They did THAT in a moving bus… and now THIS??」
そう、
“バス動画”
を見ていた人たちが気づき始める。
「Same girls. Same energy. Different stage. Same perfection.」
時差のある国々でも、朝起きた人たちが次々と動画を発見する。
「What did I just wake up to」
「Japan is on another level」
海外のリアクション系インフルエンサーも、次々と動画を取り上げ始める。
再生しながら、ただ一言。
「…Nah. This is crazy.」
一時停止。巻き戻し。スロー再生。
「Look at this part. LOOK AT THIS」
そして、最後には決まってこう言う。
「And this is BEFORE the concert??」
動画の再生数は止まらない。
トレンド入り。
翻訳付きで拡散。
“名前が分からないのに有名になる”現象が起きる。
「Who are they??」
その問いが、世界中で同時に投げられる。
——その頃。
会場の裏で、2人は何も知らずに次の出番の確認をしていた。
「ね、さっきの動画どうなってるかな」
紗永がスマホを開く。
次の瞬間、目を見開く。
「……え?」
画面に並ぶ、見慣れない言語の通知。
桁の違う再生数。
止まらないコメント。
儚愛が横から覗き込む。
「……やば」
少しの沈黙。
そして——
「まあ、いっか」
儚愛は軽く笑う。
「どうせなら、本番でさらに更新しよ」
紗永も笑い返す。
「世界、もう一回驚かせる?」
ステージの向こうでは、照明が本番用に切り替わっていく。
カウントダウンまで、あと少し。
そして世界はまだ知らない。
儚愛とさえは昔、
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#妄想物語